[一瞬、目の前が色だけになった。輪郭を、質量を失って、何もかもが色だけに変わった。赤に、青に、黄色に、緑に、黒に。ちらちらちらちらと、光線のように無数の極彩色が瞬いては、溶けて、混ざって、広がって、弾けて、消える。
その後に見える世界は、形を取り戻し、だが全て歪んでいた。柱は真っ直ぐではないし、平坦だった床はきつい坂道になっているし、天井はとても高い。そして、何処も、毒々しい色をしている。
机は紫の切り株に見えた。椅子は赤と青のキノコに見えた。森の中にいるようだった。森の中にいる。幾つもの声が遠く聞こえてくる。あれは鳥の鳴き声だろうか、蝶の密談だろうか。高い笑い声が耳に付いた。あれはきっと女王様の声だろう。私のパーティ。パーティ。女王様のパーティ]
……私は、お呼ばれしていたかしら?
ねえ、ローラ。どうだったかしら。
招待状は持っている?
[ローラを抱き締めながら、ふらふらと大広間の中をうろつき出す。きょろりと辺りを見回して]
(42) 2010/07/06(Tue) 02時頃