17 吸血鬼の城
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[甘い白薔薇の聲に心が震える]
可愛くなんて、ない…… 偽りは、…やめて……
[これは違う。 違うのだと自らに言い聞かせながらも 途惑いは隠せず上擦る音色]
(*27) 2010/06/23(Wed) 05時頃
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[ツキン、と、鈍い胸の痛みが女を苛む**]
(*28) 2010/06/23(Wed) 05時頃
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水商売 ローズマリーは、薬屋 サイラスに話の続きを促した。
2010/06/23(Wed) 13時頃
水商売 ローズマリーは、小悪党 ドナルドに話の続きを促した。
2010/06/23(Wed) 13時頃
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[焦がれた白薔薇から紡がれる音色は女の求めた音ではなく 甘い言葉を囁かれたというのに傷ついたような相貌をする]
――…変わらず留める事など出来ない。 貴方の笑みが好きだったわ。 案じてくれるその心は何にも代え難いものだった。
[触れた唇の温度も何もかも変わってしまったことばかりに 気がいってしまう]
…………。
[胸が痛むのは罪悪感からだ。 きっとそうに違いない。 そう決め込んで女は壊してしまった大切なものを想う]
(202) 2010/06/23(Wed) 13時頃
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[三度のノック>>185に扉をゆるく振り返る。 其処には常通りとも見える黒薔薇の姿]
――…私に護衛など必要ないわ。 お兄様の事だけを最優先に……
[城主の力は女のそれより強くある。 けれど若しもの事があってはならないと 黒薔薇にそう告げて]
そうね……、少し疲れたのかもしれない。
[白と黒の薔薇を一度だけ交互に見遣り それでも嫣然とした笑みを刷いて女は闇に溶けた**]
(206) 2010/06/23(Wed) 13時半頃
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――…私の、望み
[兄の聲>>*32に闇に溶けた女の気配が揺らぐ。 叶ったとも叶わなかったとも言わず]
愛しいお兄様…… 私が望むのはお兄様の傍にある事だけ。
[今はそれしか望みはないのだと切なく漏らす]
(*45) 2010/06/23(Wed) 14時頃
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貴方の施したものが欺瞞だったとしても――… 私にとっては違うものだったの。
[白薔薇の聲にぽつと紡ぎ]
感謝ならばお兄様に…… 全てはお兄様の為に在るのだから……
(*46) 2010/06/23(Wed) 14時半頃
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[これは女が失った記憶の一欠片。 今は城主とメアリー・トレメインだけが知りうる記憶。
人だった頃の女の世界は今と変わらず狭かった。 住まう屋敷と白薔薇の庭園だけが彼女の知る世界。 生まれつき身体の弱かった女は外の世界を知らない。 白い薔薇と幼い兄妹と家族だけが心の慰め――。
医師からは二十歳までは生きられぬと宣告されていた。 けれど女はそれを嘆かず全てを享受していた 残る時間が長くなくとも女の心は満たされていた。
白い薔薇の花束を贈ってくれたサイモンとの思い出も 栗色の髪に花を飾ってみせた幼いメアリーとの思い出も 女が失ったしあわせだった頃の記憶に他ならない]
(220) 2010/06/23(Wed) 15時半頃
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[――美しくも哀しい魔性との出逢いは偶然か必然か。 何時しか女の姿は白薔薇の庭園から失せていた。
家族のことも サイモンのことも メアリーのことも
魔性に抗った記憶さえ消えうせて
大事なものを失ったことだけを感じながら 再び目覚めた翡翠は美しい魔性に心囚われる]
(221) 2010/06/23(Wed) 15時半頃
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――…お兄様。
[今すぐにでも向かいたい衝動に駆られながら 女は甘く切なく名を紡いだ。 兄の傍にある気配を影が伝える。 女は何もかも心得た風に]
お客様との戯れを中座させるような無粋…… 私には出来ません。 愛しいお兄様…… 如何かお愉しみになって……
[案じるという兄の言葉を素直に受け取る。 たとえ、真に理解されずとも 時折掛けられるその聲が女には嬉しかった]
(*50) 2010/06/23(Wed) 16時頃
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ドナルドが遊んでくれそうな気配であってるのかな。 折角だから半狼さんたちと絡みたいよね。 赤がべったりすぎるとあれでそれだろうし……
なんていいつつ、兄に依存しすぎな妹。 いや、傍にいる時間は短くしてる心算だけど。
(-62) 2010/06/23(Wed) 16時半頃
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― 食事の間 ―
[闇に溶けていた女がじわりと滲むように姿を現す。 其処に足を向けたのは食事を求めての事ではなかった。 ――怪我をしていた大きな迷子が気に掛かっただけの事。
女は入り口からゆっくりとドナルドの方へと歩み寄る。 その口許には微かな笑みさえ湛え 何事も無かった風に純白のドレスを揺らす]
――…本当にお酒が好きなのね。 怪我の具合はいかが……?
[首を傾げ問う様は少女の名残を残すよう。 席にはつかぬまま二つのグラスを眺め微かな吐息を漏らす**]
先約があるのかしら、ね、紳士さん……?
(225) 2010/06/23(Wed) 17時頃
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[注がれる眼差しが心地好かった。 ドナルドに向けた表情は花が綻ぶかのように鮮やかになる。 この魔性が人に惹かれてしまうのは失った過去への郷愁。 人であった頃を知らず懐かしみ求めてしまう]
それなら良かった。 痛むと言ったら、また小言を言おうかと思っていたの。
[テーブルに置かれたワインを視線のみで示し]
――…ふふ。 貴方が誘って呉れるのなら喜んで。 聞きたいこと、って何かしら……?
[ドナルドの示す対面の席にふわりと腰を下ろし 続く言葉には思わずくすくすと愉しげに声を漏らした**]
敬語なんて必要ないわ。 此処には咎める者なんていないのだから、 貴方の喋りやすいように。
(236) 2010/06/23(Wed) 19時頃
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[注がれたワインのグラスに手を伸ばそうとすれば ドナルドの手が触れる。 自分とは違うあたたかくも大きな手]
紳士は大変ね。 ――…嗚呼、やっぱり。 そうやって話して呉れた方が嬉しいわ。
[止んだ敬語にそんな感想を漏らした。 確かめるような問い掛けに僅かに困ったような微笑]
貴方が知っている通り…… 私はお兄様と同じ吸血鬼。 人の血を喰らう魔物でしかない。
[そう紡いだ声は感情の乏しい淡々としたもの]
人間らしく、見える……? そんなの……、きっと、貴方の、気のせい……
(241) 2010/06/23(Wed) 20時半頃
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[城主の囁きが女の耳朶に心地よく響く。 薬屋が愛慕と感じた其れさえ女自身は気づけずにいた。 指摘する者さえ居なかったのだから其れを意識する事もないまま]
――…哀しい事を仰らないで。 愉しまねばならぬ“義務”ではなく お兄様には愉しむ“権利”があるのでしょう?
捧げもの………? 嗚呼、そういえばそのような娘もいましたね……
[あまり興味がなかったのかそう呟き]
お兄様が問題無いと仰るならそうなのでしょう。 だって、誰よりも私の事を知っているのはお兄様だもの。
(*56) 2010/06/23(Wed) 20時半頃
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[血を与えし眷族の願いが聞こえた]
――…欲しいの? それとも、あの娘を憐れんでいるの?
[それだけを問うて。 女は兄の意向に従うのみ――]
(*58) 2010/06/23(Wed) 20時半頃
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――…ええ。 義務ではなく権利なのです。 私を好きにして良いのもお兄様だけ。
[柔らかな兄の聲に女はうっとりとした様子で]
黒薔薇が気をつけろ、と……? あの者はよく働いてくれること…… 人の毒がお兄様に効かずとも 毒を得た血はお兄様のお口には合わないのでは?
[案じるような聲は無論兄のためのもの]
私に異論はありません。 お兄様の為の捧げものなのだから お兄様のお気の向くままに。
(*62) 2010/06/23(Wed) 21時頃
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[サイラスの動揺が、伝わる]
――…嗚呼。
[苦しげな吐息に呼応するかのように 女の胸が僅かに痛む。 引き摺られそうになる感情を抑えようと 女の柳眉が一瞬微かに寄せられた]
(*64) 2010/06/23(Wed) 21時頃
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[手はそのままに女はドナルドの隻眼を見詰める。 翡翠を映さぬ隻眼に気づけば柳眉が微かに寄せられて]
冷たいと感じるなら…… 手を離せば良いのよ。 貴方の手まで冷えてしまうわ。
[首を傾げば亜麻色の髪がさらりと胸元に流れる]
貴方が急に変な事を言うから…… ただ、少し吃驚しただけよ……
[人みたい。 そんな言葉に動揺してしまう。]
――…私は、吸血鬼よ……? 無いわけ……、無いじゃない……。
[サイモンを手に掛けたあの日が過り女は俯く。 それは男に動揺を悟らせまいとする僅かな抵抗]
(252) 2010/06/23(Wed) 21時頃
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あの娘が好い声で啼いて呉れるなら ……それも愉しいかしら。
[啼かせる気もないのに悪戯に聲を響かせ]
――…嗚呼。 狩りならば、私は見物にまわりましょう。 他の客人のお相手も、必要でしょうから。
[其々の聲を聞きながら女はすっと目を細めた]
(*70) 2010/06/23(Wed) 21時半頃
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――…よほど欲しかったのね。
[獲物をサイラスが見つけた事を影を通じて知った女は くすくすと愉しげな笑みを漏らした]
(*71) 2010/06/23(Wed) 21時半頃
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本当に貴方は不思議な人ね。 吸血鬼をあたためてみようなんて……
[包み込むように触れるドナルドの手に、 その言葉に女の手がぴくりと震えた。 厭では無く寧ろ嬉しくさえ思うからその手を拒めない]
外見だけならそうかもしれないけれど ほら……、私はあたたかくないから…… すぐに人ではないと知られてしまうわ。
[哀しいと思うことはあったけれどそれは仕方の無い事。 俯きながらも男の視線を感じた。 その真剣に声音に思い悩むような間があった]
――…如何かしら、ね。
[困ったような微笑を浮かべながら顔を上げれば 男の隻眼をじ、と見詰めた]
(264) 2010/06/23(Wed) 21時半頃
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――…そんな聲を出さないの。 あの娘以外にも“獲物”はたくさん居るでしょう?
[拗ねた白薔薇の聲に宥めるような聲が重ねられた]
(*74) 2010/06/23(Wed) 22時頃
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気まぐれでも嬉しかったわ。
[人のぬくもりがこの愚かな魔性は好きだった。 柔らかな心もつ、自分とは違う、人が、好きなのだ。 無くしたものを手にした時の感覚と少し似ている]
だって、人でないと知ったら…… みんな離れていくんだもの。
[触れる肌から伝う温度が少しだけ女の手をあたためた。 声には寂しさが僅かに滲むのみで傷ついた様子なく]
――…ドナルド?
[立ち上がる男をいぶかしむように名を呼んで。 隻眼の男の眸を翡翠は静かに見詰め続ける。 溢れた魔性の気配が男を惑わしたのだと気づくのは ほんの少しあとのこと。 釣られるように少しばかり腰を椅子から浮かせて 繋がれた手にそっと自らの手を重ね小首を傾げる]
(284) 2010/06/23(Wed) 22時頃
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――…お兄様もそう仰っているのだから、 別の“獲物”になさい、セシル。
……逃げろ? この宴から本当に逃げられるとでも思っているの? 逃げられなどしないわ。 そうでしょう……? お兄様。
嗚呼、けれど…… お兄様への捧げものに逃げろ、だなんて…… いけないこ、ね。
(*81) 2010/06/23(Wed) 22時頃
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[隻眼の男のぬくもりが 失ったぬくもりを思い起こさせた。
同じようでいて違う。 違うようなのに似ている。
白薔薇の呟きにふ、と息を吐く]
それでも…… あの娘はサイラスの獲物なのよ。
(*84) 2010/06/23(Wed) 22時半頃
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――…そう、なの…?
[兄の囁きに不思議そうな聲。 けれどそうだとしたらサイモンの魂は逃げられただろうか。 それともまだ城の何処かに囚われたままなのだろうか。 あの優しい男のこと。 魂だけの存在となっても妹の事が心配で逃げずにいそう。 そんなことを思いながらも緩く首を傾げ]
如何してそんな話をするの、お兄様。 私は、逃げる為にお兄様と同じになったのでは、 ない……、でしょう……?
(*85) 2010/06/23(Wed) 22時半頃
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[踏み越えるその衝撃でテーブルが音を立てる。 グラスに注がれていたワインが零れ そのグラスも床に落ちて壊れる音を響かせた。
腰へと回された腕に引き寄せられるように 女は男の胸板に身体を密接させて]
――…刺青と左目? 判らない感情って……
[どういうことなのかと問うように 女の眸が眼帯へと向けられた。 男の吐息が肌に触れる。]
(304) 2010/06/23(Wed) 22時半頃
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――……え?
[続けられたドナルドの言葉は想像もしなかったもの]
如何して貴方を殺さなくてはいけないの?
[苦しそうな表情に釣られるように柳眉を寄せて 見詰める隻眼から、ふ、と視線が外される]
(305) 2010/06/23(Wed) 22時半頃
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私が望んだから…… お兄様が与えてくれた。
[疑う事なく記憶のない女は兄の言葉を受け入れる]
……そう。
愛しいお兄様…… 如何か私を遠ざけないで……
[切なる聲が微かに紡がれる]
(*88) 2010/06/23(Wed) 23時頃
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――……、
[眷属たる男の呻きに女の翡翠が微かに揺れた]
(*90) 2010/06/23(Wed) 23時頃
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