へえ。貴方も混血児でしたか。
実は私も別々の血が混ざっていましてね。
……ふ、確かにその髪色では、江戸の街は住みにくいでしょう。
[さらりと語られた彼の身の上話は、思いの外此方の興味を引いた。先までとは違う、僅かに柔らかい口調でもって返してしまうのは、親近感故だろうか。とはいえそんなもの、すぐに霧散してしまうのだけれど。
ちらりと此方を見る視線と、薬師に似合わぬ褒め言葉には目を瞬く。綺麗などと、異性に言われた事はあれど同性に言われるのは初めてだ。
遊女を語る時の淡々とした姿勢といい、もしかして、"そっちの気"があるのでは、等と考えもしたが、流石に口にはしないでおく。人の恋愛事情に口を挟む趣味は無い]
…………まあ、目立つでしょうね。
異人が恐いのか、因縁をつけてくる輩はそう居ませんが。
嗚呼、そうだ。銀の髪が煩わしいのであれば、黒く染める薬がありますよ。
[不意についと手を伸ばし、その毛先に触る。銀の髪。それが黒く染まってしまうのは少し惜しいかもしれない、なんて。そんな事を知らずの内に考えながら、小さく首を傾げてみせた]
(65) 2015/01/21(Wed) 00時頃