―現在・薬屋前―
[ちんとんしゃん ちんとんしゃん。
弦を摘んで弾いてそして唄う、その音と声を聴きながら。
解らぬ程度に急いだ音には、終ぞ気付く事は無く――もう少しこの音を聞いていたいような、だけれどまたあの素っ気ない口を早く聞きたいような。
そんな気持ちがあったからかも、しれないけれど。
そうして周りの人々が銭を投げるのを眺めていれば、不意にかけられた声>>43に目をぱちり。]
――……ほんまに、えぇ耳。
負けた負けた、私の負けやね。
[先の言葉を掛けながら、そんな一言を付け足して。
身を屈め、先日は見れなかった彼女の笑みに、興味深そうに視線を向ける――"可愛らしい笑うやないの"なんて賛辞は、口の中だけで呟いたけれど、彼女の敏い耳には拾われてはしまっただろうか。
膝に落ちた手>>44を見たのなら、あゝ少しだけ話に付き合ってくれそうだ、と。
遠慮など見せることなく、そのまま続けて口を開いた。]
(48) 2015/01/22(Thu) 17時頃