――クシャちゃんなんか、嫌いだ。
[ぽつり、と呟くとゆるゆると彼に絡ませる腕を緩めて。こんなに痛い思いをさせているのだから、もっと責めてくれてもいいのに。もっと、嫌悪感を露わにしてもいいのに。力なく立ち上がると手荷物の中から真っ白なタオルを取り出して傷口に添え、出血量から太い血管を刺してはいないだろう、と判断すると針を丁寧に首筋から抜いた。そのままタオルを傷口に押し付けて止血を試みる。彼を殺してしまおうかなんて思ったりもしたけれど、彼が生きたいと思っていることを知っているレティーシャにはどうしても手を下すことは出来なかった。このまま彼と居ても、再び彼を傷つけてしまうだろう。せめて最後だけは――普通の、女の子で居たかったから、彼の傷口に負担がかからない程度の力で抱き締めた。彼が何を思うのかは分からないけれど、こんなに身勝手な人間に気を遣わないで欲しい、優しくなんてしないで突き放して欲しい、と強く願って。]
(18) 豆 2014/07/07(Mon) 02時頃