308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】
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[ あの子が何よりも大切よ。]
(+22) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ 娘も、その夫も、おじいさんも、 向こうのご両親も逝ってしまって。
あの子にはわたししかいないと思うたび、 使命感に奮い立たされるのと同時に、 どれだけ心細かったことでしょう。
いつかわたしも向こうにいくとき、 優しい立派な大人になったでしょうと、 胸を張って言える日を夢見ていたわ。
そんな日が訪れるって信じていたの。 ……信じていたいの。最後までずっと。]
(+23) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ ……わかってくれる? ]
(+24) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ ろくに眠れもせず一晩を明かしたわ。]
(+25) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ 一夜明けても状況が好転することはなかった。
時折門扉を揺らすガシャンという音や、 裏戸を叩くような荒い音が響いたけれど、 誰もいちいち反応することはなくなっていた。
慣れてしまったのかしらね。 それとも、頭が働いてないのかも。
眠いけれど、空腹で眠れなくて、 なんだかずっと、ぼうっとした気分なの。 きっと皆そんなふうだったわ。
水が止まっていなかったのが救いね。 砂糖を溶かして飲んだりして、 あの手この手で空腹をごまかしていた。 もう本当に残り僅かな食糧を、 どうにかして温存しておきたかったのね。]
(+26) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ そんな中、わたしは廊下を歩いていたわ。 いつも以上にゆっくりとした足取りで。
コンコンと数度扉をノックしたら、 やつれた顔のお隣のご主人が扉を開けた。 髪の毛はぼさぼさで、シャツは皺になっていた。 改めてこうして見ると、ひどい有様だったわ。
きっとわたしも似たようなものね。 水シャワーを浴びたりはしていたけれど、 もう身なりに気を遣う余裕なんてなかった。
ご主人は何も言わずわたしを見下ろしていたわ。 後ろから、奥さんも様子をうかがっていた。
わたしは少し躊躇ってから顔を上げたの。]
(+27) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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一晩よく考えたんだけど──、 ……確かに、あなたの言うとおりだわ。 今は……生き延びることを優先しないと。
(+28) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ 疲れ果てたようなご主人の瞳に、 一瞬、強い光が宿った気がしたわ。
わたしにいいんですね≠ニ念を押したけど、 後戻りなんて許される様子はなかった。]
……ええ。
[ わたしは自分を納得させるように、 もう一度しっかりとうなずいて見せた。
いいわけなんてなかった。 けれど、ほかの方法が見つからないんだもの。 せめて間違った選択ではないと信じるしかないわ。]
(+29) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ わたしの意思を確認したあとは、 彼らの手際は非常によかった。
武器として準備していた刃物であるとか、 バケツだとかを粛々と取り出したのね。
今からやるの? と怖気づいたわたしに、 ご主人は有無をいわさない口調で告げたわ。
こういうことをするのにも、 体力がいりますからね。 少しでも余裕のあるうちというわけです
シャツを汚さないよう肌着姿になって、 戸惑っている間に準備が整えられていた。]
(+30) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ 行きましょう≠ニ奥さんに言われたとき、 なんとなく、本当になんとなくだけれど、 ようやく合点がいったような気がしたの。
お店から食べるものがなくなってしまって、 家にあるもので食い繋ぐしかないと悟ったとき、 どうしていいわね≠ネんて言われたのか、 わたし、これっぽっちもわからなかった。]
(+31) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ ねえ、これは仕方がないことよね? ]
(+32) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ できるだけ大きいのにしましょうと、 ご主人が声量を抑えた低い声で言ったわ。 わたしは段取り通りにひとりで部屋に入り、 休んでいる犬たちの中からその子を探した。]
……クーパー、こっちへおいで。
[ うつ伏せになって目を閉じていたのに、 クーパーは耳をひくりと揺らして、 のそのそと機嫌よさそうにやってきたわ。
ゆさゆさとその立派な尻尾を振って、 真っ黒なきれいな瞳をわたしに向けていた。 わたしはその首筋から背を撫でてやった。
こうなってからはあまり、 ブラッシングもしてやらなかったと、 少し脂っぽく束になった毛並みに思ったの。]
(+33) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ いつもならもう何匹か、 構ってほしそうに寄ってくるんだけれど、
犬たちも消耗しているのか、 今日ばかりは皆関心を示さなかった。
わたしはクーパーの首輪をつかんで、 部屋の外へと誘導したわ。
ここから誰も使っていない、 客間のバスルームに連れていくことになっていた。
クーパーは不思議そうにしていたわ。 客間に入れてやることなんてなかったから。 けれどバスタブの存在にシャンプーだと思ったのね。 バスルームの中に連れて入ろうとすると、 いやいやするように足を踏ん張って抵抗するの。]
(+34) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ できるだけ静かにことを終える必要があった。
お隣のご主人はわたしに、 クーパーと一緒にバスタブに入るよう言ったわ。 指示された通り、クーパーの首輪を引いて、 空のバスタブに一緒に入ったの。
ご主人はクーパーを抱きしめているよう言った。 そして自らもまた、クーパーを抑え込むよう、 片方の手を体に、片方の手を鼻先へと伸ばしたわ。
そして、奥さんが手早くナイフを突き刺した。 クーパーの喉元を狙った手つきに躊躇いはなかった。]
(+35) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ 当然、クーパーはひどく暴れたわ。 大きな声で吠えさせないようにと、 鼻先をつかんでいたご主人は手を噛まれた。
それでもご主人は叫び声もあげず、 クーパーとわたしに覆いかぶさるようにして、 獣の体を抑え込もうと躍起になっていた。
逃げ出そうと藻掻く四肢が、固い爪が、 何度となくわたしの皮膚を破いていった。 それでもわたしは必死にしがみついていたの。
奥さんが片手でクーパーの頭を抑えて、 繰り返しナイフを突き立てるたびに、 生臭い液体がわたしに滴り落ちてくる。]
(+36) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ クーパーは死んだわ。]
(+37) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ 彼が動かなくなったとき、 旦那さんは思い切り蛇口を捻った。
水がわたしたちの上に降り注いで、 バスタブに飛び散った赤を薄めていく。
奥さんの息は上がっていた。 ぜいぜいと肩で息をする彼女に、 ご主人は彼女の弟を呼ぶよう言ったわ。 それから救急箱を取ってくるようにも。
奥さんは何も言わずにナイフを置き、 代わりに外に置いていたバケツや、 鋸やハンマーなんかを中に引き入れた。 そして、弟さんを呼びに行ったわ。]
(+38) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ わたしはもう何も考えられなかった。 クーパーの亡骸を抱えたまま、 呆然と座り込んだままのわたしを、 ご主人は見下ろして静かに言ったわ。
このあとは我々でやりますから、 ケガの手当てをして、着替えて、 少し休んでくださって結構ですよ
その言葉の意味を、 ゆっくりゆっくりと咀嚼しているうちに、 奥さんが弟さんを連れて戻ってきたの。]
(+39) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ 彼女は部屋に戻ってきたあと、 動けないわたしの腕を取り、 バスタブの中から引っ張り出した。
その間も、傷の手当をされるときも、 わたしはされるがままだったわ。
最後の決断をしたのは自分のはずなのに、 心も頭もどこか遠くに置いてけぼりで、 この現状に追いつけていないようだった。
無意識に涙を流していたわたしに、 奥さんは一度だけ固い声で、 ごめんなさいね≠ニつぶやいた。*]
(+40) 2020/10/25(Sun) 14時頃
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[ キッチンに立っていた。]
(+41) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ お隣のご主人と、奥さんの弟さんは、 わたしたちにビニール袋を渡して、 一度車でどこかへ出て行ったわ。
何かを処分するためかもしれないし、 子どもたちへのカモフラージュのためかも。 誰も詳しくは聞こうとしなかったし、 彼らはそう時間を置かず帰ってきたわ。
その一方で、 わたしと奥さんと、お父さんのお嫁さん。 3人で口数少なく作業を進めていた。]
(+42) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ どんな味でどんな食感なのか、 誰も知っているわけがないから、 どちらもわからないように、 ミンチにして濃い味をつけることにした。
例えば独特の風味がして、 何の肉かと話題になるのが怖かったのね。
電気がもう来ていないから、 どうやって火を入れるかという話だけど、 外に窯があるからそれを使うことにした。
やっぱりもう長いこと使ってなかったけど、 おじいさんのいたころは晴れた日に、 そこでピザを焼いて庭で食べたりしたの。]
(+43) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ ああ、懐かしいわ。 つぶやいたわたしの声は平坦で、 一緒にいたふたりは何も言わなかった。]
(+44) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ 冷凍のパイシートが、 電気の来なくなった冷凍庫の中に、 でろっと柔らかくなって残っていたの。
わたしたちはそれを、 ちぎれてしまわないよう慎重に広げて、 ミートパイを作ることにした。
他に入れる野菜も何もなかったし、 仕上がりは不安だったけれど、 生地に包まれて中身が見えないというのも、 わたしたちには都合がよく思えたのね。
生焼けになるのが怖くって、 わたしたちしつこいくらいに火を通した。]
(+45) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ 大した量でもない、うまく膨らまず平たい、 てっぺんのひどく焦げ付いた、 丸い不格好なミートパイがひとつできたわ。]
(+46) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ わたしたちは3人そろって、 疲れ果てたような顔をしていたと思う。
ふと振り返るとカーテンの陰から、 ウィレムがそうっとこちらを見ていた。
咄嗟にわたしは微笑んで、 大窓のほうへと歩いて行って言ったわ。]
今日は、少しだけれど、 ちゃんとごはんがあるからね。 ほら、皆を呼んでらっしゃい。
[ 数秒置いて理解したように、 ウィレムは踵を返して駆けてった。]
(+47) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ その背中を見送って、 わたしたちは食卓の準備をしたわ。
9人で食べると、 ほんの一口、二口ね≠ニ、 奥さんが疲れた声でつぶやいたの。 だからわたし、何気なく言ったわ。]
……わたしの分はいいから、 子どもたちに多めに切ってくださる?
[ ええ、深い理由なんてなかったわ。
そして、言い切ってから顔を上げたの。 すると、奥さんはじっとわたしを見ていた。 感情の読めない、深く暗い目をしていたわ。]
(+48) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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だめよ、あなたも食べなきゃ
(+49) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ ……こうするしかなかったのよね?*]
(+50) 2020/10/25(Sun) 17時頃
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[ 集まってきた子どもたちは、 皆驚いて目を丸くしていた。]
(+61) 2020/10/25(Sun) 20時頃
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