[蟀谷を指でとん、とん、と叩いて難しい顔。金勘定以外の思考は何時ぶりか。
――待てよ、こんなことをしている間に時間は確実に過ぎているのだ。この時間を仕事に使えばどれくらい儲かるだろう。
こうしてはいられない、と立ち上がり視界が揺れる。頭が酷く痛くて、重い。
これは久しぶりの酒のせいではなく、きっと寝不足のせい。やっとの思いで懐から男の分を含めた飲み代を取り出し。]
悪ィけど、日が昇って来たしそろそろ行くさね、
其れは情報代に取っておいておくれ、
――アタシが金を出すのなんて中々無いんだから、心して受取りなァ。
[手早く告げるとふらり、と手を振って。そのまま自宅の方へと歩き出す。
その道中金を払ったことを後悔しかけたが後の祭り。其れも情報代と、楽しい時間への代金だと考えれば安く済んだ方だと思える気がした。]
(9) 2015/01/22(Thu) 02時頃