姫有さん、姫有さんたら。
もう…廊下にまで花が落ちていてよ。
共用スペースはどう使うも自由ですけど、
ちゃあんと最後には綺麗にするのが決ま…あら。
[『賀東荘』の現主人にしてシェアハウスの管理人。
如月悦子は、冷えた海を臨む広い窓の傍らにて、
色とりどりの花を編む住民──姫有花奈、通称メアリーの手元に視線を落とした。
日に焼けた床板の上、不釣り合いな光を放つスマートフォンの液晶。
彼女が時折手を止め、そわそわと触れるSMSの会話画面に、戯けた顔の男性の自撮りが、ぽこん、と現れた。]
……ん。
今日くらいは…大目に見てあげましょうね。
[顔を赤くしたり綻ばせたり、唇を引きむすんだりため息をついたり。
コロコロと表情を変えるメアリーは、管理人の足音にすら気付いていない御様子。
エツコは寧ろそれを良しとしたのだろう。
それ以上声をかけることなく、そっと距離を取った]
(1) 2021/02/11(Thu) 23時半頃