[>>35その後で改めて、向かいに合わせて座り込んだ少年へ意識を戻す。
手にした櫛が、“素敵” なものかどうか、自分は知らないけれど。]
……、まァ。
そんなとこだね。
[ “そうだろう?” とも、伝えることはできずに。世辞か本音かは分からずとも、どのみち確かな賞賛の言葉にも 曖昧に濁した返答しかできない。
・・・今日はどうも 言葉の切れが悪い。]
[逸らされた少年の視線は、閉じた瞳で追うこともできない。
歯切れの悪い言葉に 僅かに思案して、結局深く溜息を吐いた。
目の前の男について、何を知っている訳でもなし。そうだろうとも、そうでもないだろうとも、言いようはないのだから。]
…それじゃあ、あたしと似たようなもんだ。
この櫛だってさ、ほんとのとこは、盗られたって構いやしない。
もうだいぶん昔のもんだから。
[皮肉げに笑って見せながら、返された手紙は再び懐へ仕舞って。
ぎゅう、と 櫛を握り締める手のひらとは裏腹に、さもどうでも良さげに呟いて、それも再び荷物へ戻す。]
(45) 2015/01/20(Tue) 17時半頃