[イアンは扉を開き、そっと廊下を覗き込んだ。
二等車両は、今のところは静まり返っている。物音は少し遠く、一等車両の方向からのようだ。
誰かが酔いつぶれて暴れているだけなら良いのだが、それが有り得る三等車両ではなく、一等車両。
幸い、手洗い場は一等車両側にある>>1:#1。
一旦手洗い場へ入って、一等車両側へ耳を澄ませば、やがてはっきりとした声が聞こえた。>>16櫻子の声だ。
また、彼女はくだらない因縁をつけられているのだろうか。
しかも今度は、鉄道警察に。
夕方の彼女の萎縮した姿を思い出し、割って入ろうか、と考えた瞬間。]
「……え、違うのです? 家出少年?」
[家出少年、との言葉に、>>10夕方仲間に流したデマの存在が重なって、思わずどきりとしてしまう。
電話口の彼には、「スクープになるぞ」と流し込んだはずだ。
その言外に含む意味は、「タネを掴むまでは、どうかご内密に」。
偶然の一致か、それともどこかで漏れたのか?
いずれにせよ言えることは、ただひとつ。]
(24) 2015/12/01(Tue) 03時半頃