[女は決して、彼を伝承の名では呼ばない。
彼の力は確かに気に入りではあった。だが、それを認めやしない。
力とは諸刃の刃。
最狂の力は、時に最惡に。災厄に。
言の葉として形どれば、彼はホンモノになってしまうだろう。
――そう、
ヤクト・ブラッディア
⇒ ニリス=サン=オブ=サン
⇒ クォンタムホライズン
ヒトに理解しやすい言葉で綴るとすれば、それは【ヤー】ニック、と。
伝承において最凶最悪の血文字《カーズブラッドワード》を冠した68番目の人物であり血平線の最終伝説と称されているが、その素性は謎に包まれている。
包まれて居た『筈』だった。
彼が長い眠りから覚めるまでは。
彼は確かに68番目の彼であり、正確にいえば68番目の彼では無い。
未だ『69番目』になりきれぬ存在は過去のまま、新たな名を受けるのを待ち続ける。
過去の68の御業全てを習得し、新たな1つ…――69番目を習得した時、過去の伝承の【ヤー】ニックではなく、新たな【ヤー】ニックとして。
最終伝説に上書きされる次の歴史を作らんと、その美しき魂を震わせるのだ。]
(55) 2015/06/02(Tue) 22時頃