[教会には今朝も数人、日課のお祈りに来た。
形ばかりに見よう見まねの十字を切ってみたけれど
やはりそこに信心がなければ無為なものなのだろう。
今日はお祭りだからと、身寄りのない子ども達にシスターが特別な料理を振舞うらしい。是非手伝いをと申し出たが、貴女はゆっくりお祭りを見て回ってらっしゃい、と微笑まれてしまった。
シスターの気遣いだと思うけれど、この仄寒い思いが何故だか心からお祭りを楽しめていないようで。
村の広場で身体を抱くようにしてゆっくりと見回す。
人と言葉を交わしては、買い食いをしている青年の姿。――というよりは主にそのピロシキに自然と視線が引き寄せられる。>>21]
(おいしそう。)
(……ぁ )
[人の食べているものに関心を示すなんて。はっとして慌てて視線を逸らす。卑しいと思われてないか、気恥ずかしいのに。
くぅと鳴る腹は、その卑しさを裏付けるようで、一人赤面してしまうのだった。]
(29) 2015/05/25(Mon) 20時頃