162 絶望と後悔と懺悔と
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み、ず………
[蕩けた様な眼差しを、金から首元へと移す。>>*124 前に傾いだ身を止めるように腕を引かれ、明之進を見下ろす。>>*125 僅かに牙の先を零し。彼の露になっている肌を見ても、何かが違う。]
――あき。生きてる、よ。おれ…。 血を吸われたんじゃ、なくて………
[真弓の持つ水差しを見ても、やはり違う。]
(*129) 2014/02/09(Sun) 00時半頃
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[口の中が干からびてしまいそうだ。 頷き>>*128、真弓の握る水差しを奪い取り、呷った。
唇を、喉を、水が潤してもそれは表面だけ。]
……ちが、う? どーし、て
[やはり違うのか。]
(*138) 2014/02/09(Sun) 00時半頃
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[何度か見てきたから知っている。弱い息、目元が僅かに赤く見えるのは明之進に熱がある証拠だ。
表情を変えぬ彼の>>*135、その唇に濡れた牙を当てようと身を屈める。]
(*140) 2014/02/09(Sun) 00時半頃
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/* 成る程、他を襲っても良いんだ―――…っと、手をポン。
流血見たらぶっ倒れるんで、極力見えにくい所を探したら唇になりました……。
(-116) 2014/02/09(Sun) 00時半頃
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[明之進の背に回した指先が、服に染みた何かを捉える。 僅かに紅色に染まった中指。
牙は痛くないわけではなかった。だから正直に]
……始めだけ
[と告げる。春風に乗って届く桜花よりも甘い香りがした。>>*145 唇が触れ合い、牙の先が僅かに刺さる。
息を吸う様に細管を通り口内に広がる味は――血で。 一層の渇きを招くだけ。]
(*152) 2014/02/09(Sun) 01時頃
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―ある日―
[『柊』はどんな冬か。>>243 絵本を開き、吹雪の絵を見せた。 こんなものが来たら、鬼でなくとも逃げてしまいそうだけど。
――と、前置きした上で、棘の話をした。 雨の日に『おかあさん』の所に行こうとしていた明之進に。 きっと何処にも行けないのだと、憶測は口に出せなかった。 手にしていたものを見て、自分も懐刀を大事にしていると鞘を見せたこともあった。
別の、代わりのものを探せるようになれば良いと思って、色々と質問を投げ掛けていた成果であろう。]
人間には痛くないよ。鬼じゃないんだし。 だから、大丈夫。
[表情が崩せないかと髪をやや乱雑に撫でた後、脇腹を擽ったのは昔のこと。 何故、そんな事を気遣わしげに問うのか。当時は分からなかった。**]
(260) 2014/02/09(Sun) 01時半頃
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[――今も。
明之進の問うた意味の、どれ程が零瑠に伝わっていたかは分からない。 未だ人と鬼の狭間に居る雛に、刺さる棘の傷みは『始めだけ』。
こうして家族に牙を見せても。
リカルダの、引き留めるような声に振り向けずに居るのも。
―――抗えずに居るのも。]
(*157) 2014/02/09(Sun) 01時半頃
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[目視に入る赤雫は、夢の続きを見ている様。 親から餌を与えられるまま、その中指を口に含む。
金平糖よりも羊羮よりも。 甘いあまい、味がした。
強く吸い、傷口へと舌を這わせ。]
―――も、足り…
(*158) 2014/02/09(Sun) 02時頃
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[水を飲んでも、生えた牙が血を啜っても、この渇きを満たしてはくれなかったのに。 どうかしてる! 叫ぶような理性すら注ぎ込まれた力が捩じ伏せようとする。]
とる……とる、ど……さ
[縋る様に囀り、指の先を辿って左の肩口に噛み付いた。 腋下から腕を回して縋り付き、渇きを潤す甘美な味に伏せた睫毛と喉を震わせる。]
(*159) 2014/02/09(Sun) 02時頃
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[明之進の背の、傷口に沈まんとする指は止まっていた。
自ら離せないのは、世界を変える為ではない。
迷子にならないように。居なくならないように。 安心出来るように。
繋いだ手を、触れた指を離さないのは―――… 零瑠にとっての『日常』だからだ。]
(*164) 2014/02/09(Sun) 02時頃
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ん…ン――
[全身に始祖の血が巡る悦に、脳が焼かれそうだ。初めての食事は最高の食事でもあった。]
…ぷ、は ――――― ぁ
[頭を撫でる手に、肌から離れた唇が満足げに幸せそうに弧を描く。
引き離されたことで牙が肉から抜かれた。 夢中で求めていたせいで、赤子の様にトルドヴィンの肌と己の口元を、そして白の服の胸元を紅く汚して居たことに気付いたのは、二つ穴から新しい血が溢れて零れるのを見た後で。
視界に入る紅色。 同時に零瑠は意識を手離した。*]
(*167) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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― ゆ め ―
[寒さで目を覚ます。まだ夜だから寝ていないといけないのに、瞼を下ろしても眠気はやってこなかった。 懐を押さえて懐剣の在るを確かめてから身を起こす。
布団から出て一歩。足の裏から伝わる畳の冷たさに身を抱いた。 吐き出す息は白く、火鉢に残る僅かな熱を蝋燭に移して明かりを作る。障子と雨戸を開けた庭もまた、一面真白く眩かった。
桜の枝は白を乗せて重みでしなり、雪の塊を落とす。夜闇の中、はらはらと降る白雪は桜花のようで美しい。心奪われ、淡い炎が消えるまで縁側に座って見ていた。
猫のような泣き声が聞こえ、男児はその方を見遣る。新しい母の腹は大きくなっていたが、産まれるには早い。だからあれは秋に使用人の一人が産んだ赤子の泣き声。]
(289) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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[医者の見立てでは女の子だという。妹が出来るのだ。男児は『兄』になるのだ。
名前は『菖蒲』。男でも女でも『あやめ』。腹の上から何度も呼び掛けた。耳を押し付けて鼓動を聞き、腹越しに蹴られたこともあった。
赤みの強い紫色を思い描き、視線を庭に戻す。 春になったら―――…今度は花を植えようと思った。誕生日祝いに、名前の花を。]
(290) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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[――けれど。
女童が生まれる前に、 男児の姿は屋敷から消えていた。**]
(291) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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/* お兄ちゃんは、使用人の赤子の泣き声ではなく、 あやめの泣き声を聞く気で居たのだけど、 顔を見ないまま分かれるのも良いなぁって。
でも、どうやって思い出すんだろう?
(-137) 2014/02/09(Sun) 03時頃
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[誕生日祝いに。花を――…。]
(*176) 2014/02/09(Sun) 03時頃
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[始祖による誕生日祝いは、零瑠に鮮血の花を齎した。
次に目を覚ましたとき、鏡に映る瞳から革色が消えていた。 腹が減っても用意されるのはパンでも白米でもなく、血。
目前で人間の首から採取される様を見て、零瑠はまた気を失った。]
嫌だ!
[首を振り、頑なに食事を拒んだ時もあった。 あんなに血がだめだったのに。 今ではそれが『生きる』為に必要だなんて。]
(*178) 2014/02/09(Sun) 03時半頃
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[―――なら、死んだ方が良い!
……とは言えなかった。 吸血鬼たちを、人間たちを見たら、そんなこと。]
(*181) 2014/02/09(Sun) 03時半頃
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刺だから駄目って、なに? 明に触ったら駄目なの?
……どうして、明は、前みたいに俺の頭を撫でなくなったんだ?
[新しく生まれ変わった日の事を、後日明之進に問うことは出来ただろうか。>>*169 あの雨の日、傘は手離さなかったが、彼の手はそのままだった。気を失ってからの事を、見ていた子がこそりと教えてくれたのだ。]
(*182) 2014/02/09(Sun) 03時半頃
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[ハンガーストライキも長くはもたない。 そんな時は、家族に、あるいは始祖に頼る事になる。
ゆるゆると時が流れていくうちに、 流血で倒れる事は無くなった。**]
(*184) 2014/02/09(Sun) 04時頃
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―『希望』―
あんごおにーたん。
『れい』って、どんな漢字があるの?
[孤児院に来たばかりの男児には、問われても答える名前がなかった。言葉を失い、記憶を失い、瞳からも生気を失っていた。
自分の名前を決めようと思い立ったのは、孤児院での生活に慣れて言葉を話せるようになってから。 『いる』にしようか、それとも『れいる』にしようか。迷いあぐねている時に、安吾の姿を見かけた。
今日もまた子供たちに文字を、漢字を教えている。だから尋ねて、『零』を選んだ。]
(435) 2014/02/09(Sun) 22時半頃
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[安吾のしてきた事をひとつ、引き継いだ。書き散らした半紙の、広告の裏の。楽しげな声。]
……リッキィのその願いは叶うよ。 絢矢は外に出るのを渋る――というか、誰かの『おかえり』を待ってるから。
うん、リッキィに叶えて欲しい。願っていて欲しい。俺も願えば足りるよ。
君は――…『希望』だから。
(436) 2014/02/09(Sun) 22時半頃
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[君は、君達は。 自分以外の家族を差す。零瑠の願いは自己の過去に向けられたものだから。希望になり得るのは、そう、リカルダのような子。
明之進が2枚の『希望』を重ねる。]
……明の、希望は何だろうね?
[手習いの字の様に。 増えていけば良いのに。]
(437) 2014/02/09(Sun) 22時半頃
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[『希望』『希望』『希望』。
重ね連なる文字の中に、1枚だけ、
『冀望』が―――…。**]
(438) 2014/02/09(Sun) 22時半頃
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― 現実 ―
[世話をする者の居なくなった桜の木々は、雷で焼かれたり強い風で枝が折れたり病にかかったりと、ほとんどが枯れてしまった。
そうして、年々桜花の量が減っていく。
菖蒲の花は、背丈の長い草に日光を阻まれ、小さな花を咲かすしかない。
そうして、年々咲く花の数が減っていく。
この屋敷に住む者が『桜庭』と呼ばれていたことを、今も知る人は―――減っていく。**]
(442) 2014/02/09(Sun) 23時頃
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――5年後――
[扉の前で脇に挟んだものは学生帽。 視界を塞ぐ為に『兄』から与えられたもの。 名残惜しい訳ではない。 ただ、体が成長するにつれ、隙間がなくなっていくから手離せ難かった。
開く扉。歩を進め、ブーツの踵を揃えて理依の隣に立つ。]
………。
(*267) 2014/02/09(Sun) 23時頃
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[マントの下、腰から下げるのは刀身の短い日本刀。 懐剣は鍔のないせいで柄握る手まで血に濡れてしまうからと、 新しい武器を求めたのはいつの頃だったか。
初陣と聞いて、声援と鼓舞に背を伸ばし表情をこわばらせる。
いつか来る日が来ただけのこと。]
―――御意。
[言葉と態度が示すのは従順。 ゆるゆると微笑み浮かべて頭を垂れる。 灰みの僅かに残る紅は、何を顕すか、知られる前に帽子をり、余計な事を言うなと視線で理依を咎める。]
(*275) 2014/02/09(Sun) 23時半頃
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[律儀な返答を最後まで聞いてから、零瑠は扉に向かう。 一度足を止め]
――柊。
[5年前の誕生日から変えた名で明之進を呼ぶ。]
(*281) 2014/02/09(Sun) 23時半頃
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/* キラキラだと、なんだか邪気っぽいから……ね。うん。 でも気になる……。 太陽的ななにか?
(-215) 2014/02/10(Mon) 00時頃
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背面を任せても、よいかな?
[自由にというのなら、方面を同じくしないかと尋ねる。>>*283]
(*287) 2014/02/10(Mon) 00時頃
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