184 【肩書遵守】Lunatic Nights in Heathling
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─ 昨日 : ソル・デ・メディアノチェ テント周辺 ─
[流れるような黒髪を揺らし、踊り手が現れれば 先ずは簡単に自己紹介をしただろう。 そして少しの沈黙の後、唯一聞きたかった言葉を放つ。]
フランシスカ、さん。 この街は。あなたにとって。正しく見えますか。
[この騒ぎが仮に猟奇殺人だったとして。 犯人が見つかればそれで良い。 しかし、見つからなければどうなるだろう。
「それ」は、また押し付けられるのではないか。 「こちら側」の秩序を守る為に。 全ては「あちら側」に。若しくは「流れ者」に。
物心ついた頃からこの街しか知らず 当たり前のように隔離されてゆく世界の中で メアリーは、何が正しいのか分からないでいる。**]
(0) 2014/07/11(Fri) 02時半頃
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「この街はある種異様ね。」
[踊り手の形良い唇からこぼれる言葉>>5は 鋭い響きを持ってメアリーの心に刺さる。
それは、欲しかった言葉だけれど。 外の人から、聞きたかった言葉だけれど。 改めて言葉にされると、やはり動揺が先に立つ。]
「果たして“向こうの人”に出来るかしら?」
[続くその言葉>>6に、どくりと大きく心臓が跳ねた。 そう。あちら側は隔離されている。 大きなフェンスと、自警団の手によって。 普通に考えるならば、当然こちら側が怪しい。
コクリと小さく喉を鳴らし、踊り手の瞳を見つめ返す。 戸惑い不安に彩られたその奥で、必死に何かを掴もうと。]
(14) 2014/07/11(Fri) 13時半頃
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[送っていくわと促されれば 素直に頷き、半歩下がって隣を歩く。 なるべく大通りを通ってくれるのは、心遣いか警戒か。
聞きたい事は他にもあった。 けれど、それはまだ彼女の中で消化されていない。 代わりに公演の事を口にする。 意識して、なるべく楽しそうな声音を作り 早い時間に行われるのなら、一度ゆっくり観に行きたいと。
そうして自宅が見えてくれば 足を止め、踊り手に丁寧なお辞儀をして。]
送ってくださって、ありがとうございました。 あの。どうか、どうかお気をつけて。
[「何に」気をつけるのかは言えなかった。 ただ無事を祈ることしか出来なくて。 藍混じる空の下、遠くなる後姿をそっと見送った。**]
(15) 2014/07/11(Fri) 13時半頃
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[ベンチに座り、噴水を見ていた。 小さな手の中には桃色のボール。 母がくれたそれを、無意識に弄ぶ。]
『メアリー。』
[名を呼ばれて振り向けば、佇む祖母の姿。 少女は立ち上がり、祖母に向かって駆ける。]
おばあさま、おかえりなさい。
[抱きついた拍子に、こぼれ落ちるボール。 それはフェンスの方へと転がってゆき。]
かあ、さま。
[追いかけて、手を伸ばす。 高くそびえる、フェンスの向こう側へ。
その指先に触れたのは、あたたかな体温だった。*]
(24) 2014/07/11(Fri) 21時頃
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─ 翌朝 : 自宅 ─
[子供の頃の夢を見た。 あれはまだ、ヒースリングに来た頃のこと。
ボールは戻って来なかった。 それがひどく悲しかった。 新しい物を買ってあげてくださいと言う 自警団の言葉が冷たく響いた。
代わりのものなんて要らないと 泣いて祖母を困らせた事だけは 今でもはっきりと思い出せる。*]
(25) 2014/07/11(Fri) 21時頃
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─ 広場 ─
[今日の広場も空気が重い。 空は晴れ渡り、緑は時折風に揺れ 噴水は綺麗な放物線を描いているのだが。]
お。おはよう、ございます。
[掃除夫に声をかけられれば、挨拶をし いくつかの白い花を指定されれば>>17 慣れた手付きで花束を拵えた。
見知った顔と話せて、少し気が緩んだらしい。 少し泣きそうになりながら、お礼を言って頭を下げた。*]
(27) 2014/07/11(Fri) 22時頃
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「………お花、を…」
[どうやら考え込んでいたらしい。 かけられた声>>26に意識を引き戻すと 目の前には、憔悴しきった表情の墓守が居た。]
いつもありがとうございます。 お花のご希望など、ありますか?
[なるべく明るくそう言って、花籠を抱えて見せる。 特に指定が無いのであればこちらで選ぶ予定だが。]
あの…表情が優れませんけど 大丈夫、ですか?
[そっとしておくべきだろうか。 そう思いつつも、気になって。 抱えた花籠を少し下げ、墓守の目を覗き込む。]
(28) 2014/07/11(Fri) 22時半頃
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[白い百合を多めにと言われ、少し背筋が伸びる。 これまでも、求められる事は何度もあった。 けれど。多めになんて、言われた事はあっただろうか。
祖母への挨拶を兼ねて、時折墓地を訪れる。
確か。確か。 新しく増えたであろう墓に、飾られていたのは。]
あ、いえ。あの。
[不意に顔を上げた墓守と視線が絡む。 そこに浮かぶのは、明らかな怯え。
墓守は何かを知っているのだろうか。 少なくとも、メアリーよりは知っている、はずだ。 こちら側の遺体は全て、墓地に葬られるのだから。]
(30) 2014/07/11(Fri) 23時頃
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[視線を外したのは、どちらが先だったか。 聞きたいと思った。 でも、触れてはいけない気もしていた。
花籠を降ろし、白い百合を多めに手に取ると オレンジと、青と、緑を添えて包装紙で丁寧に包む。]
…理由って、必要なんでしょうか。
[白いリボンを結びながら ポツリと落とした声は、墓守の耳に届いただろうか。 メアリーは、泣き出しそうな顔で笑うと 出来上がった花束を、墓守に差し出した。]
(31) 2014/07/11(Fri) 23時頃
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[生きることに、死ぬことに 殺すことに、殺されることに 理由は必要なのだろうか。
理由があれば赦されるのだろうか。 篩い分ける行為も、見ない振りをすることも。 人を殺す事も、何もかも、何もかも全て。
そんな事ばかり考えていたせいか つい口をついてこぼれてしまったらしい。 怯えていた墓守は、今は困ったような顔をして。]
すみません。何でも。 ないん…です…。
[最後は消え入りそうな声でそう告げる。
墓守の纏う透明な空気に 縋り付きたくなる衝動を必死で抑えた。]
(36) 2014/07/11(Fri) 23時半頃
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[短い呼びかけと共にレースのハンカチを差し出され メアリーはくしゃりと顔を歪める。
聞きたい。知りたい。教えて欲しい。 理由があれば、赦されるのか。 理由があれば、憎んではいけないのか。
負の連鎖を、どうして自分が止めなくてはいけないのか。]
すみま…せん。 こんな、つもりじゃ。
[差し出されたハンカチを、有難く受け取る。 涙をぬぐい、笑おうとした瞬間 聞こえた声>>48に、つい視線が動く。
赤い髪、左目の眼帯。 確か、カジノの…。
メアリーの心臓が、どくりと跳ねた。]
(51) 2014/07/12(Sat) 00時半頃
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[突然取り乱した墓守と、墓守を心配する眼帯の男。 その関係性に戸惑って、メアリーの感情の波は止まる。 冗談でも何でもなく、本当に彼女を心配しているようだ。
俺が出すよ>>55と言われれば、墓守の様子を伺って。 墓守から詫びられれば>>59、こちらこそと頭を下げ。 必要な硬貨を受け取れば、一礼して見送っただろう。
見たくなかった、と言えば、嘘になる。 誰にだって、大切な人が居る。 そんなこと、痛いくらいに知っていた。*]
(64) 2014/07/12(Sat) 01時頃
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「……どうも。邪魔して悪かったな。」
[そう言い残して>>65、男と墓守は去っていく。 その丁寧な物腰に、不躾な視線を向けた事が悔やまれた。]
ごめん…な、さい…。
[それは、何に対する謝罪の言葉だったのか。 つぶやく声は、掠れて消える。
洗って返そうと、ハンカチを胸ポケットにしまう時 挟まれたままのトランプが、カサリと音を立てた。**]
(72) 2014/07/12(Sat) 02時半頃
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[また人狼が出た。今度は旅の娘が喰われて死んだ。 機械的な所作で花を売っていたメアリーは そんな噂話を耳にする。
旅の、娘?
テントの方向を振り返ったのは無意識だった。 少し遅れて思考が追いつく。 ヒースリングには沢山の旅人が訪れる。 それに、あの女性ならば踊り手と表現されるのではないか。
ざわつく胸中を微かに残る理性で押し留めながら 彼女は人狼と呼ばれる現象について考える。]
(123) 2014/07/12(Sat) 21時頃
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[一昨日、1人の男が誰かに殺された。 その遺体は獣に喰い荒らされたようだった。 昨日、旅の娘が誰かに殺された。 また人狼が…そう言われる以上、似た状況なのだろう。
誰が、何の為に?
詳しい状況が分からない以上、思考が進む筈もなく。 連続殺人というフレーズが瞬いて消える。 人狼という存在が、本当に居るとは思えなかった。
この街の清掃を担当している掃除夫からならば もう少し詳しい話が聞けるかもしれないと思ったが 興味本位で首を突っ込んではいけない気がした。
理由なんて、あってもなくても良いのではないか。 悲しませたくないと思ってしまえば、それが全てで それでも、を望むほど、狂うには遅すぎた。 メアリーは、胸ポケットを抑え、諦めたように笑む。*]
(124) 2014/07/12(Sat) 21時頃
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