い、要らなくなった?
――そんな事、僕は一言も言った覚えは無いけれど……。
[息を飲み、言葉を詰まらせる彼に、戸惑いの表情を見せて。けれどこれだけは否定しておかねばならないと、どうにか言葉を吐き出す。
……要らない、だなんて。そんなわけがない。それこそ初めて会った時から、いつまでも共にありたいと、そう思ってきたのだから。
揺らいだ瞳には、まだ何処か悪いのかと心配にはなるが、指摘する事も出来ず。
大丈夫かい、などと。月並みな言葉を落とした]
……何も。
[あげられるものはないと言われれば、少しだけ眉を寄せて]
何も、要らないよ。
……違うな、貴方からはもう、たくさん貰っているから。
[頷くように閉じられた瞳に触れて。それだけでは足りずに、彼が見ていないからと、拒絶される事はないだろうからと――そっと、口付けを落とす。
それだけで酷く彼を汚してしまっているような感覚に陥ったけれど、それでもこれ以上触れないでいるのは耐えられなかった]
(29) 明治 2014/07/07(Mon) 11時半頃