103 善と悪の果実
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―大広間/回想―
―――――…はい。ずっと、一緒ですよ。
[血を吸った黒い蝶を、再び己の髪へと舞わせて。 柔らかな少女の手を最後に一度優しく包み込んでから、 その甲へ"紳士"のように口付を]
"薬"をとってきてあげましょう。
[穏やかな微笑みを残して、学者は大広間を後にする]
(48) 2012/09/28(Fri) 18時半頃
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お強いのですね。ご立派です。
[まぶしがるように、囁く言葉]
可愛い、可愛い、ポーチュラカ。
[呪文のように、繰り返す]
(*2) 2012/09/28(Fri) 18時半頃
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―廊下/回想―
[ストロベリー・ブロンドを風に揺らして。 黒い蝶を舞わせた"学者"が廊下で見かけたのは、 生前の刺青の男の姿だった]
ヘクター様、と、仰りましたか。
[既に新たな夕闇が降り始めた頃合いだったか。 蛇は唯、変わらぬ穏やかな微笑みを浮かべて]
先ほどは、随分と…激しくて、いらっしゃいましたね。
[くすくすと肩を揺らす。彼はどうしただろうか。 ゆっくりゆっくりと、彼へ歩み寄る足先]
(52) 2012/09/28(Fri) 20時半頃
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―――――…お怪我を…。
[そっと彼の頬へ触れれば、朱は既に止まっていたか。 人影のない廊下。 背伸びをして白いフードを揺らしつつ、 伸ばした舌先は傷を舐める]
うふふ。
いけません。本当に何かを手に入れたいのならば。 最初にことを荒立てては。 …目立ってしまっては。
[囁きながら、緩やかに指先は頬を撫でて]
(53) 2012/09/28(Fri) 20時半頃
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[それは、まるで、かつて擦り寄った"猫"のように。
肌を辿る指先は、刺青をなぞりながら、 下へ下へと降りていき―――]
ヘクター様。 私(わたくし)は知っているのです。
禁断の果実が誰の手の元にあるか。
[彼の顔を間近で見つめたまま、 唐突な言葉と共に無邪気ににっこりと微笑んだ。 彼は虚を突かれただろうか、さあ、それとも―――]
(54) 2012/09/28(Fri) 20時半頃
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[―――――――ぐさり]
(55) 2012/09/28(Fri) 20時半頃
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[フードの内に隠していたナイフを深く脇腹へ突き刺した。 其れは通常の人間相手ならば致命傷たり得るものだった。 彼の"呪い"を果たして学者は知っていたか否か]
ですが。 貴方様にはもう、あまり関係のないことでございましょう。
何しろ本物の楽園――――…死国へ旅に出るのですから。
[返り血を浴びて赤く染まるローブ。 血を吸った其れは、やがては酸化し赤黒く―――…。
蛇は表情一つ変えない。 笑っていた。ただ、楽しそうに笑っていた]
(56) 2012/09/28(Fri) 20時半頃
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舞台を動かすためには、 多少の"景気付"というものが必要なのでございます。
怯え、歪み、憎しみ、奪い合う。
きっかけは栄光様の死だけでは、 なおも足りないようでございますから。
――――――…ならば、私が。
人の子を唆す、"蛇"の役目を仰せつかりましょう。
(57) 2012/09/28(Fri) 20時半頃
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善と悪が入り乱れ、混沌のふちに落ちた林檎。
(58) 2012/09/28(Fri) 20時半頃
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最後に拾うのはこの"僕"だ。
[口許に作る三日月。 学者の瞳に灯る光とも闇ともつかない狂気の色は、一瞬で]
さようなら、ヘクター様。
[別れを告げる頃にはすっかり生りを潜めて。 血痕を残さぬよう慎重に。 人目を避けて自室へと戻る。
…誰かに見られていれば、それは、それ]
(59) 2012/09/28(Fri) 20時半頃
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―自室―
[自室に戻って湯を浴びて、 白いローブも水につけて染み抜きをする。 "薬品"の扱いは手慣れたものだ。
…ただ、流石に乾かすことまではできないので]
――――――…♪
[流行の歌を口ずさみながら、濡れたローブを部屋に干し。 部屋に備え付けていた衣服の内、 簡素な白いワンピースを身に着ける。 まだわずかに濡れた髪をまとめれば、 少しは女のように見えるだろうか。
…いや"それ"は、何処か歪な雰囲気を纏っていることだろう]
(64) 2012/09/28(Fri) 21時半頃
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―2階、自室―
[やがて、扉を叩く音がする。 特に臆することもなく、学者はあっさり扉を開けた。 お疲れ様です、と労りの言葉すらかけて]
―――――…御機嫌よう。 捜索ですか? どうぞ、ご自由に。
[其処には警官の姿もあっただろうか。 事件の後、湯を浴び着替えを済ませた蛇の姿は、 彼の目にどう映るだろうか。
彼らのお目当てのペーパーナイフの方は、 使われることなく自室に残されたままではあるが]
(66) 2012/09/28(Fri) 22時頃
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―――…そうですね。 ヘクター様もお亡くなりになったと…。
[立て続けに事件が、という言葉に頷いた後。 あの幼い少年も亡くなったことを聞き、緩く目を見開く。
これは演技ではなかった。 …烏が落ちたことは、そのとき初めて知った]
嗚呼、おいたわしい。
[烏が林檎を持ち出したことは知っていた。 しかし、彼が楽園を追い出された、今。 禁断の果実は何処に―――――…?]
(73) 2012/09/28(Fri) 22時半頃
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ふふふ。 ミスターは、やはり警察の方だったのですね。
[風貌から察しがつけども、 はっきりと尋ねたわけではなかったから]
捜査の専門の方がいらっしゃるなら、 心強いことでございます。
[言い終えたのとほぼ同時だろうか。 使用人の叫び声が廊下に響いたのは]
……おや。
[駆けていく警官。 部屋を出るなと言われれば、くすりと笑い。 そして躊躇することなく後を追い、騒がしくなった部屋へと]
(74) 2012/09/28(Fri) 22時半頃
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ビアンカ・ジョスリーヌ。
[招待状の名を耳聡く聞きつけた蛇は、 唄うように反芻する]
―――…ウェーズリー様の奥方の御名前ですね。
[場にそぐわぬ穏やかな声で]
お邪魔はいたしません。 私めのような者でも、 多少のお役にはたてるかもしれませんよ。
[鋭い視線を柔らかに受け止めた]
(79) 2012/09/28(Fri) 23時頃
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――――――――…嗚呼。
(*4) 2012/09/28(Fri) 23時頃
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林檎は此処か。
(*5) 2012/09/28(Fri) 23時頃
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―――――…、Well Done.
[三階へ行ったという言葉を聞き、 学者は再び一瞬だけ、例の三日月の笑みを浮かべた]
いえ。
少しお話したことが、あるだけですよ。 御病気の奥様の代わりに、この宴に参加なさったとか…。
[警官の言葉に応えつつも既にくすりと踵を返し、 蛇は果実を捉えんと、階段へ足を向けていく]
嗚呼、嘆かわしいことでございます。 病の床の奥様の為に凶行に及んだと思えば――…。
[言葉とは裏腹に、酷く落ち着いた声色で]
(87) 2012/09/28(Fri) 23時半頃
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……楽しんでいるだなんて、まさか、そんな。
[静かに肩を揺らす姿は、 彼の指摘通り"楽しんで"いるようにも見えただろう]
もしも…。
もしも、彼が林檎を奪った犯人でいらっしゃるなら…。
さあ、どう致しましょうか。
[自分を追い抜いて行く警官の姿。 学者は急ぎながらも駆けることはなく、 静かな足取りで階段の上を目指した**]
(98) 2012/09/29(Sat) 00時頃
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