[…そうして、封筒を手放した後。伝言と問いかけにカウンターを往復しては、便箋を綴り始める。
間を置いて帰って来た返事>>29には、視線を持ち上げ、大きく頷いて見せた。
――ふと、ここが図書館でない事に気づいたのは、相手が本棚の影へと姿を隠した頃だったか。
見通しが悪い事を幸いに、ボールペンを握ったまま、マフラーの上端を頬まで上げて。緩く浮かべた弧から、震えの混じった息をこぼし、小さく項垂れた。]
――…あ、 うん。書きながらで良いなら、
[再び声を掛けられれば、咄嗟に上げていたマフラーを慌てて顎まで下ろし、大きく首を持ち上げた。
その拍子に薄く開いた唇は、浅い思考が漏らした言葉を反復しつつ、静かに閉ざされて。
せめて、と瞳はそわりと便箋から離れると、俯かれ、自然と影の落ちる表情へと向いた。
浅い言葉とは裏腹に、筆先はゆるりと静かに止まり。どこか滲む暗色を探す事に、意識は動き始める。]
(58) siras_rc 2014/10/12(Sun) 02時半頃