うん。…うん。
いっしょ、に。一緒にいような。ずっと。ここが、オレらの家だから。ずっと、一緒だ。
[噎せ返るような花の香りを抱いて。あやすように背中を撫でて。もうとっくに、物言わなくなった少女を、抱き上げたまま。
落ちた前髪の隙間から、とめどなく雫が頬を伝って、その肩に、背中に、新たな花弁が芽吹くけれど。
青年は、決して彼女を降ろそうとはしなかった。]
……ヤニク。
[上ずった息を吐いて、扉の近くでそっと見守っていてくれた男を呼んだ。]
悪ィ…ちょっと付き合ってくれ。
ちゃんと、休ませてやる前に、……そと、連れてってやりてえ、から。
[腕の中のささやかな体温を、落とさないように抱き直して歩き出す。肩越しに振り返って、スティーブンを見た。]
センセイ。……マーチェの事、よろしくな。
[言って、少しだけ笑ったその顔は。]*
(1) 2014/09/09(Tue) 00時半頃