126 生贄と救済の果てに〜雨尽きぬ廃村・ノア〜
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/* 長いよ!
(-39) 2013/06/14(Fri) 23時頃
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― そして、魔性に ―
[アヴァロンの為に働く事に迷いを抱えたまま、一人で臨んだ任務に苦戦し。 普段は後れを取らない魔物に覆い被さられ。 無茶な戦い方をした所為で魔力の尽きた俺の前に‘それ’は現れた。
宙に浮かぶ白く輝く杯。
―頭に直接届く言葉。
『代償を捧げよ。さらば汝の望みを叶えてやろう。』
俺が望み、捧げたものは。]
(*23) 2013/06/14(Fri) 23時頃
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[望んだものは、あんな不条理な掟をねじ伏せる事の出来る強い力。
捧げたものは、この身の成長。]
(*24) 2013/06/14(Fri) 23時頃
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[気が付いた時には、狩る対象の魔物を自分の中に取り込んでいた。
生贄にするのとはまた違う、自分の身体と融合させるような感覚。
俺は、針のような毛と固い甲羅のような装甲を纏った魔物になっていた。*]
(*25) 2013/06/14(Fri) 23時頃
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/* おしまい!
赤喉あり過ぎてこっちに持ってきたいです。
(-40) 2013/06/14(Fri) 23時頃
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でも、今回の任務は俺達を殺す事なんだろ。
[それなら一緒ではないか、と告げる声は、廃屋で聞いたのと変わらぬ響きだっただろう。]
ふーん。そう。 何かあったら言ってよ。 取り敢えず俺、ヴェスさんのところに行ってくるんで。
[彼の事をまだよく知らない故、突き放した口調は彼の地なのだろうと。 返す言葉は仲間に対するものと変わらない。]
(*26) 2013/06/14(Fri) 23時半頃
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― 崩れかけた小屋 ―
[先刻まで自分がいた廃屋からは距離を置いた、崩れかけた小屋の中にヴェスパタインの姿はあった。
断りを入れず、不用心に扉を開けた瞬間に鎌で切り付けられたが、咄嗟に身体を捩った事で大きな傷になる事は無かった。
愛用の鎌を油断なく構えるヴェスパタインに両手を上げてみせ、自分に害意はない事を示す。]
―あんたと話がしたいんだ。
「…一体何だ?」
[取られた距離は、胸を鈍く痛ませる。 ぶつけたのは、率直な疑問。]
―なぁ。 あんたも、俺達の中に魔物がいるって信じてるのか。 信じて俺達を集めたのか。
(133) 2013/06/14(Fri) 23時半頃
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[ヴェスパタインはこちらから目を離さず、まっすぐに見つめてきた。 それは油断できない敵に対してか、それとも多少なりと信を置く仲間に対するものなのかは分からないけれど。]
「アヴァロンの情報網を甘く見るな。―だが、お前がそうでなければ良いとは思っている。」 ……。 これが、俺達に課せられた『任務』なんだな。 区別もつかないのに、無差別に殺し合えっていうわけ。 [次の言葉にヴェスパタインから返る言葉はない。 自分はそれを是と受け取った。
―そして]
(134) 2013/06/14(Fri) 23時半頃
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[床を突き破って伸びた蔦が、銀糸の髪の男に襲いかかる。 それは控えさせていた魔物のもの。 数本は鎌で切られたが、残る蔦が毒を吐き、一瞬動きを止めたヴェスパタインの身体にきつく絡まって拘束した。
動きを封じられた手練れの男の懐に飛び込み、腹に右腕を貫通させる。 肉が裂かれ、骨が軋む音。 ヴェスパタインの白い顔が苦痛に歪んだ。 ―彼の身体に生えたイアンの右腕は、針のような毛で覆われていた。]
あんたは『任務だから』、魔物を排除しようと俺達を集めたんだろ。 俺やヴェラさんの事も信用ならないって思ったから此処に身を寄せた。 その判断は半分正解で、半分ハズレだ。
[その声はいつものような口調でありながら、氷のように冷たい。 そして緩く首を傾げながら問いかける。]
―なぁ、覚えてる? あんたと二人で向かった任務だ。 二年前のあの魔物…俺の弟だったんだよ。
(136) 2013/06/14(Fri) 23時半頃
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[ヴェスパタインの僅かに瞠られた目を見て薄く笑う。]
俺、ちゃんと生贄にしただろう? だってそれが俺達の『任務』だったから。
でもさ、あの時俺は あいつを救済してやりたかったんだ。
だってあいつは俺のたった一人の家族だったから。
[擦り切れた男の心は、空虚。 浮かべた笑顔も空しく。]
―俺はあの時、アヴァロンの掟を憎んだよ。
[そして憎しみに囚われ、任務中に死にかけて…魔物へと変貌を遂げた。]
(137) 2013/06/14(Fri) 23時半頃
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俺はあんたみたいに強くなりたかった。 そうしたら弟も、生贄にした事を赦してくれるって。 結局、俺は魔物になったけど…あんた達の事は仲間だと思ってた。 任務もちゃんとこなしてきただろ?
―でも、共存できないなら仕方ない。
[腹に埋まっている弟の魂の宿る右腕を、抉るように動かす。 内臓が傷つけられたか、ヴェスパタインの口から血が零れた。 腕を引き抜けば、彼の身体は魔物の蔦に絡め取られたまま、荒い息をつく。 くぐもった声は漏れたけれど、悲鳴は上げなかった。
その姿を見る目に温度は宿っていない。]
(138) 2013/06/14(Fri) 23時半頃
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[その刹那、ヴェスパタインが咆哮めいた声をあげて自分を戒める蔦を引き千切る。 足元に転がった鎌を手にし、深手を負った男は血を滴らせながらイアンを睨んだ。]
「…せめて、お前は俺が…してやる。」
―へぇ、腹を開いたのにそんなに動けるんだ。
[男は腹を、そこに収まった内臓の多くを損傷している。 それでも動けるのは、『アヴァロン』に忠実な男の最期の矜持か。 イアンが呼び出したのは愛用のフォシャール。 魔物と化した腕は、鎌には間合いで劣る。
いずれ発覚されることは分かっていても、なるべく秘密裏に事を収めてしまいたかったから全身を変化させはしなかった。
まるで図ったようなタイミングで自分の愛用する武器を構えた両者は相手に襲い掛かった。]
(140) 2013/06/15(Sat) 00時頃
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[―ヴェスパタインの鎌はイアンの左肩を裂き、イアンの振るった長刀はヴェスパタインの胸を切り裂いた。]
ヴェスさん。
―ごめんな。
[胸から血飛沫を上げてあちこちが破れた床に崩れ落ちるヴェスパタインの身体を、痛む肩を押さえながら見下ろす。
これだけで済んだのは、ヴェスパタインが負傷していたからか。 それとも。 瀕死のヴェスパタインから、答えは聞けそうにない。]
(151) 2013/06/15(Sat) 00時頃
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―あんたの魂、俺にちょうだい。
[しゃがみ込み、瀕死のヴェスパタインに向かって自分の右手をかざす。 意識が朦朧としている銀糸の男に拒絶する力は残されていない。]
(156) 2013/06/15(Sat) 00時頃
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