……ああ。
さっさと済ませよう。
[大人しく差し伸べられた手を握って、よろりと立ち上がってみせる。
先の言葉と裏腹に取られた手に、彼はどう反応するだろうか。
此方はもうあんたなんか何とも無いんだと、そう示したいのだけれど。まあ、震える手のひらでは、それには役者不足だっただろう。(そもそも、一度座り込んでしまったら立てなかった、というのもあるのだが)
案内されるままに椅子に座って、彼が手当を始める様なら、黙ってその右手を差し出した。
触れられる度に強ばる体は隠す事は出来なかったけれど、意識して無表情を貫く。
……これ以上彼を楽しませたくはない]
――どうして?
[復唱とも、問いともいえない言葉を落とす。
その時のディーンの視線は彼の笑顔ではなく、机の上のナイフに注がれていた。……手当をしている彼が、それに気付くかは分からないけれど]
(+64) 2014/07/04(Fri) 15時半頃