231 獣ノ國 - under the ground -
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[それは、いつのことだっただろうか――
あるいは、医療室に一人でいたとき。 あるいは、白に囲まれて眠っていたとき。 あるいは、あるいは。
酷くぼんやりとしていて曖昧な"それ"(>>1)は頭の中で反響して、私の意識をも溶かす。
落された絵の具は白亜と混ざり合い、まるで異なる様相―― 自由への渇望を生み出した]
(26) 2015/07/14(Tue) 21時頃
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[目を覚まして飛び込んでくるのは、天井の白。一つの染みもないそれは距離感を失わせ、見る者に窮屈な印象を与える。
そしてこの施設も、私達にとっては窮屈なのだろう、きっと。 だからこそ、彼女は自由を求めていた。 私も――知りたい。
長い間心の奥底で抑えつけられてきた欲望の栓は、すでに抜かれてしまっていて。 その感情の濁流の前には、彼女に話された"本当の自由"の記憶の存在はほんの小さいものだった。
そう、私は外に出て、自由を知りたい]
おはようございます、先生。
[渦巻く感情の上で、昨日と同じように挨拶をする]
(27) 2015/07/14(Tue) 22時頃
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……え。
[マユミの言葉を受けて、思わず声が漏れる。誰にも聞こえないような小さなその音も、確実に言葉を表していた。
外の世界に行った獣が、ヒトにならずに外に行った獣がいるのなら]
どうして、私は....
[ヒトになろうとして、薬の実験までしているのか。その言葉は呑み込んで、再び沈黙を守る。
きっと何かの間違いだ。そう、自分に信じこませて]
(*3) 2015/07/14(Tue) 22時頃
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え....あ、そうなんですか。
[脱走者が出た、と。先生はそう言った。 脱走ということは、それをしたのはは"私達"ということ。 獣のまま、ヒトにならないで外に出たということで。 それはつまり、
――こんなことは、しなかった? 唐突に生まれたダムのように、感情の濁流が堰き止められた]
(46) 2015/07/15(Wed) 00時頃
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[外に出るためなら自分の身などどうでもよかったはずなのに、不意に全身を満たす恐怖感。思い出すのは、この間うたれたばかりの薬とその痛み。
"あんなのは二度とごめんだ"という本能と "外に行くにはこれしかない"という理性が衝突する。脱走なんてそうそう出来るわけでないと分かってはいても、それを認められず、自分もそうすればいいと囁きかけてきて。易きに流れようとする本能を止められない。
ああ、いつの間に私はこんなに弱くなってしまったのだろう。 "欲"とは、これ程までに人を――獣を弱くさせるものだったのか]
先生、薬、早く試しましょう。
[どうにか口に出来たそれは、普段より幾分か早回しだった]
(47) 2015/07/15(Wed) 00時頃
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[現実においてでも、こちらにおいてでも、その脱走は確かだという]
こんなのって、無い……。
[抑圧された本能は口に出されることなく、静かに、吐き出された。]
(*12) 2015/07/15(Wed) 00時頃
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[ジリヤの声が聞こえれば、今はもう反論することも出来ない]
そう...ね。 どうせじきに、結果が出るから。
もし私が、その結果を伝えられなくなったら。 頼むね、ジリヤ。
(*15) 2015/07/15(Wed) 00時半頃
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[今更、そんなことを言わないで。
先生は私に、何度も確認する。これまでは、そんなことはしなかったのに。 やめて。今、そんなことを言われたら。決心が鈍ってしまう]
はい。後悔はしません。
[私の心が変わってしまう前に、注射を打って――
そう、腕を差し出した]**
(57) 2015/07/15(Wed) 01時頃
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[針が近づくに連れて、思い出される言葉。
"心まで捻じ曲げていく外なんて――" "外に出る前にうまく起きられなくなったら――" "その薬を使ったら、一生知らないまま――"
そうして、針が刺されば。その腕に落ちる一滴]
ごめんね、ジリヤ。
(75) 2015/07/15(Wed) 14時頃
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....ごめんなさい、ジリヤ。
(*20) 2015/07/15(Wed) 14時頃
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[体内に浸透する薬液。身体の中で、何か異質なものが蠢く感触。 すぐに痛み出した前回とは違い、それは全身に広がるまで何の作用も無かった。
そう、全身に回るまでは]
――――――っ
["声も出ない"とはこういう事か。 身体から乖離して冷静になる意識で、そんなことを思う。 規格外の信号を受理した神経は一方通行のように感覚だけを伝え、脳からの指令を伝達せず。 微動だにしないまま、ただ目だけを大きく見開いて。
腕に繋がる手が次第に変化しているのに気付く前に、私は意識を手放した]
(76) 2015/07/15(Wed) 14時半頃
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[落ちた意識の中に、不意に響いた声。
ジリヤのものでも、アマルテアのものでもなく、聞いたことの無いような男の人の声。
"俺は、人して死ねるか"
閉ざされた世界の中で何度も、何度もそれは響く。
わたし、は....]
(103) 2015/07/15(Wed) 22時頃
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[
私は、死にたくなんかない! 生きて外に出て、自由を知りたい!
]
(105) 2015/07/15(Wed) 22時頃
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[……月見さんには、嘘を吐いたことになってしまう、のかな。
そんなことを思いながら、私は目を開けて。 そこには、人の手の繋がった腕が見える....はずだったのに]
あ、れ……?
[確かに開いた視界に広がるのは、一切の光も持たない闇。
そして、辺りを探るように動かす"人の"手は一切の感覚を与えず、私にはその手がいま、どうなっているのかも分からない。
私の行動には、二人もすぐに気付いただろう]
(107) 2015/07/15(Wed) 22時半頃
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あ、先生……。
[何度開閉させても、視界の闇が取り払われることはなく。 見えなくなっているのは、避けようのない事実のようだった]
そう、みたいです。 そうだ、手はどうなってますか。見えないから、分からなくて。 ちゃんと、直ってますか。
[そう言って振った手には、空気の感触すら伝わらないけれど。でも、その形さえヒトの形をしているのなら。
外に、出れる]
(112) 2015/07/15(Wed) 23時頃
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ジリヤ?
[横から、聞きなれた声がする。手を握られたことには気付かなくとも、その存在には気づくことが出来る]
ねえ、私の手、直ってる?
(113) 2015/07/15(Wed) 23時頃
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そう……よかった。
[不思議と、嬉しさはこみ上げて来なかった。それが見えない目のせいなのか、それとも本当の目的はまだ達成されていないからなのかは、分からない]
ジリヤ!? な、なにやってるの!
[怒声と、ビーカーの割れる音。彼女が何かをした、ということは分かったが、それが何かは分からない]
先生は悪くない! これは私が頼んだことなんだから!
(120) 2015/07/15(Wed) 23時半頃
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やめて、ジリヤ……。
[何が起きているのか分からず、ただ、そう声をかける事しか出来ない。
先生は二回、何処かに呼びかけていた。一回目は私のこと、二回目は先生自身のことで。 きっとそのうち、管理人の誰かが来る。そんな時、こんな姿が見られたら。
ジリヤも、ただではすまないだろう]
やめて....もう、いいの。 騙されたんだとしても、私はこれで外に出れるんだから。
(129) 2015/07/16(Thu) 00時頃
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[足音がしたと思えば、扉が勢いよく開き、叫び声が聞こえる。
一体、何が起きているのだろうか。
分からない私は、ただ茫然とそれを"眺めて"いるだけで]
(146) 2015/07/16(Thu) 00時半頃
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はい、大丈夫です。
[ふと声をかけられれば、それがした方に顔を向ける。 差し延べられた手に気が付くことは無いけれど]
ありがとうございます。
(148) 2015/07/16(Thu) 01時頃
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/*
あ、救援これ今日中には来ないな....
(-86) 2015/07/16(Thu) 01時半頃
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[それから、どれくらいが経ってからだろうか。
駆けつけた救援に案内されながら、私は――
中央玄関の、鉄扉をくぐった]**
(150) 2015/07/16(Thu) 01時半頃
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