……さあね。
[母に会いたく無いのか、という問いに言葉を逸らす。今更会ったから何だという話。僕が母に思い入れが無いのと同じように、母も思い入れなどないだろう。それならば会っても会わなくても変わらないはずなのに。
親に会いたくない子供なんて、という言葉を言う少年をじっと見つめる。…そうだね、と呟くと言葉を続けた。]
君の言う通りかもしれないね。正直なところ、特に思い出も思い入れもないんだ。…だから会っても会わなくても何も変わらない。…でもそうだなあ…。どんな暮らしをしてるのかくらいは見て、来ようかな。
[それも、母だからというより身請けされた遊女の様子を見るといった意味合いだが。それでも、少年の言葉が少し前に進ませたようであった。
僕は少年に別れと礼を告げると、参区の方向へ少しずつ足を向けたが、少年は引き止めたりしただろうか。引きとめられたなら振り返り言葉を返すだろう。]
(21) 2015/01/27(Tue) 02時半頃