[あゝ、まったく。鼠小僧も人騒がせなものじゃあないか。
盗んだものを、ちゃあんと返してくれるなんて――それともこの数日の事は、唯の夢だったとでも言うのだろうか、なんて。
だけれど、そう。ならば思い出した記憶は――これが夢ではないと。そう、物語っているのではないだろうか。
もしかしたら、盗まれた者同士ならば言葉を交わす事も出来るのかもしれないけれど、そんな事を知る術など無い。
それに例えそうだったとしても、ひとまずは。]
――……はぁ。無事で良かったわぁ。
[苦笑交じりに微笑みながら、ほっと安堵の息を吐き。
許されるのなら、もう一度。
今度は先よりも力を込めて、艶やかな髪の流れるその頭を抱いただろう。
抱きながら、指でその髪を少しだけ乱暴に梳き。耳のすぐ上に付けられた髪飾りを見つけたのなら、"付けててくれたんやね"とさも嬉しそうに言ってみせただろう。]
(61) ねこんこん 2015/01/30(Fri) 21時半頃