[暮れ始め。時計の短針は7を回った頃であろうか。行く先を照らす朧気な光が、ぼんやりとその内部を照らす。朽ちた洋館の妖しくも美しい雰囲気に導かれて――男は、その洋館の決して綺麗とは言えない鈍色の放つ扉を引いていた。]
「…こ、こは」
ぽつり
ぽつり 。
[矢張り何処か老朽として閑散な所が見受けられると伺うようにぱちりと覗いた瞳は細まり、その廊下の先を見詰め。まるで現実世界から1人誘拐されている様だと幼稚な比喩には「笑えない」と口端を下げ、唾は喉に通る]
「…ナニが居るんだろ」
[軈て、伏せ気味にしていた顔を廊下の先を見通す様にゆるりと上げたなら。玄関先に居る――銀月色の髪を揺らがす男の甘毒を耳に受け、小さく頷き。コツ。コツ。靴音を響かせ歩を進めたのなら、その先をゆらゆらと歩める「ダレか」を視界に映すことがあった*だろうか。*]
(28) 2014/09/12(Fri) 04時半頃