164 天つ星舞え緋を纏い
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[迷っている暇は無い。 演目を行う時の集中力はここでも発揮され、一時、周囲の音が聞こえないような感覚に陥った。 間近にある拍動に対し扇を振り上げると、周囲に居た蝶は奔流となって壁を作り為し。 異形のものの爪の軌道を遮り華月斎を護る。 パチン、と扇を閉じ、その場で一回転。 閉じた扇の切先の軌道に半紙の蝶を乗せ、左から右へと振り抜くと、撓る荒綱の如き動きで蝶は異形のものを打ち据えた。 更に蝶は飛礫となり異形のものを打ち抜いていく]
(*0) 2014/02/15(Sat) 23時半頃
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ゆうがおは、たすけるのね。
わたしのことは、たすけてくれなかった、くせに。
(*1) 2014/02/16(Sun) 00時頃
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[唇が、勝手に言の葉を紡ぐ。 身の内から、抑え切れないチカラが、溢れた影が。
祖父を包み、飲み込み、息を奪う。
止めたいのに、声が、出ない。]
あさがおを、たすけてくれなかったおじいさまは。
いらないのよ。
[勝手に言葉を紡ぐ唇が、笑みを描いた]
(*2) 2014/02/16(Sun) 00時頃
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[足許がさらさらと柔らかな砂地に変わっていた。 一瞬にして一平太の身体を沈め、呑み込んでしまう程に。 それは追ってきた異形も同じ事で、襲いかかった時の勢いのまま爪から頭から呑み込まれて行く。 但しそちらが三分の二も埋もれぬうち、砂地は元の固い地面に戻ってしまった]
(*3) 2014/02/16(Sun) 00時頃
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じゃまを、しないで。
[言うなり、足元の影が伸びる。 獣達の数だけ先が分かれ、くるり、縛り付ける様に纏わりついて。]
ゆうがおは。
おじいさまのそばに、いたいだけ、なの。
[ずるり。 影の中へと、引き摺り込む。]
(*4) 2014/02/16(Sun) 00時半頃
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……冬の夜寒の 朝ぼらけ
[口をついたのは、出掛けに母の前で舞った今様舞に沿う謡の、冬の節]
契りし山路は 雪深し
[それに応じるよに、笛が淡い銀の光を宿す]
心のあとは つかねども
[それと共に宿るのは、冬の厳しさにも似た、刃の鋭さ]
思いやるこそ あわれなれ
[刃の鋭さ帯びた笛を手に、ゆるり、辿るは舞の動き。 優美さと鋭さと、二つ併せ持つ舞は、飛び掛る異形を断ち切った]
(*5) 2014/02/16(Sun) 00時半頃
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[ぐるりぐるりと、錫杖が空を切り、大きな焔の環を造る]
『ノウマク サラバタタギャテイビャク
サラバボッケイビャク サラバタタラタ
センダマカロシャダ ケンギャキギャキ
サラバビギナン ウンタラタ カンマン』
[韻を踏み、唱えられた真言の響きに応じるように、焔は大きく燃え上がり、螺旋を描いて広がると、目の届く範囲に転がる骸全てに燃え移り、燃え上がり、焼き尽くす]
(*6) 2014/02/16(Sun) 01時頃
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[右手が――あの日母に包まれた手が、熱い。 長屋の屋根を飛び越えた先、異形もまた地面から宙へと飛び上がらんとしている所だった。 耳障りな羽音が響き、蟷螂に似た前脚が振り上げられる]
邪魔、……するな。
[日向の目には、振り上げられる前脚に絡む風の帯が"視えて"いた。 だからそれに右手を伸ばし、実体ある帯の如く下に引く。 果たして均衡を崩した妖魔は、失速して再び地に落ちた]
退け。
[右手を振るう。 常ならば手団扇程度のその動きが、今は突風を生み異形の動きを阻む。 そうして異形の傍を通り抜け、その先へ向かおうとして]
(*7) 2014/02/16(Sun) 01時頃
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[近づいたのは親切心でしかなかったのに。]
『ば……化け物っ!』
[投げつけられたのは拒絶の言葉。 女の表情が一瞬だけ酷く歪み。]
……そ、か。 私って、出来損ないどころか、化け物だったんだ……。
じゃぁ、仕方ないよね……。
[座り込んだままの老婆を無表情で見下ろして。 そうするのが当然のように老婆の胸を刀で貫けば、断末魔が迸った。]
(*8) 2014/02/16(Sun) 01時半頃
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[貫いた刀を引き抜けば、傷口は凍り付いていて、血が滲むこともない。]
ああ、そういえば……。 この着物、気に入ってたんだけどね……。
[首をめぐらせ、先に怪我した左肩に視線を向ける。 裂かれた肩は、血の色に染まっているものの。 今はもう血は止まっている……正確には、凍り付いているのだが。]
……否定、出来ないよね。 どれも、これも……人間に出来ることじゃないもの。
[ふらり、木の幹に身体を預け、真っ暗な空を仰ぐ。]
ほかにも化け物はいるの? それとも私だけ?
ま、どっちにしろ、一度手当しなくちゃ、かな……。
[正確な状況はやはりわからないなら、万が一に備えればいいだけ、と女は自宅へと足を向ける。]
(*9) 2014/02/16(Sun) 02時頃
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[―― どちらでもなくて、その真下。 人々と異形の立つ地面が、ぱくりと割れた]
[下へ落ちゆく者たちに思考する暇があったとして、きっと周りを囲む化け物共の仕業だと思っただろう。 だからその刹那の父と目が合ったのは、偶然だったのかも知れない。 それでも]
(*10) 2014/02/16(Sun) 22時頃
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[向けた表情は、いつかのように感情の伺えないもの]
いま止めたら、そいつら逃がしちまう。 そうなったら、もっと沢山の人が、痛い思いすっから。
[今のこれを、己が起こしているものだと自覚しながら、その中に幾つも知った顔があるのを知りながら。 地が全てを呑みこみ閉じるのを、止めようとはせず]
(*11) 2014/02/16(Sun) 22時頃
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[やがてそこから“要らないもの”だけが吐き出された]
(*12) 2014/02/16(Sun) 22時頃
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― 畦道 ―
殺されとうはないのなら、わしを殺すかい?
[ぶん、と両腕を交差して、回した錫杖の環が鬼火を纏い、紅く燃え上がった]
(*13) 2014/02/16(Sun) 22時半頃
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─ 畦道 ─
殺されたくはないですし、放っても置けない、から。
[いいながら、懐に収めた笛に手を伸ばす]
だから……鎮め、ます。
[掴んだ笛をくるりと回し。 しかと握り直した後、舞扇を払うが如き動きでゆるり、弧を描いてぴたりととめた]
(*14) 2014/02/16(Sun) 22時半頃
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― 畦道 ―
鎮める、とな?
[腰の太刀には手を伸ばさず、懐に手を入れた明之進の言葉に、坊主はぱちりと瞬いた。 笛を取り出すその腕の、舞うような美しい動きに、目を奪われたは、ほんのひととき]
ほう、そうか...鎮められるものなら
[言いざま、ぶん、と錫杖を前方に振り下ろせば、焔が一筋の帯となって、明之進へと走る]
やってみるがいいさ...!
(*15) 2014/02/16(Sun) 23時頃
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─ 畦道 ─
[鎮める、と言い放ったのはごく自然なこと。 内にある銀の光が、より強く求めるのはそれだと思えたから]
……言われずとも、やってやる!
[何故そうしなければならぬのか、はわからぬけれど。 それが自分の成す事と思うから]
(*16) 2014/02/16(Sun) 23時半頃
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……っ、と!
花橘も 匂うなり 軒のあやめも かおるなり 夕ぐれさまの 五月雨に 山ほととぎす 名のるなり!
[駆けて来る炎の帯>>*15は、寸での所で横に飛び、避ける。 着地の直後にくるりと身を返し、紡ぐのは今様歌。 本来の歌い方とは程遠い、早口のものではあるけれど。 笛には確り、気が宿る。 夏の日差しの、苛烈な光。 それを宿した横笛を手に、己が身の『時』を速めて踏み込んで]
……はっ!
[短い気合と共に、横一閃に振り抜いた]
(*17) 2014/02/16(Sun) 23時半頃
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― 畦道 ―
[焔の帯が躱されたのは、ある意味予定のうち、だが、その後は違った]
なん...?!
[早口の今様の紡ぎ出された次の瞬間、離れていた筈の明之進の姿が、目前に迫る]
おおうっ!
[笛を振り抜くその動きの始めは辛うじて目に留まった故に、それを錫杖にてたたき落とそうと振り上げて...だが、眩しい輝きにその軌道は大きく逸れた]
(*18) 2014/02/17(Mon) 00時頃
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