202 月刊少女忍崎くん
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― 少し昔の話: 一年 夏も終わる頃 ―
[書道部に入った後、タモツに色々と教わりながらネットでも色々と調べてみた。するとたどり着いたのが「書道パフォーマンス甲子園」だ。
公式からその様子も動画で配信されており、うおおおおお…と一晩ですべての動画を見終えてしまったのが事の始まり。
次の日には部室で、やろう!!!と全力で叫びまくった。
申し込みは春。本番は夏。 時間はたっぷり一年ある。
当時の三年生は、参加はできないけど出場で来たらみにいくわーとか、参加できないんだから計画書にいっちょかませろ、とか、なんだかんだでワイワイと話にのってもらえた。]
えーっと まずあたしとタモツは確定だろ? あとゴロ先輩とー
[その場にタモツが居たかは定かではないが、割と最初から計画に組まれていたので逃げ場はない。]
(+0) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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あっそれと あれ多分体力つかう! 筋トレしましょーよォ 筋トレェ
『お前どんだけ走り回るつもりなの?』
(+1) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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紙の上全部!!
(+2) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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『『『 ひとりでやれ!!! 』』』
(+3) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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え〜っ
[綺麗にはもった何人かの部員の声に、いいじゃーんっと抗議の声を上げた。 でも文字を書きながら4mのキャンバスを歩き回るのはやっぱり体力つかうと思うんだけどな〜、と頭を悩ませる。]
(+4) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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[甲子園の出場校のパフォーマンスには、きっちりと和装で礼儀正しく静かに書を描いてゆく学校もあれば、演劇のような恰好をして周囲で演技をしたり台詞を言ったりしている間に書を作ってゆく学校もあった。 個性的でさまざまだ。
礼儀正しいのも捨てがたいけどやっぱりにぎやかにやりたい!体力は作っとくにこしたことはない!!
そう思って思い出した顔は―――]
(+5) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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― ケース1:サカキバラ ―
[ひとつめはクラスの運動部員。 席についている彼に近付くと、その机にバンっ!と音を立てて手を置く。座ったままのサカキバラを立ったままの視線で見下ろしながら、]
ちょっとききてェことがあんだけど 時間あいてる?
[話しかけるオーラは、 「あの…聞きたいことがあるんだけど…ちょっといいかな…?」みたいな少女漫画のむねきゅんシーンとはかけ離れていた。]
悪い事はいわねェって
[ニっと笑いながら付け加えられたひとことは逆のダメ押しな気がしないでもない。この時サカキバラはいったいなにをおもったのか。顔の上部にトーンがはられる系の笑みではなかったとは言えない。]
(+6) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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[まあ場所を変えるわけでもなく話す内容はこうだった。]
書道部で筋トレしたいんだけどさァ なにやるのがオススメ?
[という解るんだか解らないんだか、な内容だった。 必要な理由は聞かれたら答えるスタンスだ。
軽めの筋トレ方法を聞き出せたなら、そっか悪ィな!さんきゅ!!と笑顔でしゅたっと立ち去っただろうが、「なんだったんだ…?」というクラスメートの呟きは、たぶん残った事だろう。]
(+7) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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― ケース2:ヒミヤマ ―
[サカキバラから筋トレ方法を聞き出したものの、これは運動部のものだ。そういや、ちょっと有名な先輩がいた気がする。 運動部から演劇部まで、色々な部に助っ人にいくらしく、その話は時折耳に入っていた。
その時は、ふ〜ん?くらいに聞いていたけれど、これはもしかして。もしかしてちょうどいいんじゃない!? さっそくクラスに向かったけれど、放課後、すでにそこにはいなかった。
問題の人物は色々な部に出没しているらしいので、部活動をやってる友人に見かけたら教えて〜の包囲網をはる。自分で見かけた時に捕まえられるよう写真もゲットした。(ミーハーな女子に聞くとたいてい写メを持っていたので、すごいなあと思う。)
バスケ部助っ人時の画像を眺めながら廊下を歩いているとふっと誰かとすれ違――― ん!!? バッ!!と振り返る。手元にある画像と見比べた。]
あっ!? あんたもしかしてヒミ…! ヒ… ?
(+8) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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――… すけっと先輩!!
[びしぃっ!と指先をむける。 名前はうろ覚えだったので誤魔化した。 ぱっと顔を輝かせながら近づいて、]
うおーっちょうどよかった! 探してたんスよ〜 先輩めっちゃ頼りになるって聞いてたから!
[主に助っ人としての話。 喋り方は精いっぱいの敬意がこめられている。]
あっいや用事は助っ人のお願いではないんスけどね! 文化部のやる筋トレ方法とかって知ってるかな〜って
[理由を訊ねられたら書道部で大掛かりなパフォーマンスをやる大会があってそのために筋トレをしたいという旨を伝えた。かくかくしかじかまるまるうまうまだ。]
(+9) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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ちょっと一言アドバイスなんか… こう…!
[パンッ!と手を合わせて、おねがいしますっ!と神頼みだ。]
あっあたしは書道部の栗栖増子ってもんですぜ! 以後お見知りおきを!
[今更ながらの自己紹介も置きながら。ぐっと親指を立てた。
提案をもらえたなら大げさにお礼を言って、その後も途中経過や具合など、見かけたら雑談交じりに報告・相談に行く事もあったろう。
*最初のような賑やかさを連れて*]
(+10) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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/* マドカとかぶったようでかぶってないこの
(-0) 2014/11/17(Mon) 04時頃
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― 第二体育館 ―
[それはパフォーマンス開始の時間。きっちりにはじまる。]
お集まりのみなさま、ありがとおっ!! 人楼高校書道部一同だ!!
お時間はあんまりとらせねーので〜 ゆっくり楽しんでってくれよ!!
[「どっちだよ!」というヤジの様な笑い声がとぶ。ははっと笑い声も漏らしながら。]
そんじゃっ これより書道部のパフォーマンスを開始するぜっ!
(+14) 2014/11/17(Mon) 23時半頃
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『『『『 おーーーーーーーーーーっ!! 』』』』
(+15) 2014/11/17(Mon) 23時半頃
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野郎ども!準備はいいかあ!
[キィ―――ンん! マイクの緩いハウリングと同時に、]
/* おとしわすれた
(-7) 2014/11/17(Mon) 23時半頃
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[書道部部員の声が響いた。 マイクを放送部から借りてきた部員に渡す。この後音響もやってくれるらしく、ありがたいことこの上なかった。―― まあ、放送設備をよそもの(特に栗栖辺り)に任せるのに不安があったのだろう。]
(+17) 2014/11/17(Mon) 23時半頃
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お願いします!
(+18) 2014/11/17(Mon) 23時半頃
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[書道部員が初期配置につく。
体育館の中央には、したじきの上におかれた大きな半紙があった。 今回パフォーマンスに参加する書道部員は10名だ。
その奥には和太鼓。部長とタモツが撥をもってそこにつく。 紙の側、5人がバケツと大きめの筆をもってしゃがむ。
そして残りの三人は紙の前に、大きめの団扇をもって仁王立ちだ。栗栖はこのグループ。
すう
ひとつ呼吸を整える。 どこどんっどこどんっ 太鼓の音とBGMが流れ出すと、]
(+20) 2014/11/17(Mon) 23時半頃
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ソイヤッ!
[楽しげに合いの手をあげ、踊りながら、紙を団扇で仰いでゆく―――…]
(+21) 2014/11/17(Mon) 23時半頃
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― 少し前の話: 夏の甲子園 ―
[本番当日。 その日もテンションは今日と同じようにあがりまくっていた。
選曲をしたのは栗栖だ。 最初は「アップテンポがいい!」とか言っていたくせに、候補をあげてみると中身は渋かった。 それでも話はどんどん盛り上がり、こうして完成の日の目を見る。
筆組の5人は、紙に背景を書いてゆく。 暗い藍色の空、薄紫の山、青い海。 薄墨でかかれたそれは、雄大だ。
開始直後の踊りや背景が終わると次は文字のターンだ。]
(+22) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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[海の神、山の神、 歌詞に倣いつつ作られる達筆は観客の目を引いた。
何せ部長とタモツという二大エースの文字だ!かっこよくないはずがない!
曲にのせ続くパートは、海の神、の横に「命を本当にありがとう」と書く部員、スペースを開けて左側、「燃えろよ」と歌詞を書いてゆく部員、その間を縫うように、赤い点が、ぽつぽつと落とされてゆく。
赤い点は栗栖の担当だ。
てんっ てんっ てんっ
左から右へ、順々に。合計で5つ落とされる赤い点。それが落とし終えたのと文字が完成したのは同じだった。]
(+25) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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[次は落とされた赤い点に右から左へ。点の周りに花が咲く。 花火の芯と、花びらだった。
大輪の花火は数人がかりで同時に並んで書いてゆく。リズムに乗った一糸乱れぬコンビネーション。 どんどんと、合計で4つの花火が完成してゆく。
と、同時に。 紙の中央、あいたスペースに大きく堂々と「 祭 」の文字を書くのは部長であるゴロウだった。力強い筆遣いと共に発される太い声は会場に響く。]
(+26) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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「 大 漁 」
[歌詞に合わせた「 大漁 」の文字。 海と同じ色でゴロウのかいた「祭」の下にでっかでっかと書きだした。
勿論文字バランスは考えたつもりなので、そこまでおかしくもないはずだ。
タモツの訴えは無情にも届かなかった。楽しげに楽しげに、文字を書く。
――― タモツだけではない。ほかの部員も目を丸くしている所から、これは全員にとって予想外の行動だったのは明白だった。]
(+31) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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[書道パフォーマンス甲子園には評価項目がある。 文字の美しさ、パフォーマンス、紙面構成、情感・詩情、など。 そして同時に 減点対象 もある。
たとえば、 パフォーマンス計画書と明らかに相違する揮毫を行った場合 とかだ。…つまり。今の栗栖の行動はしっかりと減点対象なわけで。
演技が終わった後の講評でもしっかりと言われてしまった。]
(+32) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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[それだけが理由ではないだろうけど、結局は参加賞におちつく。
・ ・ ・
そして帰り際、 部員…特にタモツの怒りのオーラはさすがに感じ取れたので、すごくばつの悪そうな表情をうかべていた。]
ご ごめんなさい…
[しおらしげな謝罪。]
(+33) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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[あの字を書いた時、 かききった時、 終わった時、
達成感があった。
部長はなんだかんだで「面白かった」と言ってくれたけど。 自ら進んで減点対象に向かったのは明白で。
部員に対しての申し訳なさとか、色々と。
いろいろと、あったから。]
(+38) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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[でも
いちばん、いきいきしていた、と。 その言葉が少し意外で、瞬いて。
すごく楽しんで書いた文字を、 素直な言葉でほめてもらえて、
とてもとても、嬉しくて。
浮かべた笑みは、 たぶん、いちばん ――― … ]
(+39) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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― そして今 文化祭当日 第二体育館 ―
[楽しい。 ―― 楽しい! そんな気持ちを目いっぱい混ぜながら。
てんっ てんっ てんっ
リズムよく赤い丸を落としてゆく。 花火のもとになる火種だ。 リズムよく歩いてゆく途中、
… いつもだったら観客席になんて目がいかないけど、 つい。]
(+40) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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( あ…っ !? )
[観客席に一人の姿が見えた。 長い黒髪。鋭い目つき。堂々とした笑み。
そ、総長だ!
思わず目を奪われて、
でんっ
と、]
(+41) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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( あ゛… っ!! )
[日本の日。その横棒を赤で書く箇所。 その横棒がずべっと斜めに豪快になってしまった。
やっ ばあああああ
動揺は見せずにそのまま次の点へと向かう。 ここの担当はタモツだったはずだ、ちらっと視線を向けた。]
(+42) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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[無言の圧力を感じる。 てへぺろっ 的な表情を浮かべながらも、さすが!と思った。
少し崩したような「日」の字は、そういう字体であるかのように自然だ。栗栖の態度に注視するものなら違和感に気付いたかもしれないけど、それでも仕上がりが自然なので、ミスがあったかどうかの判断はしにくそうだ。
そうだそうだ ミスなんてしてらんない
――― もしトチってもタモツがいる!
それはとても強い安心感。 そして演技は何事もなかったかのように続いてゆき、]
(+45) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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ソイヤっ!
[大声と共に書き入れられた、青い「大漁」の文字。
甲子園では怒られたこの文字が、文化祭では正式に計画書にいれてもらえた。だいたいゴロウの計らいだ。楽しかったから、やればいいんじゃない?と言ってもらえて、どれだけ嬉しかったことか!
そして、それを書き終えるのと、タモツが書き終えるのは同時だった。 タモツの方へ向けて、にっと笑う。
最後に一年生が判を押して、曲が 終わった。]
(+46) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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はいっ!
[掛け声とともにある少しの静寂。]
(+47) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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――― ありがとうございました!!
(+48) 2014/11/18(Tue) 00時頃
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― パフォーマンス後 ―
ふはーっ
[大きく息を吐いて、ぐっと大きく伸びをした。 走り回って墨で汚れた足の裏や衣装。もうすでに乾き始めているのでそのまま裸足で過ごす事にする。
作品はこのまま暫く第二体育館の壁にはることになっている。 その後、書道部の部室に引き取る予定だ。
書道部員たちも演技をおえると、それぞれに友人が群がる様子が見えた。ふふっと笑みが漏れる。 タモツがぐったりしていたので、]
おっつかれ! や〜 さっきは助かったわ
[と、へははと笑った。 きょろっと見回すと、総長の姿はすでになく。 あれっなんで!?と思ったけど、まあ、後でまた会えるかなあと。
*見に来てくれた人と話したり、部員を労ったりを、しばらく*]
(+58) 2014/11/18(Tue) 02時半頃
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