なんだ。私と何も変わらないじゃないか。
[晒された彼の瞳に、一つ、詰まらなそうに呟く。
そこにあったのは何の変哲も無い二つの瞳だった。モノクロに見える、というから、少し期待していたのだが。
青い大きな瞳に自分が映っている事に、常ならば耐えられないのだろうけれど。酔っているからそんな事は気にならないし、むしろ狼狽を始めた彼が妙に面白くて、喉の奥で笑った。
朱に染まる頬をそっと撫でて、目を細める。表情が変えられれば良いのだけれど、それは出来ないから、精一杯切なげな声で言葉を紡ぐ事にした]
――何?
酷いな、忘れてしまったのか?
[重なったままだった体に、足を絡ませて]
……あんなに善くしてくれたのに、
[実際は必死に笑いを堪えているが、表情には出ないから相手からは分からないだろう。
ちょっと見れば着衣に乱れが無い事等バレバレだ。けれど、慌てふためく彼にそれが理解出来るだろうか。
出来れば気付かないでいて欲しい。もう少しからかってやりたいから。
目の前にある彼の顔を、髪を掻き上げるようにして両手に収める。そして顔を近付けて、その耳元にふっと息を吹きかけた]
(16) 2014/06/27(Fri) 13時半頃