― 回想 ・ 伍区にて ―
[嗜好品を口にする機会は早々無いけれど、決して嫌いな訳ではない。
>>5広がる甘味に、皮肉に対して返された言葉に。何か言葉を返そうと口を開いて、げほ と噎せ込んで 只其れだけ。
>>6鼻先から頬へ、顎へと指を滑らせれば、其処で漸く 深く彫り出した様な鼻筋に 唇に 他所者も他所者、自分とは随分違う人種の様だと 改めて頷いて。
そのまま、最後に耳へ指を遊ばせながら、おや と指を止めた。]
話に聞いた事はあったけども、こうしてお目に掛かるんは初めてだね。
こりゃあ痛くはないのかい。
[指先に触れたのは、耳朶の中央に不自然に開いた窪み。
此の国では一般的ではあるとは言えないその疵跡は、けれど装身具の為の物だと 知識で知ってはいるから。
“何も装けられていない” その跡を一度辿っては、彼女の反応を待たずに するりと手を引き戻しただろう。]
(16) 2015/01/24(Sat) 20時頃