21 潮騒人狼伝説
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―自室―
…………っ。
[夢を、見た。 酷く鮮明な、夢――
視界一面が赤く染まる世界]
…………く、ぅ
[鈍痛に痺れる頭を押さえる。 薄く赤みがかった茶毛が揺れて、 汗ばむ肌に張り付くのが、酷く心地悪い]
(2) 2010/07/19(Mon) 03時頃
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[ふるりと、厭な記憶を振り切る様に頭を振って。 じんじんと痛むこめかみを、指でとんとんと叩いた。
だけど、悪寒は無くなるどころか、増して――――]
……昨日と言い、なんだってんだ。 この胸糞悪い夢は。
[男の唇が、悪態を一つ漏らす]
(3) 2010/07/19(Mon) 03時頃
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[瞳を閉じると、瞼の裏に真っ赤な世界が浮かび上がる]
……夢だ。
[暗闇に沈む白く柔らかな、身体――]
あんなのは唯の夢、だ。
[それを見詰める赤く光る、瞳]
(4) 2010/07/19(Mon) 03時半頃
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胸糞悪い与太話なんか聞いたから、
[その口端からは腐臭のする様な吐息と唾液が漏れ出て]
こんな夢……っ。
(5) 2010/07/19(Mon) 03時半頃
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[鋭く尖る牙がつぷりと柔らかな肉に食い込み、 世界はその様を変える。
飛び散るアカ、あか、赤、赫――――!
血肉を喰らう化け物たちの世界へ]
(6) 2010/07/19(Mon) 03時半頃
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………ぐ、ぅ。
[早鐘を打ちつける胸を手で押さえ、 戻してしまいそうになる口元を手で覆う。
眦には薄く涙が滲み、浮き出る汗と混じり合う]
……は、ぁ。 はあ、は……ぁ……。
[その苦しさに、顔を上げる事も出来ずにいて。 瞼の裏に浮かぶ情景に瞳を閉じる事も出来ずに、 ただシーツの皺だけを目で追った]
(7) 2010/07/19(Mon) 03時半頃
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[窓の外が薄らと陽光―ひかりを取り戻し始めた頃、 虚ろな瞳を、男は窓の方へと向ける]
…………朝、か?
[乾いた唇が、掠れた声を紡いで。 よろりと男は立ち上がり、カーテンを引く]
(8) 2010/07/19(Mon) 03時半頃
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[外は未だ灰色の雨に包まれていたけれど、 それでも夜の闇よりは幾分優しくて。
じっとりと汗ばむ額を手で拭い、 漸くほっとしたように、
長く長く、息を一つ、吐いて]
(9) 2010/07/19(Mon) 03時半頃
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[そして、気づく。
タバサが、昨夜部屋に訪れなかった事に]
(10) 2010/07/19(Mon) 03時半頃
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[まだ痺れる様に痛む頭で、昨日の記憶を手繰り寄せる]
昨日は確か、風呂の後に……。
[そう、風呂の後にタバサに逢って。
赤い髪を揺らしながら、 部屋に行くからと微笑む少し厚めの唇を掠め取って]
それから―――……
[それきりだ、と。記憶が告げる]
(11) 2010/07/19(Mon) 04時頃
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[ふらつく身体でよろめきながら、部屋を出て階段を下りる]
あいつの部屋は201だった、はず……。
[呟きながら歩みを進めるも、 膨れ上がっていく厭な予感に、夏だというのに身体は冷えて]
……開けるぞ。
[だから、声が。 震えているのはそのせいなんだと、自分に言い訳する]
(12) 2010/07/19(Mon) 04時頃
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[扉を開ければ、むっと。 咽返る様な、濃厚な血の香りが廊下へと広がるだろうか。
口元を押さえ、中を覗き見て]
―――……ッ!
[声にならない悲鳴を上げた]
(13) 2010/07/19(Mon) 04時頃
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[血の匂いに溢れた部屋の中で、 タバサは一人”眠って”いた。
彼女の自慢の髪よりも赤い、紅色の中で。
もう二度と目覚める事のない眠りに]
(14) 2010/07/19(Mon) 04時頃
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――――――……♪
(15) 2010/07/19(Mon) 04時頃
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[そのころ。 無人となった301号室で、携帯がメロディを調べていた。
届くはずのない、 死者からのメッセージを伝えるために]
(16) 2010/07/19(Mon) 04時頃
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『件名:パパ……。
本文:だから逃げてって、言ったのに……。』
(17) 2010/07/19(Mon) 04時頃
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御者 バーナバスは、タバサの名前を叫ぶと、その亡骸を抱きしめた。誰かがその声を聞きつけてくるまで、ずっと、ずっと――**
2010/07/19(Mon) 04時頃
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[町の男たちがタバサの遺体を検分する間も、 確りとその冷たい身体を抱きしめ続けていた。
シャツを濡らす赤も気にならないほど、強く]
…………すまん。 俺が昨日、迎えに行ってればこんなことには……。
[赤に染まった、物言わぬ蒼白な頬を撫でながら呟く声は、 誰かに届いただろうか。
何度も何度も優しく撫ぜて。 自警団の面々が彼女の遺体を運び出すその時まで、 男は女の傍に在り続けた]
(49) 2010/07/19(Mon) 13時頃
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[町長だと名乗る男が現れれば、 暗く沈んだ瞳を其方へと向ける。
酷く一方的な物言いをする男に、ぎりっと奥歯を嚙みしめ、 手のひらが傷付くほど、強く握りしめる。
ベネットやイアンが男に喰ってかかるのを見れば>>24>>38 よせ…と二人を制し]
――……今は。 今は仲間の死を悼ませてくれないだろうか。
犯人探しにやっきになるあんたがたの言う事も判る。 だが……それをこいつらに、今言うのはあまりにも酷だ。
[シャツにべっとりと赤を纏わせたまま、 男は疲れたように。 手で顔を覆い、長い長い溜息を一つ吐いた]
(50) 2010/07/19(Mon) 13時頃
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[町の男たちが帰れば、 ぐるりと生徒たちを振り返った。
怯える者、不安を浮かべる者、混乱しているもの。
それぞれの反応を確かめた後、玄関を捉える瞳]
…………くそったれが。
[呟いた悪態は誰に向けてのものだったのか。 男はがりっと。頭を一つ、掻いた]
(52) 2010/07/19(Mon) 13時頃
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[暫し、そのまま時を過ごした後。 まだ残っている生徒たちへと、男は口を開く]
人狼だとか、そんな与太話は良い。 人狼がいようがいまいが、”タバサが殺された”……。 それは変わりようのない事実だ。
[一人一人をじっと見詰めながら]
この旅館に泊まっていたのは、俺たちだけだ。 ならば……タバサを殺った犯人も、俺たちの中にいるって話になる。
[握りこむ拳は、微かに震える。 それは怒りか、それとも怯えにだろうか]
(53) 2010/07/19(Mon) 13時半頃
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あいつはさ……。
[死んでしまえば、美しい記憶だけが残る]
決して良い女ではなかったさ。 むしろお前らから見れば、嫌な女だったかもしれない。
[彼女と過ごした時間が、瞼の裏に過ぎり、 そして去っていく]
だけど。 こんな惨い死に方をせにゃいかん奴じゃ、なかっただろう?
[シャツに遺る赤を撫ぜて、力なく呟き]
(54) 2010/07/19(Mon) 13時半頃
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さっきの町長じゃないが、俺は犯人を探そうと思う。 タバサのために。 そして俺自身の……このやり場のない怒りをぶつけるためにっ!
[握りこんだ拳が、壁を殴る。 手の甲が僅かに避け、赤が滲んだ]
お前たちがどう思おうが構わない。 俺が謂いたい事は、これだけだ――――…。
(55) 2010/07/19(Mon) 13時半頃
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[燃え滾る炎が瞳に宿る。 復讐と言う名の、炎が――――…]
……… ………
[男は瞑目すると、暫し沈黙の時へ*]
(56) 2010/07/19(Mon) 13時半頃
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演技……?
[リンダの言葉>>64に瞑目していた瞳を開ける]
そう思うなら、思えば良いさ。
[殺すかどうかの問いには、緩く首を振り]
……殺して、どうする。 殺すよりも、警察に突き出す方が先だろう。
帰りたいのなら、帰ればいい。 俺は止めん。
[親指が玄関の扉を指し示す]
(69) 2010/07/19(Mon) 15時半頃
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[サイモンの方へもちらりと視線を移し]
なら言う。 お前は”次”がないと、言い切れるのか?
[滾る瞳がすいっと細められ]
俺は殺し合いをしろとは謂わん。また誰かを殺すつもりもない。 表にいる連中に、怪しいと思う奴を突き出せば済むだけの話だ。 連中だってああ謂いはしても、実際に殺すはずがないだろう。
(70) 2010/07/19(Mon) 16時頃
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牧野が謂う様に疑うのが嫌なら、それでもいい。 それでも……俺は犯人を探すのをやめんよ。
[シャツに遺る赤をそっと撫ぜて]
それが手前の女にしてやれる、最期の手向けだからだ。
(71) 2010/07/19(Mon) 16時頃
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下らん感傷だと思うかも知れんが……。
[先程演技だと謂ってのけた小娘をじっと見詰めて]
俺は許さねえよ。 俺の女を――タバサを。 あんな無残な姿にしてくれたやつを。
それを邪魔する奴は、女子供だろうと容赦はせん。
[ぎりっと奥歯を噛むと、もう一度にぎりしめた拳を壁へと打ちつける。
血がにじむ拳は更に深く裂けて。
ぽたぽたと、零れる赤い血が、 ロビーを出て行く男の後を*追っていった*]
(72) 2010/07/19(Mon) 16時頃
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御者 バーナバスは、厭世家 サイモンへ振り返り、殺してなんかやらねえよ、と。蒼く凍った表情で答えた*
2010/07/19(Mon) 16時頃
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―301号室―
[ばたんっと、乱暴に扉を閉める。 部屋の中へ入り、敷いたままの布団の横へ腰をおろせば、 思い出すのはタバサと二人で過ごした時間]
……絶対。 お前を殺した奴を見つけてやるから……。
[掠れた声で呟き、涙の代わりに。 握りしめた拳から、ぽたりと血が落ち、畳に滲んだ]
(107) 2010/07/19(Mon) 22時半頃
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[暫くそうしていると、 目の端にチカチカと、何かが光るのが見えて]
携帯……? そう謂えば昨日も。
[其方へと指を伸ばし、片手で器用に開く。 死んだ娘の最期の写真の上に表示されている 『新着メール:1件』の文字に眉根を寄せて]
……ゾーイ、お前なのか? お前は、この事を……俺に伝えようとしていたのか……?
[苦い声で呟き、ぱたんと。携帯を閉じた。
丁度その時、サイモンの来訪があれば。 携帯をズボンのポケットに仕舞い、立ち上がる]
(109) 2010/07/19(Mon) 22時半頃
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御者 バーナバスは、扉を開け、サイモンを迎え入れるだろう。
2010/07/19(Mon) 22時半頃
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[サイモンが口を開けば、首を緩く振り]
……別に良いさ。 この怒りと悲しみを俺が忘れなければ良い事だから。
[シャツに遺る赤い染みをそっと撫ぜて]
それより話ってなんだ? 俺だけが信じられるって、どういうことだ?
(118) 2010/07/19(Mon) 23時頃
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