…何処でも弾いてる言うてたから、見つかるか心配しとったんやけれど。
この広い広うい江戸の町で、"偶然"二度も目当ての音を見つけた私は――結構、運がえぇんかな。
["それとも、キミの音が良く通るお陰かしら"、なんて。
人も多い、この江戸の町。こうして再びまみえたことに、少なからず喜びを覚え。
――だけれど呆れ混じりの揶揄の言葉>>45には、少しだけ詰まった息に気付かれないと良いのだけれど。]
――……恋、かァ。
江戸を騒がす噂の御人に恋してしもうたとあっちゃ、そりゃえらい難儀やろうなぁ。
……悪戯な恋文なら、来たけどね。
[――なんて。
冗談めかした言葉には、此方もまた冗談めかして返しながら。
恋文にしては、酷く"いけ好かない"文だったけれど…まさか彼女も文を受けたと知らぬ女は、噺のネタには丁度いいか、と傾げられた首にはふいと目を細めてみせる。
指の先で銭を探り、さらりと落ちる彼女の髪を眺めながら、あゝやっぱり飾り気の無いとそんな感想を胸に抱き。
おもむろに伸ばした指先は、彼女の髪へと触れる事は叶っただろうか。]
(49) 2015/01/22(Thu) 17時頃