162 絶望と後悔と懺悔と
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[円に駆け寄ろうとして、影が遮る。
聞こえる悲鳴の怒号の中、 その影は絶対的な静寂を纏っていた。
夜のような、 あるいは死そのもののような、 吸血鬼というよりも、死神のようだ、と思って、
見開く双眸にその黄金は焼き付いた。 それから、視界に移ったのは鮮やかな緋色>>0:455、 飛び散って、頬に感じる、べちゃりとした生ぬるい温度。 サミュエルが叫ぶ声>>0:465にそちらを見た]
(12) 2014/02/08(Sat) 00時頃
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……女の子?
[西洋人形のような服を着て、 その当人も人形のような少女だ。
紅い瞳、黒いレエス、 その刃で飛び散った色は闇の色に隠されていた。 とても不思議なものを見ているような、 そんな呆然とした呟きが零れた]
(20) 2014/02/08(Sat) 00時半頃
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[頬に触れる、手にべっとりと血がついた。 あの子はこんなに簡単に殺されてしまった。 >>30 微笑む少女に困惑したのは、状況を認識するまでの空白だ。]
あなた、吸血鬼なの、 どうして、こんな……こと、
[喉を湿らせ言葉を音にすれば、 今という認識がようやく帰ってくる。 この少女が吸血鬼で、あの子を殺した]
(36) 2014/02/08(Sat) 00時半頃
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[>>31 鈍い音、手加減されてるなんてわからない。 先ほどは突然すぎて出なかった悲鳴じみた声があがった]
サミュエルくん……!
[あの子みたいに殺されてしまう、 認めたくない想像にふるふると首を振った、 でもわかっている、分別がつくくらいには子供じゃない。 ――そして戦えるほど、大人じゃない。
無力なのだということ。
>>37 彼女の言っていることがわかりたくなかった。 冷たい手が血で濡れた頬に触れるのに、背筋が震えた。 発する声も震えたのは、だから涙のせいじゃない]
お願い、……みんなを殺さないで。
[滲む瞳で懇願して、それから口にしたのは浅はかな言葉]
(46) 2014/02/08(Sat) 01時頃
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――…なんでもするから。
[震えた口唇から零れた、 出来ることなど、何も無いのに]
(47) 2014/02/08(Sat) 01時頃
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[>>51 少女が黄金の吸血鬼に語る言葉、 連れて行く、という響きだけが耳に残った。 そして>>60向けられた微笑に、ぼうっととしたまま]
……本当に、助けてくれるの、
[縋るべきものはそこにしかなかった。 >>48 必死にサミュエルは自分を助けようとしてくれているのに。 裏切りのように感じて、眼差しを伏せて、ひとつ頷いた。]
(65) 2014/02/08(Sat) 01時半頃
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[サミュエルを不安げに見やる、 彼女の言葉>>67 殺されてはいないのだろう。 すこし、安堵した]
……ごめんね、 みんなをお願いね。
[炎と殺戮と、 無事な者がどれだけいるかわからなかったけれど。 今出来ることは、これだけだ。
大人しく言うことを聞けば、 きっとここから立ち去ってくれる]
(69) 2014/02/08(Sat) 01時半頃
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[彼女の甘やかな言葉、 希望の先にあるより深い絶望を、 今は知る由も無く、縋るしかない]
……、一緒に行きます。
[安堵をもたらすものではない、 けれど彼女の声はひどく優しげで、混乱しそうになる。 ――その手をとればきっと冷たいのだろうけれど*]
(73) 2014/02/08(Sat) 01時半頃
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― なまえ ― [ここにきたのは物心ついてから、 突然たくさんの家族が出来た。
とにかく自分は世間知らずで、 あまり外で駆け回ったり遊んだりしたことなどなくて、 はじめは慣れないことばかりで、とても戸惑っていた。
だから一人の女の子と共通点を発見したのが嬉しくて、 全力で一緒に遊んでそれから孤児院に馴染んでいけたのだと思う。彼女の名前にそんな小さな意図があったのかは、わからない>>78
弓矢ごっこ、はびっくりしたけど、 はじめて抱えた小さな子は、あたたかくてやわらかくて、 とても優しい気持ちになれた。 あの橋の向こうにいるという顔も知らないきょうだいとも、 いつかこんな風に遊べたらいいな、と思ってた*]
(113) 2014/02/08(Sat) 14時半頃
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―回想― [何が起きているのか、 目と頭に薄もやがかかっていたようだった。
先ほどまでの食堂でみんなの帰りを待っていたのに、 絢矢に手を引かれて食べかけのシチューもそのままで。
外に――あの橋の向こうに行きたいなんて、思っていたせいだろうか。まるで自分が吸血鬼を喚んでしまったような、そんな気持ちになっていた。 行っちゃだめ、と引き止められた手の感触がずっと残る。 真剣な表情の絢矢の言葉に、いつになくしっかりと同意を示した明乃進の頷きも]
[守備隊の軍人さんたちもやられてしまったのだろうか、 安吾はどうしたのだろう、ジャニスの白い軍服はもう紅く染まってた。あの黄金の闇のもたらす絶対的な畏れ、抵抗しても適うわけが無い。 >>52 視線が向けられただけで、動けなくなる。 あれは人間の捕食者で、自分たちはその前に圧倒的に無力なのだ]
(114) 2014/02/08(Sat) 14時半頃
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[今、彼らが去るのであれば、 少なくともサミュエルはここで殺されない。 制服のスカーフをはずして、踏みにじられて傷ついた彼の手に巻いた。
――制服を着始めた頃から、 女の子だから、そんな扱いをされ始めたようで、 すこし、さみしかったのを思い出す。
キャロラインや、円や、リカルダや、明乃進や、涼平や、直円、 近くにいたみんなと小さな子たちは、いつの間にか見えなくなっていた。
戻らなかった零瑠は、どうしのだろう。 こんな風に血を浴びてしまったら、どうなるか。 周は我慢できただろうか、抵抗したらきっと簡単に殺される。 絢矢はここからちゃんと逃げられるだろうか、 外へ出るのもあんなに怖がっていたのに。
何も出来ない、運命に手は届かない、 無事を祈ることも意味があるのか、わからなくて]
(115) 2014/02/08(Sat) 14時半頃
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[それから――、 >>101 聞こえた声に顔を向けた。 どうして?と問うような、悲壮な顔。 けれど音にすることは出来なくて、 ただ漆黒の少女に従った。
燃え落ちていく家、家族の家。 みんな家族だから苗字は別に要らなかった。
円はまだあのハンカチを持っていただろうか、 刺繍されたイニシャルは『Mayumi.S』
――白兎真弓、 それがその日行方知れずになった子供たちの一人の名前**]
(116) 2014/02/08(Sat) 14時半頃
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―城内― [――夢はなにもみなかった、 見たような気もするけど忘れてしまった。 柔らかなものに包まれて、泥のように溶けていた意識は、 小さく交わされる声にくすぐられる]
……、
[覚醒までは届かない、 ただ柔らかなものが寝具だと気づいて、 ――昔の家に戻ってきたのかと一瞬錯覚する。]
――………、、ん、
[まどろむ意識は、もういない人を呼ぶ音を紡がせた]
(*27) 2014/02/08(Sat) 14時半頃
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[>>*25 囁きが意味を成したのは、 自分の名前を呼ばれたからだ、重い目蓋を開く。 見慣れぬ、場所。目の前にいたのは理衣、一瞬であの惨劇が目蓋の裏に蘇った]
っ、……、ここは、
[吸血鬼の居城、なのだろう。 あの漆黒の少女は、黄金の死神はどこにいったのか、 見渡せば、他にも数人の姿が室内にある]
なんで……、 なんで、理衣くん来ちゃった、の。
[待ってて、という言葉に首を横にふった]
(*28) 2014/02/08(Sat) 15時頃
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[柔らかすぎる寝台から、身を起こす。 血で汚れたままで着てた服もぼろぼろで、 悪い夢じゃないことは、はっきりとわかる。
腕を捲くれば――サミュエルが布を巻いて、 円が手当てしてくれた包帯も、痛みもそのまま残っていた。]
……明君、
[>>*29 常から穏やかな明乃進が亡羊と呟く声]
ごめんね……、
(*30) 2014/02/08(Sat) 15時半頃
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あの女の子、言ってたの、 何人か連れて行きましょう、って、 愉しそうに言ってたの……。
でも、わたし、止められなくて、 ……何もいえなくて……、そのまま、
[明乃進は、ここにいるみんなは、 その連れてこられた子たちなんだろう。 >>37 思い出すわかりたくなかった彼女の言葉]
(*31) 2014/02/08(Sat) 16時頃
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[材料を選ぶ、犬猫を飼う。 そんな基準で殺したり捕まえたりする。 吸血鬼にとって、人間は違うことなく家畜なのだろう。
あの時にわかってしまった、 彼らは人間を捕食する存在で。
みんなを殺さないで――命乞いの結果がこれだ]
(*35) 2014/02/08(Sat) 17時半頃
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[漆黒の少女の、酷く冷たかったあの手、 ――感情まで凍りついていくようだった。 触れてくれた明乃進の手はとても暖かくて、 添えられた微笑みに心が脆くなるような気がした]
……明君、ありがとう……
[感謝の言葉を口にする、 >>*33 直円も気にするなと言ってくれた、 どうしてかあまり目はあわせてくれなかったけど]
直君も、ごめんね。 あんまり、……喜べないけど、みんな無事でいてほしい……
[もちろん、彼の様子は知らなかったから、その善意を疑うことは無い。祈るような言葉と共に、重なる明乃進の手をきゅっと軽く握った]
(*36) 2014/02/08(Sat) 17時半頃
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[その温度には、少し覚えがあった]
明君、……熱ある?
[看病に付き添ったりすることはよくあった、 彼の平熱はこんなに高くなかったはず、寝込んでた時に額に触れたことを思い出して、 その時と同じように額へ手を伸ばす]
……ちゃんと寝てて、お水貰ってくるから。
[足は震えない、きちんと立てる。 大丈夫、人間だって家畜の面倒くらい見る。 だから、水を貰うくらい平気だろう]
(*38) 2014/02/08(Sat) 17時半頃
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[すとん、と寝台から降りて、 結果、理衣を追いかけるように扉に向かった]
……理衣くん?
[そうっと覗いて、その姿を探してから、 しんと冷えた気配のする廊下へ足を踏み出した]
(*40) 2014/02/08(Sat) 17時半頃
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/* 直くんいいキャラしてますね、 真弓さんはちょっとなんだろうこの、 恥ずかしい立ち位置は。
だがしかし。
>>:39 なんだと。
(-57) 2014/02/08(Sat) 18時頃
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―むかしのおはなし― [直円と話す機会が減っていったのは、 彼がその読書会に行き始めてからだったような気がする。 「直にーちゃんが遊んでくれなくなった!」 とちびちゃんたちもおかんむりだったが勉強の為だから、 と養母さんに諭されて、それでもしばらくは収まらなかった。
――もしかして絢矢と自分が弓矢ごっこの時に、 散々、的役に抜擢してしまったせいだろうか、とも思ったけれど。
陰謀という言葉をよく聞くようになってから、 一度はっきり言ったこともある
『直君、その読書会やめたほうがいいよ』
今思えば「読書会」なんて急に大人ぶられているようで、 それが嫌だったのかもしれない*]
(169) 2014/02/08(Sat) 18時半頃
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[>>*44 直円の言葉は、 なんだか少し寂しそうに聞こえた。 先のことや、わからないことばかり考えて、 つい喜べないなんて、言ってしまったけれど]
ちゃんと、みんなには直君も入ってるよ。
[今、ここにいる皆のことは心配してないみたいな言い方に聞こえたのかもしれない、と、しっかりと念を押していった]
(*54) 2014/02/08(Sat) 18時半頃
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[>>:46 声が、重なる。 その響きの先が確かに聞こえて、口唇を噛む。
理衣はもう先へ行ってしまったのだろう。 この部屋で待ってる、なんて少しも肯定してないのに。 思い出すのは「女の子だから」という言葉に感じる寂しい気持ちだ。
戻る部屋の扉をよく見てから、歩き出す。 多分厨房へ向かえばよいのだろうけれど]
……、……あの、
[じっとこちらを見やる、眼差し。 吸血鬼のような怖ろしさは感じなかったから、 おそるおそる声をかけて、場所を尋ねようとした]
(*55) 2014/02/08(Sat) 18時半頃
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[感覚的な怖ろしさはない、 多分自分たちよりも、少し年嵩の女性だろう。 とはいえ、得体の知れぬ城の中だ、緊張は滲む]
あの……、 水がほしくて、厨房はどちらかご存知ありませんか? 兄弟が熱を出して、それで……。
[問いかけに応えは無い、ただ近づけばわかった。 覆われた首筋、精気のない眼差し、少しふらつくような足取り。 眉根を寄せた、この人は吸血鬼に血を差し出している人だ。
“家畜”という言葉の意味を知る]
(*59) 2014/02/08(Sat) 19時頃
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あ、……、
[>>*58 少し遅れて返事があった。 どうしてか深く頭など下げられて、酷く困惑する。 しかもなんだか早口で、怯えているらしかった]
(*62) 2014/02/08(Sat) 19時頃
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[>>*63 反応は当然予想外で瞬いた、 困惑と戸惑いに少し後ずさる、首を横に振る]
……あの、違うんです。 違います、そうじゃなくて、……普通の水を。
[酷く震えている女性は、憐れに見えて、 でも恐ろしく感じた、ここにいたらこんな風になってしまうのか。 自分の言葉はまるで通じていないようだった。
後ずさる足、そのまま踵を返して、 どうにか厨房らしきへ辿り着いた。 ――人間がいるなら、必要な場所だ。
そして、水差しを手にした時に冷たい手に捕まれた]
(*116) 2014/02/08(Sat) 23時半頃
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―雛鳥の巣― [そのまま血を吸われるのだと思ったのに 相手はそんな敵意もあったのに、なぜか最初の部屋に連れられて来た。 いぶかしんだまま、扉は開かれて。 すぐに気配を感じた、――あの絶対的な黄金の闇]
……あ、
[足が竦んで震えた、けれど]
(*118) 2014/02/08(Sat) 23時半頃
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――……やめて!
[>>*122 響いた悲鳴が事態を認識させる、 喉の張り裂けるような声が出た。 けれどそれは何も止めてはくれなくて]
零瑠くん……、
[縺れる足で駆け寄ろうとした、 彼もあの女の人のようになってしまう、それが怖くて。 けれど事態はもっと恐ろしいことだなんて、知らなかった]
(*122) 2014/02/09(Sun) 00時頃
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[明乃進の傍らに、零瑠の様子を見やる。 明乃進だって随分辛そうなのに、と手元の水差しを握る。 口唇を噛み締めて]
……光栄なこと?そんな、 だって、血を吸われたら……あの“家畜”の人みたいに、
[漆黒の少女が笑う、 彼女に縋ろうとしてしまうのは、 年の頃も自分と近く見える少女だからだ。 彼女も吸血鬼であることには変わりないのに]
(*128) 2014/02/09(Sun) 00時頃
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―むかしのおはなし― [>>175 すぱっと言ってしまった後、 直円の激昂したような言葉にぱちくりした。 こわかった、というより、ただただ吃驚したのだ。
直円のこんな様子は始めて見た、 やっぱりあの読書会のせいで直円は変わってしまったのだ、 なんとか言い返さないと、と難しいことを言う直円の言葉を必死にひろった]
……革命が隠されてるって、でも、えっと、 逃げてきてる人、いるじゃない!だから別に隠れてない! それにきっと逃げるくらいだから、そんなにいいことじゃ……
[帝都の内側に住んでた頃、そんな人たちを見てた、 そう確か亡命って言ったはずだ。でも言葉が不意にとまったのは不確かな知識だったから、ではなくて]
直君……、
[方法とかは本当にそれでいいのかな、って思ったけれど、 勉強して努力しなくちゃいけない、っていうのはそうだと思った。]
(245) 2014/02/09(Sun) 00時頃
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わかった。
[全部が納得できたわけじゃなかった、 だから少ししこりは残ったけれど、もう止めなかった。
直円は勉強して努力してえらくなって、 きっとみんなを幸せにしてくれるのだと思ったから*]
(246) 2014/02/09(Sun) 00時頃
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水?水ならここに……、
[>>*135 明乃進の覗くものはここからは見えない。 だから、水がほしいのかと差し出そうとして、 ――何故か言葉を失ったような明乃進に気をとられた]
明くん……?
(*139) 2014/02/09(Sun) 00時半頃
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あっ、……、
[いきなり水差しを奪われた、 零瑠のこんな乱暴な様子はみたことがなくて]
ちがう……?
[その言葉に水を求めたのに、 喉首をさしだした女性のことを思い出す]
っ、明くん……!
[その手を引いて、 咄嗟に零瑠から遠ざけようとして、 けれど自分の手はきっと届かない]
(*142) 2014/02/09(Sun) 00時半頃
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[零瑠から離れない明乃進に、 どうすればいいのか、助けを求めるように見やって、 けれど気づけば直円は――>>*146]
直くん……?!
[彼は一体何をしてるのだろう、 口をぽかんと開けて見つめてしまった]
(*147) 2014/02/09(Sun) 01時頃
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― サミュエル ― [多磨の川の向こう――今は多魔の川と呼ばれているけれど、 そこに住んでいた頃は世間知らずで、大人しい子供だった。
そもそもここには同じ年の女の子がいなかったのが原因だ。 小さい子たちは遠慮なくぶつかってくるし、 男の子たちも小さい子たちと似たようなものだった。 ――結果、本性が露になったのだろう。
一月違いの誕生日の男の子。 サミュエルは最初はあまり話さない子だった。 あまり聞きなれない言葉遣いに、 率直に何度も聞き返してしまったせいかもしれない。
話すようになった切欠はわからない。 真弓にとっての認識は本当にいつの間にか、だったのだ。 なんとなく隣にいて、なんとなく話してて、寒い日の洗濯物干しが大変とか、綺麗な包み紙で小さい子に折鶴を折ってあげたとか、どうでもいいことに相槌をうってくれた。
一緒にお使いに行って、荷物は半分ずつだった。 本当はサミュエルが半分より少し多く持っていてくれていたことを知らない]
(252) 2014/02/09(Sun) 01時頃
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[見つめている先があることを、 気づかれてしまっていることを知らない。 小さな優しさや、小さな寂しさのあることを知らない。
ただ、何気ない日常が変わっていく寂しさは感じていた。 一緒にいられなくなっていく、同じことが出来なくなっていく。 それを強く感じさせるのがサミュエルだ。 半分ずつだったはずの荷物は、3分の1になってしまった。
身長だって今までほとんど変わらなかったのに、 いつの間にか少し、自分より大きくなっていた。
あの橋の向こうを見つめる回数が増えたのは、きっとそのせい*]
(254) 2014/02/09(Sun) 01時頃
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[零瑠が明乃進を捕らえる、 漆黒の少女が直円を捕らえる。
何が起こるかは、わかってしまった。 >>*149 しゃがみこんだままのリカルダと視線が合う]
リカちゃん……、
[彼女の傍に歩み寄る、 適うのなら抱きしめてその目にこれから映るものを、 どうにか見ずに済ませてあげたかった。]
(*154) 2014/02/09(Sun) 01時半頃
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……直くん!
[寄りかかるリカルダを抱きしめながら、 >>*155 その諦めた宣言のような言葉を聞いた。 どうして、と眉根を寄せる。
死にたくない、という言葉、 もちろんその意味はわかる、けれど]
直くん……、直くんは、 みんなのためにえらくなりたかったんじゃ、なかったの……
[それは単純な自己保身に聞こえて、 だからそうだと信じていた彼の姿を問う。 土下座なんて、そんな姿を見たくなかったのだ]
(*163) 2014/02/09(Sun) 02時頃
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―むかしのおはなし―
[――もしかして私も喧嘩を売られるのかな?
>>234 彼が自分の顔をまじまじと見た時に、 そう思ったのは、>>131気絶してた彼を交代で看病したからだ。 どっちが見ている時に目が覚めるかな、なんて話してた相手は誰だったか。結果、彼の目覚めを見ることは無かったけど、彼がどうしてこうなったかその経緯はもちろん聞いていた。
看病の間、寝顔を見ていたせいか、 その少しきつい眼差しもあまり怖いと思わなかった]
(278) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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[彼が来た頃には、もう今の自分と殆ど変わりが無かった。 つまり、町の子に絡まれたら加減もわからず言い返してた。 それはきっと危なっかしく見えてただろう、けれど]
……え、別に大丈夫なのに。
[自覚は無かった]
でも折角だから一緒に行きましょう。よろしくね。
[その頃にはもう、 彼は年下さんたちからの絶大な信頼を受けていたから。 “ヒーロー”くんにはもちろん興味があったのだ]
(279) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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[なのだけど、吃驚するくらい会話が続かなかった。 ――これはもしかして、嫌われているのかもしれない。
話題として気絶してるの看病してあげた。 というのもあったけれどそれはさすがに言えなかった。 むしろ、こちらが喧嘩を売ることになってしまう。
>>236 足音の他に、小さなため息も混ざった]
(280) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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[彼がふと足を止めたのは、 自分のため息が聞こえたせいだろうか。
頼まれていやいや来てくれたのかもしれない、とか。 やっぱりヒーローくん律儀なんだな、とか、 そうならそうでちゃんと断ったのに、とか。 いやでも、嫌われる理由はあったかな?とか。
ぐるぐるしてたので、すっかり悲壮感漂う顔になっていた。 それで彼はきっと吃驚したのだろう、と思う。 ――逆光なんて、背負ってる側からはわからなかったのだ]
……周くん、わたしのこと嫌い?
[問いかけは思いつめてのものだったが、 彼にはきっと少年たちに絡まれるよりずっと唐突な災難だっただろう*]
(285) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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[どうなるのかというリカルダの問いに、答えることはできなかった。出来なかった姿こそがもっとも雄弁な答えになったかもしれない。
>>*166 その優美な影に抗うことも出来なかった。 ――リカルダを守らなければ、 思ったときにはもうその腕に捕らわれていた。 咄嗟にのけぞる様に逃げようとしてしまったのは、 その青く脈の浮かぶ喉首を簡単に差し出す結果になっただけ。
――喉の薄い皮膚の上を、黄金が擽っていく。 感じたのは冷たい熱、痛みよりも激しく鋭く貫かれるような、 仰ぎ見た天井、灰色の眼差しにうつるそれが曇る]
……いやっ、っ、 ぁ 、
[震えて、跳ねたからだが冷えていく。 流れ出していくものはなんだったのだろう]
(*171) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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[首を振る、いやいや、と幼子のするように。 冷え切った体が、沸き起こる衝動のままに、熱を求めている。
まず視覚が鮮明な緋色を捕らえた。 それから嗅覚が酩酊を伴う甘さを感じた。 ふるえる指は自ずと自らを捕らえるものの首筋をつたう、 緋色の一筋に触れようとする、指を握りこんで]
……いや……、
[試せばよいと口にする者に首を振る、 水ではないことは本能が伝える、どうすれば癒えるのかもわかる。 ――そういう存在になりかけている。
急速にもたらされる乾きに呼吸が酷く浅くなる。 耐えなければいけないと思うのに、そのことしか考えられなくなる]
(*173) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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[零れた涙が頬をぬらす、 嗚咽交じりに喉が震えれば、尚乾く。
どうして縋るようにその黄金を見つめてしまうのだろう、 その一筋の緋色が酷く優しいものに思えてくる、 惧れも嫌悪も抱く必要などない気がしてくる。
――ちがう、
行動はけれど裏腹だった、 細い指はその緋色をなぞる、 また腕に巻かれたままの包帯まで伝い汚れた。
涙は止まらないのに、 うっとりと陶酔するように微笑んでしまう。 もたらされる高揚は、悲しいほどなのに]
(*174) 2014/02/09(Sun) 03時頃
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[慈悲を請う様に縋りついて、口唇を寄せる。 差し出された小さな舌はその緋色の筋をなぞりあげた。 夢中になってその血を吸い上げたあと、残るものは――]
(*175) 2014/02/09(Sun) 03時頃
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[涙を拭う指の感触に目を細める、 始祖――わが身を支配する絶対的なこの血の源、 漆黒の少女が彼女を父と呼ぶ理由がわかる。 己にとっても、新たなる父に相違なかった。
その指に安堵する、 その指に嫌悪する、
そして矛盾し相反する敬愛と憎悪とを、 少女は内に飼い続けることに、なる]
(*185) 2014/02/09(Sun) 04時頃
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―むかしばなし― [>>292 予想していたのとは大分ちがった反応が返ってきた。 たしかに、ふへ? とした表現できないような声を聞いて、きょとんとした。――しているところに、まくし立てられた。]
えっ、顔がなに? えっ、そうじゃない?
[ふへ、の衝撃となにやらまくし立てられる焦燥に、 問い返す隙は無いまま、結論がそれは明快に提示された。]
そうなの?よかった……、 周くん、ほら、年少さんたちのヒーローだし、 嫌われてたらどうしようって心配になっちゃった。
[悲壮な顔はどこへやら、ぱっと花の咲いたように微笑った。 それから今度は微笑とは違う笑みが零れて、くすりと笑う。]
(305) 2014/02/09(Sun) 04時頃
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|
ふへ は、 みんなには内緒にしてあげるね。
[手当てをした来たばかりの頃もよく覚えていたから、 そんなふうに気の抜けた所が見られて、嬉しかったのだ。 それからよりいっそう遠慮がなくなることになる。
やっぱりそれも、彼には災難だっただろうけれど**]
(306) 2014/02/09(Sun) 04時頃
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―回想―
――……男の子はいいなあ。
[そう昔のことじゃない。 食堂の椅子に座って、ちらりと理衣を見ながら言ったことがある。 少女が理衣に主張するところを要約すると以下だ。
先日殴り合いの喧嘩(ではないと言ってた気もするが) >>315をしてた二人は、いつの間にか仲良くなっていたし。 サミュエルとだってやっぱりいつもどうりに仲良しで、 言い合いとかしててもなんだか楽しそう。
そしてこんな主張をしたのは、 サミュエルと少し喧嘩したからだということは、 理衣なら気づいていたかもしれない]
(336) 2014/02/09(Sun) 14時半頃
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「二人って仲がいいよね、 ……もしかして昔から知り合い?」
[切欠はサミュエルに向けたそんな言葉だ、 彼の答えをなんだか少し、言葉を濁すような素振りに感じたのだと思う。 ちょうど「女の子だから」を理由に、あれこれ制限され始めた時期だった。
過敏になってたせいで、些細なことで拗ねた。 男のたちだけで秘密を持ってる、仲間はずれにされた。ずるい。 多分、そんな気持ちに振り回されて、もういい、と席を立って、 それからサミュエルとほんのり気まずくなった。
後から反省して謝った、何で拗ねたりしたのか、 それが「さみしさ」のせいだったなんて気づいてなかった*]
(337) 2014/02/09(Sun) 14時半頃
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―むかしのおはなし― [器用だなあ、と思ってた。 その手が生み出すものは綺麗だったり、楽しかったり。 器用でちびちゃんたちの面倒見もよかったキャロライン。 怪我が多かった円は彼によく包帯を巻いてもらってた]
いくらキャロくん器用でも、 自分で手当てするのは難しいものね。
[>>312 彼が小さな怪我をしたのは、ガラスの破片のせいだ。 装飾品作りに使えないかと持ち込まれた、綺麗な蒼い色硝子。 それを拾ってきたのは自分だ、橋の近くにあった廃教会]
(338) 2014/02/09(Sun) 14時半頃
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[木造で壁もはがれてぼろぼろで、 窓も割れてあまり人も近づかない場所だった。
――もうこの町の神様は死んでしまったのだ。
そんな風に思ったのを覚えている。 それでも割れた窓から差し込む光の筋はとても綺麗に、 床に広がる割れて散った色ガラスを照らし出していた。
ステンドグラスは知っていた、何が描かれていたのは知らない。 白い硝子もあったから、その蒼は天使様の衣かもしれないと、 そんな話をキャロラインにした。]
私のせいで怪我したようなものだもの、 お礼なんていいよ。
[そう言って、お礼のことは忘れていたけれど。彼に渡したあの色硝子は何かに生まれ変わることが出来たのだろうか、と。時折、そんなことを思い出す*]
(339) 2014/02/09(Sun) 14時半頃
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[自失の時が過ぎて、皆が新しい誕生を迎える。 明乃進の拒絶、ここにつれてくるのを止められなかったのは自分なのだ。 ただ自分が言える事は、生きてほしい、それだけだ。
祝杯を拒絶しようとして、甘い香に耐え難い飢えを覚える]
(*205) 2014/02/09(Sun) 16時頃
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[しばらくは飢えと戦うだけの日々が続いた。 皆に会うことも出来なかった、 家族の血をほしいなんて思いたくなかった。 城のすべてを拒絶して、与えられた部屋に閉じこもる。 鍵をかけて拒絶しても食事の時間は、やって来る。
自ら首を傷つけ、血を流す。 かぐわしく甘いそれがどれほど恋しいか。 この給仕たちにはわからないのだ。 必死に押さえ込もうとしているのに、どうして。
――極限まで飢えの達した頃、 今日訪れた給仕は女だった、誕生の日にあった怯えた“家畜” やめて、と言った、私の前で血を流さないで、と。 けれど女は怯えながらも身を差し出す、 自分を変えようとする、その芳しい香を纏う。
その生贄に罪は無い。けれどはっきりと憎しみを覚えた]
(*206) 2014/02/09(Sun) 16時頃
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[――ふと気がつけば、 憎しみを覚えた女の姿はどこにも無い。
真っ赤になった自分の腕、 爪の先から足先まで血に塗れていないところはなかった。 ――円に巻いてもらった包帯、 怪我はもうないけど身につけていた其れも真っ赤に染まって、
肉片と臓物と、ばらばらになった欠片たち。 血の海の中に、立ち尽くしていた]
(*207) 2014/02/09(Sun) 16時頃
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[――響き渡る悲鳴は、 別の部屋までも届いたのだろう、誰かが来る足音。 自分の声だったのに、随分遠く聞こえた。
――それが最初の“食事”だった]
(*208) 2014/02/09(Sun) 16時頃
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[給仕が入った時のまま、 錠の降ろされてない扉は簡単に開く]
――……、明く ん ?
[血の洗礼を浴びて立ち尽くす。 ゆっくりと戸口を向いた双眸は緋色――、 不吉な月の色に変じてた。
そこにあるのが“家族”だと認識すれば、 大丈夫、と笑って見せようとして、表情は強張った。 そしてそのまま血の海の中に屑折れる]
(*215) 2014/02/09(Sun) 17時頃
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……明くん、 わたし、だめだった……、
[明乃進に支えられ、 問いかけるような眼差しで見上げた。
――どうすればよかったのか。
戸口からはほどなく側仕えの者が訪れるだろう。 こんなことは主にとっては計算済みであろう、 すなわち餓えの反動はより強い衝動となること。
雛はその身を持って、ひとつ、学んだのだ]
(*217) 2014/02/09(Sun) 17時頃
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明く、ん、
――……ごめん、ね……ごめん、
[震える口唇が、謝罪を紡ぐ。 何に謝っているのか、きっと自身もわかっていなかった。 たとえば彼の服を血で汚してしまった、 この時認識してたのはそのくらいだったけど。
でも、その言葉の本当の意味は、まだ 届いていた。
“家族”という言葉に、 双眸が滲むように揺らぐ。 それはいちばん大切なこと。
――血の穢れを落とすように、と、 側仕えが、引き剥がすようにその身を連れて行く。 明乃進から離されるのに、いや、と首を振っていた]
(*219) 2014/02/09(Sun) 17時半頃
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[豪奢な浴室、流れる湯を穢す赤。 まだなだらかな曲線にそって伝い落ちる。 もちあげた指、尖ったつま先、磨かれた氷のような爪。
鏡を見れば、別人の顔がある。
血の洗礼を浴びて、少女は変わる。 拒んでいた全てを受け入れるようになった。
学ぶことはもともと嫌いではなかった。 けれど知識、立ち居振る舞い、教養作法も 好悪など関係なく、ただひたすらに吸収するだけのものに過ぎなかった。]
(*220) 2014/02/09(Sun) 17時半頃
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[そして――、
憂いと憎悪と寂しさと恋しさと、 複雑な感情は割れた色硝子のように複雑な色を為し、 成長する少女に繊細な陰影をもたらす。
その緋色の瞳なくとも、 人外の者とわかるような冷たい美しさとして*]
(*221) 2014/02/09(Sun) 17時半頃
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[怯えさせぬように微笑んで、 白い手が“獲物”を捕らえる、模倣の狩りは簡単だった。 吸血鬼だとわかっているだろうに、人は外見に油断する。 餓えなければ、殺さぬように血を奪うことも出来た。
それは命を奪わぬ優しさだったのか、 あるいは制御の学習に過ぎなかったのか。 単純に亡骸が目の前に横たわるのが不愉快だったのかもしれない。
その時奪った命は青年のものくらいだ。 武器もち抵抗するものと、 自分の体に触れようとしたものと。
前者はともかく、 後者は最初の食事と同じように原型を留めなかった。 もう自分のしたことに悲鳴をあげることはなかった。 それは遠くで聞こえていたような気がしただけ]
(*235) 2014/02/09(Sun) 21時頃
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[漆黒の少女から施される 戦闘訓練には理不尽なルールが付随した。
>>*225 特に理由も無く少女は殺された。 己が口唇を噛んだのは、明乃進が言葉を失って、 落胆したように頭をふったからだ。
――悲鳴はどこか遠くで聞こえ続けている。]
(*238) 2014/02/09(Sun) 21時頃
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[能面のような表情のまま訓練を終えれば、 理衣が話しかけてきた、ふと温度のようなものが戻る。 そこにいるのは“家族”だからだ]
……優しい?そうかしら。 悲鳴とか、これ以上、聞きたくないの。
[わずかに首をかしげて、一息に殺す理由を告げる]
でも、そうね、……可哀想ね。
[恐怖に震え屠られるために生きているというのは、憐れだと思う。表情はなにも動かぬまま、理衣を見つめる瞳は問うた意図を問い返すもの]
(*240) 2014/02/09(Sun) 21時半頃
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……震えて、怯えながら、 生きているのは、憐れなことだと思うわ。
どこにも逃げ場なんて無いのに。
[怯えていた女のことなど、 もう忘れていたけれど、考えたことを口に出す。 けれどそれは本当に“人間”のことだった、だろうか。]
……約束は、大事ね。 だれとやくそくしたの?
(*247) 2014/02/09(Sun) 22時頃
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[>>*241 明乃進の言葉を聞いてから、 時々、思い出したように皆のもとに赴くようになった。 黙って話を聞いていることが多かったから、 沈黙ばかりが空間を満たすことになったかもしれない。
部屋の主がいなかった時には、 扉の前に鎮座しているのは、千代紙のふうせんうさぎ]
(*248) 2014/02/09(Sun) 22時頃
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― きおく ― [手慰みのように鶴を折る、 ふうせんうさぎ、飾り箱、金魚に 風車 どれも難しいものではない。
小さな子供たちと一緒に綺麗な包み紙で折っていた。 キャロラインほど器用ではなかったから、 あまり綺麗なものは出来なかったけれど。
小さな子たちが喜んでくれるのが、嬉しかった]
(430) 2014/02/09(Sun) 22時半頃
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[>>*249 その時は部屋にいた、 色とりどりの鶴がそこかしこに転がる部屋。 始祖の前へと召されれば、 少女はゆるりと頭をたれる。]
……お呼びだと、伺いました。
[白い洋装のスカートがふわりと、広がる。 戦場には適さぬだろう、服装だった。
けれどその左手の袖の下には、 緻密な銀の透かし細工の指甲套。 優美な装飾品は凶悪な尖った爪でもある]
(*253) 2014/02/09(Sun) 22時半頃
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逃げたくても、 ……逃げられないこともあるわ。
[声に感情はこもらない、 それはどこか遠くにあるのを感じている]
忘れてしまったら、約束した相手が、……可哀想。
[こんな言葉が何故零れたのか、わからない。 けれど機械的に告げられた言葉よりも、少し温度があった]
あなたと戦う理由が無いわ。
[問いかけには少し、不思議そうに返した]
(*262) 2014/02/09(Sun) 23時頃
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……魔鏡? 変わったものを持っているのね。
[>>*251 古いけれど大切にされていただろう手鏡の、その仕組みがそう呼ばれることは知識にあった。 一歩前に近づく、ろうそくの炎が揺らめければ、壁に映る花模様もあえかに揺らいだ]
うん、……綺麗、 牡丹の花ね、冬にも咲く花。
――……あなたは何か、祈るの?
[問いかけて振り返る、 ゆらぐろうそくの灯りは、柔らかな色。 照らされた頬は、魔物ではない人のような色だった]
(*268) 2014/02/09(Sun) 23時頃
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……長物、 置いてきてしまったわね。
[刃がなければ戦えないわけではないから、 そのまま命に従うことにする。
フードのついた白いマントは、 毛皮に縁取られてふわりとたなびいて、 そのまま離れるかと思えば、一度振り返った]
……リカ、
[多分彼女を案じていたのに、 案じる言葉がどんなものだったか。 ――剥離したままの感情が、戻らない*]
(*282) 2014/02/09(Sun) 23時半頃
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