ーー 過去:あの人の卒業式の日 ーー
[とうとう来てしまったその日。証書を受けとる姿は、体育館の後ろのほう、同じ学年と並んで座ってじっと見ていた。
ああ、いなくなっちゃうんだなあ。]
卒業、おめでとうございます。
[式が終わった後、先輩を追い掛けた。
またあいつが来た、彼の周りでそんなことを思った人はゼロじゃ無かっただろう。
そんなのは気にしない。もう杜中でこの人に会うことは出来ないんだから。
色んな感情を押し隠して、やっぱりおれは笑っていた。]
[先輩、先輩。無意味に呼んでまだ小さかった身体で見上げ、ぎゅっと袖を引っ張った。]
卒業してもずっとおれの先輩でいてくださいね。
[兄のような人に置いて行かれてしまうような気持ちだった。行かないで、そうワガママを言う程に子供では無くなっていた。
代わりに、ずっとこの関係のままでいて、と。
そんなことを言った自分がこの土地を離れ、遂にはもう二度と会えない姿になって最期の再会をするなんて、思いもせずに。**]
(22) 2015/12/17(Thu) 08時半頃