238 聖痕の空〜Knockin' on heaven's door〜
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…だ、そうだ。
難しい処理は俺ァ興味ないがな、 お前が何と言おうと、三黒は百洲の肩を持たせて貰う。
[百洲と仰代の血の繋がりの深さや権限に関しては三黒の知らぬ所であるし、手の届かぬ場所ではある。 だが没落しかけの家といえど12の内の1柱に代わりは無く、その権限もやはり強い物。 それに、すっかり当主の数が減った今、これ以上家を減らしてしまう訳にも行かず。 そんな理由で幾らでも日向の言葉は強引に進行できるだろう。恐らく、は。
よく口の回る少女に大人が口を出す暇は殆ど無く、黒い男は黙ったまま。子供らしくない言葉の数々に目をいくつか瞬かせても、そう言えばこの子も立派な当主だったと、今更ながらに思い出して。
まあ家がつぶれようとつぶれまいと今更痛くもかゆくもなし。>>139 一ノ白の聖痕が消えた今、数が欠けちゃもう二度と門が開く事もなし。 聖痕の守護に力を注ぐ必要も無く、12の家は唯の家、だ。]
(141) mzsn 2015/09/24(Thu) 04時頃
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さあな、 そう言う奴も居るかもしれんが――、
ふざけた事抜かす奴は三黒当主が直々に潰す。 そう言うアホは、12の守りの中には要らん。 血が濁る。 当主であっても、当主で無くとも、性根の腐った奴は不要だろう。
[気に食わんやつは全員殺すと言わんばかりに。 というか実際そのつもりで、主に目障りな各家の長老共を始末するいい口実だとホルスターの中の黒銃を撫でていたか。
確かに、彼女の言う事>>142も一理ある。 だが生憎、子供のわがままに付き合ってやる気は更々ない。]
(148) mzsn 2015/09/24(Thu) 04時半頃
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――あーあ、 お前、強引だな。
[まあ彼女がして居なくても、自分もきっと同じ手段を取って居た。 命じられれば、そのままに。 気を失った仰代をどっこいしょとデリカシーなく小脇に抱えて、随分軽いなと要らぬ心配をしていただろう。
見下ろす視線の先、幼くも懐かしい人の面影に、微か目を細めながら。]
(149) mzsn 2015/09/24(Thu) 04時半頃
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…仰代麗亞の中身が何時から璃紗だったかは、 俺は知らん。
だが、お前が生まれた時から俺はお前を見ていたし、 仰代の新当主の誕生を、喜びもした。
俺はお前が誰であれ、 何時からお前で無くなったとはいえ、 その存在を大切で好ましいと、そう思ってるよ。 麗亞。
[だから生きていて欲しいし大切にしたくもあるのだと、気を失った麗亞に静かに語りかけて。 そかしそれは、死んでしまった若き当主皆に言える事でもある。 既に力を失った12の家の中、もう血や責務や聖痕に縛られる事は無いのだと。責任なんて取る必要も、取らせる理由もない。
転がる幸々戸の身体を拾い上げ抱え直す男は、恐らく父親の顔をしていた。]
(151) mzsn 2015/09/24(Thu) 04時半頃
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…要らん事に気を回さなくてもいい。
[内緒話>>150にたっぷりと深い深いため息をついて、行先>>152についてはきっと全て彼女に任せてしまう。 温かいままの少女と徐々に冷えて行く青年を両脇に抱えて、時折瓦礫の道に躓きながらも、二人を落とす事は決して無かった。]
別に、いい。 今更だろう。
俺は何でも手伝ってやるし、 キャラメルタルトも、奢ってやる。
[彼女の頼みを断る理由など、生憎自分には一つもない。 その理由は彼女には話さぬまま、それでも気付いてしまった真実に、対する態度がブレる訳でも無し。この子の父親が誰であれアレの忘れ形見には変わりなく、愛しく大切な存在であるのだと、 なにせとうの昔から、自分はこの子を父親の目で見ていたのだから。
そして、それは其々の若い当主達に対しても同じ事。 日向を守りたいとそう言った。しかしそれ以外を取りこぼして、何が嬉しいと言うのだろう。
これ以上失いたくは無いと、温もりを伝える少女を抱え直して。 これっきりにして欲しいと、冷えた青年を抱く腕に力を込めた。**]
(154) mzsn 2015/09/24(Thu) 05時頃
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― 後日:移動クレープ屋 【ねこのくしゃみ】 ―
[一体何処からどうやって現れたのか。 ぼんやりと街中で紫煙を揺らす男の前に、現れたのは何時ぞやのクレープ屋。>>@4 それは最初から其処に止まっていたかのようにそこにあり、しかし先ほどまで無かった事を、黒い男はよく知っている。]
別に、それなりに普通で、 …それなりに何時も通り忙しい。
[仰代と百洲の件や、幸々戸の長男、その他の家の事や、開かぬ門。無用の聖痕。降り落ちる奇跡のバーゲンセール等々エトセトラ。 その全てに頭を痛めて吐いた物のそれを部外者に漏らす理由も無く。 結果答えはぼちぼちと、肺に吸い込んだ煙を甘さ漂う空気に混ぜ込んだ。 勿論この路上は、喫煙禁止。]
代金って、 …あー、そんな事も言ったっけか。
[あれはたしか、幸々戸の長男の長男に言った奴、か。 目覚めぬ痣無しを思い出し僅か眉間に皺を寄せるも、まあ、彼との戯れなら叶えてやらん事もない。 懐の財布からヨレた千円札を取り出して、これで足りるかと問うより先、]
(162) mzsn 2015/09/24(Thu) 06時半頃
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いちま…っ?!!
[いちまん、はっせん?そもそも、12柱全員と、は?! クレープってそんな高い…っけ? 一つ一つがオプション乗せまくりの値段に、思わず咥えた煙草をポロリと落として。何の冗談かと店主の顔を見つめても、カウンターの向こうには邪悪な笑みしか浮かんで居ない。
キャンセルなんて言ったら、どうなるか。 この店主は戦って勝てる相手ではあるだろう。が、そもそも戦う気が一切起きない。 こんな事もあるのかと冷や汗を垂らしてみても三日月の様な笑みは消えぬまま。
結局言われた値段そのままを払い、物のついでに自分の分のクレープも購入した。 注文内容は、新メニューの惣菜クレープの物の中から。*]
(163) mzsn 2015/09/24(Thu) 06時半頃
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― 数ヵ月後 ―
…は、ぁ、?
[人並みの中眉をひそめ、しかし対峙する女に見覚えは無い。 そもそも何でこんな、俺は罵られてんだ。>>94 新手のキャッチかなと思ってみても、女が店の宣伝を謳う事は決して無く、むしろ、]
なん、で
[何で、知ってる。 ほざいた内容までは知らないが、不貞>>*0と言われれば顔をひきつらせるしか無いもので。
日向の母親との関係は自分と本人以外知る者は居らず、彼女が誰かに漏らしでもしない限り、ばれる事は決して無いと思っていた。 そもそも日向本人が知らぬ事、漏れた線も考え辛い。 ならばなぜ、この女は知っている?]
(164) mzsn 2015/09/24(Thu) 06時半頃
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…お前、誰だ。
[百洲の関係者か?こんな女居たかな。そんな事を考えてみても見覚えが無い事には変わりは無く。 麗亞の件で相当揉めた三黒に他の家がちょっかいを出しに来たかという線に気付いても、それにしてはどうも様子がおかしい。
睨む目>>95を殺気混じりに鋭く見下ろしていたものの、しかしあちらから反らされればそれは>>95怪訝なものへと変わっている。 いやそれより、門の向こう?一体、どう言う。こいつは何を知っている? 立ち去る女>>96の腕を待てと掴むより先、投げかけられた不死鳥の話>>97にあっけに取られて。 長い日数を過ごしても尚己の目に焼き付いて消えないあの鳥の事を、どうしてお前が知っているのか。 あの不死鳥の事は、限られた者しか知らない話だ。 ――それに俺は、何処かでお前を見た事が、]
…!! おい、待っ、
[一瞬、何かに気付きかけた気がした。 しかし言いたい放題言われその内訳の半分も分からぬ内に、 若い女は人混みに呑まれて消えただろう。**]
(165) mzsn 2015/09/24(Thu) 06時半頃
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―数年後 破壊の跡残らぬ街中で>>210―
[飛んできた折鶴に煙草の煙を吹きかけたりつまみ上げるまではしても、戯れに燃やしてしまう事はもう無く、 紙の翼>>213が擦れる音を耳元に聞きながら、不機嫌そうな青年は表情以外は当主である幸々戸の次男によく似て居て。]
お前は頭が元に戻ったな、長男。
[眩しく染めた金髪は長い時の中ですっかり黒髪に戻っており、ついでに言えば歳も取って大人になったなと、 しかし、後半の内容を口にする事は無かっただろう。
死体の様な青年を幸々戸の家に送り届けたのは、もう随分前の事。 …いや、様では無い。 それは確かに死体だった。 あの日、鼓動無き身体が徐々に冷えて行くのを己はどうしようもないほど感じていたし、 送り届けた玄関先で彼の血筋の者や当の次男が慌てふためくのを、己は確かに間近で見た。
次男による蘇生が施されるも、結局意識が戻らなかったのも、丁度あの日。]
(220) mzsn 2015/09/25(Fri) 01時半頃
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[それから数年を彼は自宅で眠ったまま、 しかし今は目覚め歩き、リハビリも問題なしと風の噂に聞いている。 目覚めたという知らせ>>214は確かに届いていたものの、生憎会ってやる理由もなし。 以前は次男と長男の様子を見に小まめに幸々戸へ通っては居たが、目覚めてからはそれもパッタリ途絶え。
自分が目を離さなければ長男は昏睡に落ちる事も無かったのでは、心臓が止まってしまう事も無かったのでは、 もう少し早く連れ帰って居れば、 そんな懺悔が次男に受け入れられる事は、結局なかった。]
(221) mzsn 2015/09/25(Fri) 01時半頃
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…もう幸々戸の当主殿には、 十分すぎる程顔を合わせたと思ったんだが、なあ。
[さて自分はどれほどあの家に通い詰めたか。 長男がうろついていた頃と比べ随分姿を変えていく幸々戸家の様子を間近で見据え、しかしそれを悪と思う事は決して無い。 何時の間にか懐かれた幸々戸の次男にこれ幸いと幾つかの問題の解決を頼みこむ事も、在りはした。 全ては、以前の幸々戸と三黒の様子からは考えられない程の事であろう。 唯、日に日に兄を真似始める次男の姿に対しては、家の者と共に困ったものと頭を抱えていたのだが。]
別に、 俺が好きでした事だ。
三黒も十分恩恵を受けてるし、 痣無しが気にする事じゃねえよ。
[当主間で交わされた事はお前の管理の外側と、 静かに紫煙をくゆらせながら、口調も放つ内容も、全ては彼の古い記憶のまま。]
(222) mzsn 2015/09/25(Fri) 01時半頃
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…――だがまあ、 礼の言葉ぐらいは、受け取っておいてやる。
[頭を下げる黒いつむじへ、 そう、ほんの少し笑って。*]
(223) mzsn 2015/09/25(Fri) 01時半頃
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― 三黒の家 ―
だから、 そんな使用人みてーな事、……は、
[>>219この数年ですっかり家族レベルまで馴染んだ居候へ、かける言葉は普段と同じ。 だった筈なのだが、珍しい満開の笑みを向けられれば流石にそれも止まってしまうという物で。
…いや、珍しいどころか初めてでは?]
ぁ? お、おう…?
[自室へ下がるらしい女の背を見送りながら、暫くぽかんと呆けていたか。 何か、機嫌のいい事でもあったの、か? 日々を明るく過ごす彼女の、たまに見せる不安げな影。それを気にする事もありはしたが、生憎癒しは己の力の外側で。 どの道俺ではあの心配事は無くせぬと、長い時をそのままに。暮らす中に微かな悲しさを感じても、それを抱えているのは此方も同じ。
白の欠けた穴を、その影を、 胸の奥に色濃く落として。]
(224) mzsn 2015/09/25(Fri) 02時頃
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[しかし彼女は今、その影が今取り払われたかのように微笑んでいる。
何か、あったな。 はて恋人でも出来たかと僅か首をかしげていたものの、浮いた足取りからは何もつかめず。 普段であれば共に食事を取るのにと、向かう先は居間としている広い部屋。]
(225) mzsn 2015/09/25(Fri) 02時頃
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[三黒が綴る仰代麗亞の報告書に目立った変化は出る事は無く、 警戒を張って居た筈の他家からも何時の間にか気も緩み、 三黒の家の者は完全に彼女の存在に馴染む始末。 むしろ彼女が来てからはやりたい放題たっだ当主がきちんと家に居ると有難がる者さえ居たのだが、それは今はどうでもいい。
硝煙と紫煙。 変わらぬ二つの香を漂わせ、上着や武器は廊下の途中で使用人に剥がされた。 軽装であるスタンドカラーの白いシャツと、黒のスラックスを身に纏い、 火傷の滲む手はそのままに、手袋は、先ほどのコートと共に使用人の手の中に。
廊下を歩く黒の足音は、きっと客人にも聞こえていただろう。 片側に庭の覗く木製の長い廊下を踏みしめて、 足音は、部屋の前で止まったか。
火傷の手が、ゆるりと古い障子戸を撫でる。
一枚隔てた向こうから香る料理の香と、人の気配に眉をひそめて。 僅かな木の摩擦抵抗と共に軽い扉を横に引けば、目が合ったのは見覚えのある青い瞳。]
(226) mzsn 2015/09/25(Fri) 02時頃
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[目が合い>>226、合ったにもかかわらず、]
…は、
[スパァン!と良い音を立て、和紙を張った障子を勢いよく閉めた。
なんっで、あいつが、居るんだ…!? 混乱の中たっぷり63(0..100)x1秒程の時間をぐるぐる部屋の前で考えて、手は障子戸に触れたまま。部屋の中身を外に解き放ってはならぬと、閉じ込めるかのように押さえつけていただろう。]
(233) mzsn 2015/09/25(Fri) 04時半頃
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[ ス パァ―――― ンッッ!! ]
[そして再び開いた障子は、高い音を響かせて。 古いから壊れる?知った事か。
さて、彼は座ったままか立っていたか扉の前か。 そのどれにせよズカズカ大股で畳を踏みしめて、白の前に仁王立ちになるのに変わりは無く。]
お、…まえなぁ! 誰に許可得て、俺の家に上がりこんでやがる!
[そもそも三黒の家は対して誰の立ち入りも制限して居ないし、見られて困る物は何もない。 土御門の様に開発中の何かがある訳でも無く、幸々戸の様な家宝もなし。三黒の家の秘密は全て当主の身の内に。それ以外は普通の屋敷と、別な当主も部外者も好きに上げろと言い渡してある。 家に上げた犯人は機嫌の良すぎる麗亞という事は容易に想像がつく物の、こっちはそんな事知ったこっちゃないわけで。
というか、言うべき事はそれでは無い。 それでは無いのだが、口を突いたのは残念ながらそれだけで、 何時帰ってきた今までどうしていた急に何で等の疑問の数々と押し寄せた感情を、全て不法侵入の文句に当てていただろう。
不法侵入でも無いのだが。]
(234) mzsn 2015/09/25(Fri) 04時半頃
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[居候の麗亞を、学校に行けと家から蹴り出したのはもう随分前。 若いんなら学校へ。使用人の真似事をするな仕事を奪うな。 そう一口に言っても実現は簡単な事では無く、監視者たる三黒の目から外す様な選択に、案の定部外者は派手に反対した。
24時間閉じ込めておいても自分が監視しきれる訳でも無く、そもそも増えた業務に追われ色々忙しいし、拘束しすぎて死なれても困るし等々、 言い訳の様な物をいくつも並べ、条件を飲み、飲まれ、何とか昼間の家から追い出した。 それでも、百洲の者数人をばれぬよう監視に付けて。 しかしそれも最初の内。今は目立った処置も無く、所謂放し飼いと言われる奴、だ。
彼女が学期末毎に持ち帰ってくる学校書類や、三者懇談等という地獄の行事に大きな異変が無かった事も随分大きく、 それを踏まえた仰代麗亞の報告書内容は何やら次第にずれた方向に走り始めるのだが、それはさておき。]
(263) mzsn 2015/09/25(Fri) 21時頃
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[監視の無い彼女が出歩く先と言えば学校の狭い敷地と、放課後のクレープ屋や聖堂跡の3つぐらいで、 強く言わずとも時間通りに帰宅する監視対象を有難く思うやら、偶には遊んできてもいいと複雑に感じるやら黒い男はせわしなく。 滅多に運転しない車で迎えに行く事もごく稀と、その助手席は空であったり日向が居たりその他が居たり、車の行先は大抵、麗亞にとっては珍しい寄り道の方向へ転がされる。
それでも何かあれば真っ先に三黒当主自ら手を下すと言ってはあるもののそんな事が発生するとはどうにも思えぬまま、 すっかり情の沸いた仰代をいい用に操る訳でも無く、持て余す訳でも無く。
つまりは、ただの保護者と。
何時の間にか落ち着いた謎のポジションに首をかしげても、生憎、悪い気はしなかった。]
(264) mzsn 2015/09/25(Fri) 21時頃
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[しかし日々の生活の中、共に取る食事の中、出迎える姿等に まるで嫁でもとったみたいだな。 なんて思い、目の前の聖女を眺めてしばし数秒。
…いや、やっぱり無いな。
そう頭を振った事も幾度かと。 やはり自分は、もう結婚などというビジュアルは想像できん。 死んだ百洲のアレ以外とはまっぴらごめんだ。 味噌汁を啜りながらそんな事を考えて、そもそもコイツは歳が離れすぎだろうと、美しき聖女相手に理由を告げぬ盛大なため息を吐いて。
まさかその裏で既成事実の発生>>238をキャンセルされたとは思いもせず、後日しこたま蹴られた上ケーキを奢らされる羽目になるのは、また別の話。]
(265) mzsn 2015/09/25(Fri) 21時頃
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[さて、さて。 以上は引き取った居候の話。
実の娘らしい百洲の日向に対しては、その後も己が血縁者と明かす事は一体無く、 それでも日に日に成長していく彼女の姿へ自分なりの静かな祝福を送って居た。
中学校の入学式もこっそり見に行ったものの気付かれているかまではどうでもよく、 結局、セーラー服姿の本人に声をかける事はせず写真を取る事も無く。招かれざる不審者はさっさと退散させていただこうと、それでもネクタイをゆるめながらの帰路は随分と幸せに満ちて居たか。
彼女の身長が伸びても、纏う服が違ってきても、話す言葉や内容が変化してきても、 二人の関係変わらぬ物と、向かい合う喫茶店のテーブルで頼む物はいつもと同じ。 仕上げる報告書も無いのに事細かく日々の話を聞き、相槌と共に小さく笑い返すのは、やはり、何時ぞや見せた父の顔であっただろう。*]
(266) mzsn 2015/09/25(Fri) 21時頃
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[ころころと表情の変わる相手は疑いようもない程彼自身で、ああやっと、長い時の中で帰ってきてくれたのかと胸を詰まらせる事数秒の内。 そうして拳を掲げる彼>>262をみればこちらも何時ぞやのように拳を握って、]
(267) mzsn 2015/09/25(Fri) 21時半頃
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遅ェ!
[懐かしい顔を描いた頭に、拳骨を落とした。
ゴツリと鈍い音を立ててそれは脳天を撃ち抜き、頭蓋骨の硬い感覚を此方の手骨に伝え走る。 顔は狙わず頭だけを的確に狙ったそれの威力は凄まじく、あの時殴り損ねたのを今返してやるとばかり、強烈な一撃をお見舞いしてやった。
遅い。 遅すぎる。 俺がどれだけ待って苦労したと思ってるんだ。
帰ってこなかったら殴るという約束ではあったものの、帰ってきたら殴らないとは生憎一言も告げて居ない。 それに今は嘗ての弱々しい姿では無く、ずいぶん元気そうな顔をしている訳で。]
お前、 帰り道を女と遊んできたとかじゃ、ねえだろうなあ…。
[壊れた障子に構う事は無く、ぼきりぼきりと指を鳴らして。 しかし第二撃が飛んでくる事は無かっただろう。なんせ今ので大分、すっきりした。]
(268) mzsn 2015/09/25(Fri) 21時半頃
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[一直線に帰ってきた>>269にしては遅すぎる馬鹿と言いつつも、もし彼が早め数日の内に帰ってきたとしても、己は同じ要に遅いと殴って居たという事は黙ったまま。]
おう、 …お帰り、相棒。
[>>270浮かべた笑みに、あの日の悲しさはもう無い。 けれど、つんと感じた鼻の奥の感覚を誤魔化すように、短い栗色の髪をやや雑にかき回して。
コブができたかどうかまでは、俺の知ったこっちゃない。]
(277) mzsn 2015/09/25(Fri) 22時半頃
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は、あ?
世界って、お前、
[>>271取りあえず飯だと痛がる白いのを座布団の上に落ちつけて、此方も幾つかの好物を口に運んで一息ついたそれぐらい。 告げられた俺また何処か行きます宣言>>272に思いっきり眉間にしわを寄せていたのは、きっと白の記憶のままの黒。
つーかこいつも俺に業務全部押し付けんのかよふざけんなよ。 …と胸の内悪態をつきつつも、続く彼の言葉を静かに聞いて。 そういやこいつはそう言う奴だったなと嘗て名を捨てた天使>>273を今更のように思い出しながら、会話の長さへ冷たさを失った発泡酒を一口。
繋がり途切れた後、今更置いて行くなと駄々をこねる訳にも行かず。 勝手な寂しさから彼の翼を奪う事も、やはり自分には出来ぬ事。 結局の所、俺は全てにおいて甘いのだ。 日向や麗亞、幸々戸の兄弟、その他の家の諸々に関しての全て。 そんなだからこいつらは俺に甘えて来るのだと分かって居ても、なかなか断る事は出来ぬまま。]
(278) mzsn 2015/09/25(Fri) 22時半頃
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…定期的に土産の酒送ってこいよ。
[へらり笑う間抜けな白と、此方は普段通りの不機嫌な黒と。>>274 素直になれぬOKの答えを口にしながら、グラスに残った酒を一気に煽って。]
(279) mzsn 2015/09/25(Fri) 22時半頃
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[ああ、やっぱり俺は甘いな。 返事に笑う顔>>280を見ながら何度そう思っても、 それでも悪い気がしない事が増えたのは、この数年彼が居なくなってから。
それから少しして、麗亞と話すと言う白を自分は止める理由もなし。 ふわりと酒の回った頭で部屋の場所を教え、まあ分からなければ使用人に聞けばいいと、座ったまま送り出したか。]
だろ。 全然手が掛からなくてな、俺もありがたい。
…口説くなよ。
[紡ぐ言葉もじとりと視線をやったのも保護者としてなのだが、果たしてしっかり白に伝わったかどうかまでは怪しすぎる。 関係性を疑う目>>281にも気付かぬまま、何せこっちは酔っぱらい、だ。*]
(287) mzsn 2015/09/25(Fri) 23時頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
mzsn 2015/09/25(Fri) 23時頃
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…っは――…、
[白いのが退室した後、盛大に息を吐く酔っ払いが部屋に一人。
飯は終わった。空になった食器を積み上げて、後は台所まで運んで行けばいい話。 だがまあ、今日は少し飲みすぎたか。 神威の前では意地でも見せなかったものの、連日の業務の疲れと飲みすぎたアルコールはぼんやりと男の脳を揺らして。 もう今日は人に任せようか。 立ち上がりかけた腰を再び座布団の上にどっかり下ろして、しばしの沈黙の中揺れる思考を紡ぎ出す。
白と黒。 二人の繋がりはあの日確かに途切れ、残り感じる物は今は一つも残って居ない。 それでも、約束通り帰ってきてくれた。 翼を失くしたとしても彼は確かに自由な天使であると、それを証明して見せたのは他でも無い先の彼で。
――ああ、よかった、なあ。 全てが以前のような元通りになった訳じゃない。良い意味でも、悪い意味でも。 けれどその手伝いの為に走り回る価値はこの世界に、自らを取り巻く世に確かにある訳で。 そして彼もまた、その価値ある物の内が一つ。]
(299) mzsn 2015/09/25(Fri) 23時半頃
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[つまらない、興味の無かった筈の世界は今は色に満ちている。 己を取り巻く周囲全てが、モノクロ≪白と黒≫の深き呪いでも執着でも無く、聖痕の空のように輝いていただろう。
ふにゃりと、男にしては珍しく無防備に笑って、 障子の大破した部屋は廊下から丸見えだったけれど、それでも食器を片づけようとする使用人すら近寄らず。
突っ伏したテーブルの上僅か涙を零しても、 きっと、誰も見なかった。*]
(300) mzsn 2015/09/25(Fri) 23時半頃
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地下軌道 エフは、メモを貼った。
mzsn 2015/09/25(Fri) 23時半頃
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