186 夏なんです【Sheeps' monologue project】
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[夕暮れの教室。]
[真っ赤な夕日が室内を刺す。 カーテンを揺らす風が、少しの涼やかさを与える。 制服姿の少年と少女が、ふたりきり。]
大学には行かないの?
[椅子に腰掛けたまま、澄んだ声で少女は尋ねる。]
「ああ、行かない」
[少年の返答に、少女は(そっか)と呟いて、それ以上何も言わない。]
(14) 2014/07/23(Wed) 21時半頃
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「俺が大学に行ったとして、4年だろ。親父、もたねえよ」
[少年の父親が身体を悪くしたのだと、狭い世界の人間は皆知っていた。]
「店、潰すのもさ」
[そして、口を噤んだ少年と、目を合わさないままに少女は言う。]
うん。
[それ以上、何も言えない。]
(15) 2014/07/23(Wed) 21時半頃
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白い壁。緑の壁。 青い瞳は、今ようやく、そのことに気がついた。
壁が色を持つということ。 世界は一定ではないということ。
一歩踏み出さなくとも、何かが髪をそよがせていること。
(16) 2014/07/23(Wed) 21時半頃
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季節は巡る。 私達三人は、変わらない日々を過ごしていた。 文化祭や、体育祭。 クラスで行う行事も盛況のうちに終わり、来年もまたこの面子であることを喜んでいた。
その、矢先。
(@5) 2014/07/23(Wed) 21時半頃
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和樹が、事故にあった
(@6) 2014/07/23(Wed) 21時半頃
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その知らせは、春にやってきた。 遅刻するから先に行ってろ、と寝ぼけ眼のカズに見送られて、タカと二人で登校した日だった。 一時間目が終わっても、一向にやってくる気配がない彼に、どうしたんだろう、と思っていた。 二度寝でもしたんじゃないか、というクラスメイトの言葉に笑っていた時、 たまたま職員室に向かった別の生徒が、息を切らして私達の元へやってきて告げた。
一瞬で、血の気が引いた。 気が付くと、私とタカは教室を飛び出していた。
(@7) 2014/07/23(Wed) 21時半頃
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大人になってから東京を訪れることになったのは偶然だった。 夏休みに祖父母の家に来た時だけ一緒に遊んでいた男の子の家があると聞いていたが、いつしか疎遠になってしまった。
私の住む町はありふれた田舎町でしかない。町は変わらないけれど、訪れる人は変わってしまう。 新しく見たもの一つ一つに、私の言葉一つ一つに感嘆していたあの子はもう来ない。
(-7) 2014/07/23(Wed) 21時半頃
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都会から来た人が帰る時にはいつも、置いていかれた気分になった。 海のにおいが強い岸に立ってさえ、慣れてしまえば何の特別も齎さず、つまらないと感じていた。 海のにおいと青さと崖の岩肌を打つ並の音と、一つ一つを楽しんでいたあの子を「こんなもの何でもないよ」と笑いながら、本当は少し羨んでいた。 東京に戻ればきっと他にも面白いものがいっぱいあるのだろうと思っていた。
(-8) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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受験勉強以外に予定のない 退屈だけど平穏な夏休み そして高校生活最後の夏休みだ
親友とよべる友だちも 彼女もいない とくべつ運動ができるわけでもないし 大した特技があるわけでもない
そんなナイナイづくしの僕が これまたなにもない町の外に出てみたところで なにかを手にできるわけなかった 急にじぶんが情けなくなる
(17) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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僕は 今や傷だらけのビー玉に 自分の日々を重ねると 有名ロックバンドの曲を口ずさみながら 思いっきり蹴飛ばした
つま先に わずかに硬いものが当たる感覚 陽を浴びてきらきら煌めきながら 落ちていくビー玉
遠くでコツンと音がしたあと そのままコロコロとどこかへ消えてしまった
さよならビー玉 僕は町にもどったらサイダーを飲むよ そしてまた凪のような生活にもどるんだ
(18) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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職員室は騒然としていた。 白い顔をした担任は私達を見つけると、そのまま病院へと連れだした。 道中、ぽつりぽつりと、担任は状況を口にした。
車と衝突したこと。 すぐに救急車が呼ばれたが、意識がないこと。 怪我の状態も酷いものであること。
その間、私は後部座席で、タカの手を握りしめていた。 最悪の事態が頭をよぎる。 何の結論も出せないまま、伝えないまま、 いつかいつかと先延ばしにしたまま?
(@8) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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不思議なもので、東京に来てみればビルの多さが目につくぐらいで、別にどうということのない普通の町に思えた。 焦がれた見知らぬ町で光るネオンよりも、退屈な田舎の町の空と海が輝かしいようにさえ感じた。
子供の私にとってまだ見ぬ宇宙に等しかった都会の町並みは今ではただの町になり、夜空に見える星が宇宙に戻った。
(-9) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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星の少ない空を眺めて、隣にいない特別を思った。 何度でも星の多さに目を見張っていた少年の輝きを思った。
あの子が特に好きだったわけでも、嫌いだったわけでもないけれど、特別だった。 夏の特別だった。
(-10) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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「大丈夫だよ」
俯いたまま、ベンチに座っている隣で、タカの声がした。
「約束しただろ? 来年の夏もまた、星を見に行こうって」
私は、うん、と頷くことしかできなかった。 夏の約束。 来年も、その先も、疑っていなかったあの頃。 忘れられない視線と、言葉と、
(@9) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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そこから先は、覚えていない
(@10) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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「アニメみたいに? 宇宙船で星を探しに行くの?」
聞こえなかった言葉を 問い返すこともなく
「楽しそうだね」
聞こえた言葉の字面だけ 応える 何も見ていないふり 星だけを見ているふり
気づかないふりに 君は気づかない あるいは 気づかないふり
(19) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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『何億光年 輝く星にも 寿命があると 教えてくれたのは あなたでした 季節ごとに咲く一輪の花に 無限の命 知らせてくれたのも あなたでした』
(-11) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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後から聞いたところによると、残念ながら、という声を聞いたと同時に、私は気を失ったらしい。 それから通夜、葬式と茫然自失といった表情で参列したという。
唯一のその周辺の記憶は、煙突から煙が空へと登っていくところだ。 青く、雲ひとつない空が、あの日を思い起こさせたのかもしれない。 私はただ、ぼうっとそれを見つめていた。
(@11) 2014/07/23(Wed) 22時半頃
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/* んー エピ入る前に書ききるか
(-12) 2014/07/23(Wed) 22時半頃
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澄んだ歌声が聴こえる。 暑さとかき氷の「のぼり」の魅力に負けて入った店で、流れていた曲。そんな些細なことを覚えているのは、あの子に星と宇宙の話を得意満面にしたからだろうか。 自分も本当は、「宇宙のひみつ」を読んで知ったばかりの癖に、こんなことも知らないのかと力いっぱい偉ぶっていた。
あの子はまだ東京に住んでいて、同じように歌を聴いたりもしているのだろうか。 実はこの会場にいたりして、などと益体もない妄想が過ぎって苦笑する。
(-13) 2014/07/23(Wed) 22時半頃
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万一、いたとしたって「あの子」がいることは決してない。
(-14) 2014/07/23(Wed) 22時半頃
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「君の気持ちが少しだけ、分かったよ」
今はもうどこにもいない あの日の君に 呟きを小さなビンに封じて 心の何処かに流した
(20) 2014/07/23(Wed) 22時半頃
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――現在――
蝉の声で、現実に引き戻された。 あの後、高校を卒業した私達は同じ大学へ進み、二人の関係は幼馴染から恋人、そして夫婦へと形を変えた。
そこに至るまでに、一つの葛藤があった。 否、今でも、少し。 目の前の石が何も言わないことをいいことに、 置き去りにしていた、私と彼の、関係。
(@12) 2014/07/23(Wed) 22時半頃
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/* 一応、個人的には>>19一行目にてリンクを張る作業は終了しました。 灰に埋めた裏設定込みじゃないとよく分かりませんが。 とはいえ、お互いあちこちフィルタ順とは関係なしに何となく繋がってる感がありますね。 好き勝手に独り言をしているけど同じ空間に居る。面白いです。
(-15) 2014/07/23(Wed) 22時半頃
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私が出した――出せなかった結論は。 即答もできず、後にも何も言わない。 それは、ただの否定の言葉よりも残酷だ。
きっと、彼もわかっていたのだ。 私が、彼を恋愛対象として見ていなかったことを。 恋人として振り向きはしないことを。
だから、忘れろ、と言った。 強がって、興味が無いふりをして。 それが、彼なりの優しさだ。
(@13) 2014/07/23(Wed) 23時頃
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/* 女の子の方に顔と名前がありません。 人名とか考えるの苦手だからそれでもいいかなと思いつつ。 議事国なのに何故か文明開化から選ぶと、ツバキでしょうか。 議事国から選ぶならパティ辺りか。ツバキとパティ全然違いますが、イメージに合う人を選んだらそんな感じに。 コリーンも有り得なくはないことに気づいたけど既に別人でした。 名前は波多野明子(はたの あきこ)としましょう。 メモの名前の欄がなかったら多分二人共無名だったかと思いますが、大河内に名前あるのに無いのは可哀相なので……名前に使い道は特にないですが。
(-16) 2014/07/23(Wed) 23時頃
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忘れたことはない。 今でも、思い出せる。
すこし気まずそうな顔も、 真剣な顔も、 苦笑いした顔も、 あの時の空気も、 夏の夜空も。
夏の大三角形を見る度に、揺り戻される感情。 私は、 私は、ただ、
(@14) 2014/07/23(Wed) 23時頃
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失いたくなかった。 幼馴染として、友人として。 だから、優しさに甘えて、言わずにいた。
言えばよかったのだ。 二度と戻れない、あの、夏の日に。
貴方のことは大切だ、と。 望む関係にはなれないけれど、 無くてはならない存在で、友人として、幼馴染として好きだと。
ただそれだけのことが、言えなかった。 ずっと、ずっと、秘密にしていた。 君の知らない、私だけの秘密。
(@15) 2014/07/23(Wed) 23時頃
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「ハルカ?」
私の表情を覗き見る彼と目があった。 ぱち、とまばたきをする。 ずいぶんと時間がたったのか、彼の首筋には汗の跡があった。
「たくさん、思い出してたの。 あの日のこととか」 「あの日?」 「そう。 カズが……、星を見に行こうって、言った日」
さっきその話をしたから、というと、納得したような顔をした。 多分、彼にとっては、沢山過ごしてきた中の一日でしかないのだろう。
(@16) 2014/07/23(Wed) 23時半頃
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「じゃあ…、また来るな、和樹」 「またね、カズ」
思い出話を幾つかしてから、私達はその場から立ち去った。 またね。 きっとくる未来を前提に。
ぎらぎらとしていた太陽は、少し力を弱め その代わりに、雨雲らしきものが近くに見える。 そのうち、通り雨がくるだろう。 空気の埃を落として、きっと夜には晴れているはず。
(@17) 2014/07/23(Wed) 23時半頃
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