204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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―前日― [頑是ない養い子の我儘とも呼べぬ我儘に>>2:515、笑みを浮かべて頷いた。]
暖かい抱き枕があるんなら大歓迎だ。
[そう言って抱きかかえた体は男よりも随分細い。
思えば男が恋をして駆け落ち同然に最初の旅の同族達から離れたのは、プリシラよりもまだ幼い歳だ。 その時の男と比べても細っこくて少年の名残が色濃いプリシラへ、牙を突き立てたい欲求はあれど、むやみに泣かせたいわけではない。]
(140) 2014/11/19(Wed) 21時半頃
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[内側で爪を研ぐ獣の衝動は、大小の波となり男を襲うけれど。 それを飼い馴らすことに、とうに身は馴染んでいた。
否、あるいは既に一つのものとなっていたのか。
牙に、爪に、悩みながらそれを在る物として受け入れて。 人の心と獣の心を併せて、生きる術へと変えていく。
疲れないわけではない。 けれど、抱きしめた養い子の命を、存在を、尊いと思うのは人の心で、守る存在だと決めたのは獣の心で。
人と獣の両方で愛していた。*]
(142) 2014/11/19(Wed) 21時半頃
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―夜明け前― [ぎし、と雪の重みでどこかが軋む。 小さな音に意識が起き上がるのは昔の名残。
まだ腕の中のプリシラが眠っていることに安堵して、ゆっくりと獣は瞳を見開く。
薄く立ち昇る血の匂いにどこかのバカが何をしでかした、と眉を顰めるも、まさか臓腑を食い荒らされて息絶えたとまでは思わない。 意識はまだ、眠りの淵に捕らわれかけている。
血の匂いに穏やかならざる胸騒ぎを覚えることが不愉快で、傍で眠る仔狼の唇を食むようにして触れた。
吐息の零れる唇へと触れて、噛みつく以上に穏やかな気持ちになることに安らぐ。
抱きしめなおした温もりと眠りを妨げる声が>>86、次の目覚めの合図だった。]
(165) 2014/11/19(Wed) 22時頃
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―3F・個室― [扉を叩く音と、昔馴染みの声に目を覚ます。>>86 既に起きていたプリシラが、表現し難い表情で声のする方を見つめていた。>>117 今起きたと告げれば、出直すと言われ>>87声は遠ざかる。]
分かった。後でな。
[眠気混じりに扉の向こうへと答えた。]
(180) 2014/11/19(Wed) 22時半頃
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[プリシラの内心には気がつかないまま、彼が風呂へ行くと言えば>>117少し表情を歪める。]
あんまり長居はすんなよ。
[昨日だって、ほんの少しの間だから、と。そう思って離れたのがそもそもの間違いだった。 二度目はごめんだ。]
(182) 2014/11/19(Wed) 22時半頃
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―→2F居間― [扉を開けて階段を下りる。 小さく、鼻を聞かせて。昨日にはなかった匂いを嗅ぐ。 昔よく嗅いだ血の匂い。
目を凝らせば、木目とは異なる赤茶けた染みが薄く残っていた。>>87
隠蔽のお粗末さは明らかに手慣れていない。 要するに、大多数には予想外の何かが起こっている。
そんなことを考えているうちに、階下から賑やかどころではない声と音とが聞こえて、思わず顔をしかめた。]
(189) 2014/11/19(Wed) 22時半頃
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[階下の騒ぎの中、さっと視線を走らせて男は連れの姿のないことを確かめる。
いったい何の騒ぎだ、と。 騒ぎばかりがおきすぎる、とため息を吐き出しながら**]
(286) 2014/11/20(Thu) 01時半頃
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[階段の壁に背を持たせ掛け、今をじっと眺めている。
幼馴染とその一行が賑やかなのが、こんな時でなければ微笑ましく映るだろうに。 昨夜の一件以来、ノックスの連れが不気味な物体にしか見えない。
人の心と獣の性質。 その二つを持ち合わせているが故の後悔も、苦しみも、幼い笑顔には見られない。 少なくとも、忘れるには短すぎる時間であるはずだ。]
(403) 2014/11/20(Thu) 18時頃
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[だから続いたラルフの悲鳴と、それをもたらしたノックスの連れの行動に、驚くよりも先に納得してしまった。]
どういう躾してんだ、あの馬鹿…っ。
[舌打ちするも、己が駆け寄るよりも先に悲鳴を聞きつけた保護者が駆け寄ってくる。 犬がまろうぶような勢いで走って、周囲など見えていない。>>289]
(404) 2014/11/20(Thu) 18時頃
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バーナバスは、ベネットの謝る声に肩を竦めた。
2014/11/20(Thu) 18時頃
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[ラルフを連れて慌ただしく三階へと駆け昇っていくフランシスたち。 階下へと姿を消す幼馴染たち。 その中にいない人間を見咎めて、今降りたばかりの階段を上る。
声が聞こえる部屋はフランシスたちの使う部屋。 招き入れられたノックスたちの部屋。 自分たちの部屋。
残る一つに手を伸ばす。
がらんとした部屋に落ちる静寂と素っ気なさに、この部屋を使う人間のないことを知る。 姿が見えないのは――。*]
(410) 2014/11/20(Thu) 20時頃
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[獣であることを嘆くうちはまだいい。 人であることに息苦しさを思えているうちはまだいい。
そのどちらでもなくなった時には。
それは人なのか、獣なのか。]
(412) 2014/11/20(Thu) 20時頃
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[姿の見えない二人分。 消したのは誰だ。
少なくとも一つは確信に近い答えを持っている。]
ノックスに会わなきゃな。
[答えに一番近しい場所にいる幼馴染のいるはずの一階へ足を向ける。 今は無人の部屋に寄ったおかげでプリシラとすれ違ったとは知らない。]
(413) 2014/11/20(Thu) 20時頃
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[本能に任せて愛しい相手を喰らったところで、結局何も手に入らない。 何も残らない。
繰り返し伝える悲劇と禁忌は、裏を返せば何かのきっかけで容易くそれが起こり得るということ。
表だって問題にならないのは、罪を恥じ入り隠そうとする人の心ゆえ。 暴かれるよりも先に、己の罪業に自らの手で幕引きを迎える者が多いため。
そうでない者は、同族が手を下すしかないのだ。 人に見つかる前に。]
(415) 2014/11/20(Thu) 20時半頃
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[愛しさゆえに人を喰らった狼が、住まう里の同族ごと焼かれ死ぬ。 善悪の分からない仔狼が無邪気に裂いた友人の腸と同じく、自らも臓物をぶちまけて木に吊るされて見せしめとされる。
おとぎ話になぞらえた戒めは、けれど決して遠い現実のものではない。]
(417) 2014/11/20(Thu) 20時半頃
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[狼の本能に怯える人の心根があるうちはまだいい。 傷つける恐怖と、傷つけたとしてもその後悔が、それ以上の災禍を招くことを押さえてくれる。
人としての息苦しさを覚えているうちはいい。 己が獣だと自覚すれば、人と交わろうという気は薄く、互いに害の少ない生き場所を求める。
どちらも持ち合わせないものは――悲劇だ。
人の世にあっては人に害を為し、同族の群れに危険を呼び込む。 罪過に気がつかぬは、己ひとつで。]
(423) 2014/11/20(Thu) 20時半頃
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[踏みにじってはいけないものを容易く踏みにじり。 手折ってはいけないものを無邪気に手折る。
そんな生き物を、獣とはもう呼べない。 獣とは、もう呼ばない。
それはただの――]
(425) 2014/11/20(Thu) 20時半頃
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―→1F―
ノックス、いるのか?
[一階へと足を向けたその先。 幼馴染が彼の同行者とともにいるのを見かけたか。]
手当てしてんなら構わねえよ。 先に湯でも浴びてくる。
[二人に纏わりつかれるようにしている幼馴染の表情に苦しいものはなかっただろうか? 数秒、その表情を見て、何も言わず温泉の方へと。
小さく、口が形づくった音をノックス以外が読み取れはしなかったろう。]
(430) 2014/11/20(Thu) 20時半頃
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[ノックスの表情が変わるのをじっと見て。 それになんでもないことのように背を向ける。
大事な幼馴染。 ただ、互いの経た時の隔たりと、体験の積もったものはその価値観を容易く変える。
大事なものも、愛する者も。]
(435) 2014/11/20(Thu) 21時頃
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[待って、と引き留める声に振り返る。]
んな長風呂しねえよ。 すぐに上がるから…お前はお前で考えまとめとけ、っつーこった。 [ひら、と後ろ手に手を振って。 何よりも男自身の蟠りを今は何かで紛らわせたかった。]
(449) 2014/11/20(Thu) 21時頃
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[傷だらけの体を湯に沈める。
体温が上がれば普段なら目立たない傷痕まで浮き上がってくるので、あまり誰かと湯に浸かるような習慣はない。
プリシラと最初に温泉地へ宿泊して、傷痕に驚かれたことも、浮き上がった傷痕に「痛そう」と泣きそうな顔をされたことを思い出す。
泣きそうな顔の方が痛々しくて、男は自分の古傷どころではなかったのだが。]
(450) 2014/11/20(Thu) 21時頃
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ちょっと思い出があるかと思えば…ったく。
[いつの間にか、何かあれば真っ先に思い出すのは決まってしまっている。 好みの酌婦でも思い出せばいいものを、と思いながら。それが本音でないことも分かっていた。
温かな湯のおかげで少し余裕が出たのか。
適当に温まった体に衣服を着こみ、まだいるであろうノックスたちの方へと顔を出す。]
(453) 2014/11/20(Thu) 21時頃
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[力なく笑う顔は>>469、どうしようと小首を傾げた昔のまま。 ]
んだよ。 なんかあったのか。
[何か、はあっただろう。 もうとうに取り返しのつかないこと。
けれど、男は幼馴染のためではなく、男本人のために尋ねるのだ。]
(476) 2014/11/20(Thu) 22時頃
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[平等は残酷>>483、その言葉に何でもないように笑う。]
ふうん…、平等に見えてるだけ、かもしれねえけどな。
[良くある子供の我儘だと肩を竦めて。
ノックスの要求に合わせて、そっと仔狼たちから距離をとった。>>488]
(499) 2014/11/20(Thu) 22時半頃
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[ノックスの言葉に、頷いた。>>556]
そうだな、あちらも俺たちの知らないことを知っているかもしれん。
[また後で、と手を振る幼馴染に手を振りかえし、はた、と足を止める。]
ノックス、
[小さく、彼にだけ囁く。]
(562) 2014/11/21(Fri) 01時頃
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―3F個室― [湯浴みついでに食料貯蔵庫から酒瓶を見つけだし、遠慮なく部屋へと持ち帰る。]
どうした?
[落ち着かない様子のプリシラに衝動の兆しが見え始めていることも知らず>>554、風邪でもひいたかと額に手を当てる。
体温が高いのは湯上りのせいか、あるいは欲望を吐き出したせいかもしれないが。]
少し熱いか。
[するり、と手は額から首へ。 やはり常よりも熱い気がして、プリシラの顔を覗き込んだ。]
(566) 2014/11/21(Fri) 01時頃
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[目線は上手く合わせられたのか。
夜明け前に口づけたことさえ悟らせないほど、表向きは平静なまま。 ゆっくりと何かを踏み越えようとしていた。**]
(568) 2014/11/21(Fri) 01時頃
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