え……
[ふいに閉じた瞳が再び見開かれ、何かを探すように揺らぐ。
今や誰も口にすることのないその名を、呼ばれたような気がした。
けれどああそんなことなどある筈が無い、己を見ているのはいつしか昇っていた月だけ。酔っているのだろうか、と緩くかむりを振って立ち上がる。
その時倒れた酒瓶から赤黒は溢れていく、やがて地に染み込んで消えゆくことだろう。]
またな、オッサン。
[彼の声はこそ泥に届かなかった、四文字以外は。だから別れの言葉を否定する形となったのは偶然のこと。
きっと己の死に場所もまたこんな暗く寒い所なのだろう、そして同じところへと逝くのだろう。
きっとお互いそれが似合う生き方をしてきた、だから、二度と出会わぬわけではない。
その時はまた、罵ってやろうと独り笑い、どこかへと歩いていった。*]
(23) ameyoru 2015/08/29(Sat) 22時頃