[–––––––––––腕が植物みたいな…
不確かな記憶へ、目の前の無へ、頼りない記憶へ、目の前の男へ。
前後を繰り返しふらつく焦点が、きゅ、と慌てて現在へ定まったのは男が気遣う様に声をかけた瞬間だろう。]
…あ、大、丈夫。です。
[ふるり、と少し首を振る。まっ二つに割られたピーマンが目に入る。
自分の腕に、虫刺されを搔き毟った瘡蓋の様に、数輪咲いた小さな花を、撫でる。]
まだ…ぜんぶ、無くなってない…
……ぜんぶ、もってかれちゃった、わけじゃ、ない。
[何が、とは問われぬ限りは続けないが。
少し縮み上がって、マグを手に取り、その半分を一気に飲んだ。
その耳に皿の音、その目に見慣れた医師を捉え、立ち上がったのは次の瞬間の事。
まるで不安を、無くなる恐怖を誤摩化す様に、大声で。
何故か自分の部屋を聞く相席の男に、
へ?と首を傾げるのは、数テンポ遅れてから。**]
(19) 2014/09/05(Fri) 01時半頃