59 海の見える坂道2
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― 酒場 ―
おいお前ら。
ちょいと俺から話があるんだがな。
[アパートの住人が酒場に集まり始めた頃だろうか。
酒場の隣にある肉屋を閉めて帰ってきたアパートの大家、二ール・デカルトは、住人達を集めて美味しそうな料理と酒が並べられたテーブルへと住人達を着席させた。
しかし、きっちり部屋順に着席する様に指示するあたり、まるで大家族の父親の様である。]
(#0) 2011/08/04(Thu) 01時半頃
[そしてぐるりとテーブルを見渡して、全員が揃った事を確認すれば、話を切りだすのだろう。
アパートの住人たちが、アパートの前で猫を連れて何やら騒いでいた事を肉屋の客から聞いたという話を。
この賑やかなアパートの面々、大家を悩ませるような問題を起こすことは日常茶飯事であった。
きっと、悪い予感しかしなかったのであろう。
そう、彼は大の猫嫌い――― **]
(#1) 2011/08/04(Thu) 01時半頃
[しばらくむすっとした顔で住人達の話を聞いていた大家であったが、キリの良いところでもう一度全員を見渡して、ハッキリとした口調で告げた。]
いいかお前ら。
俺に内緒で飼ったり怪しい事してみろ。
そんときゃ、退去も覚悟してもらうからな。
[重々しい口調で告げ、もう一度住人達を睨むと奥へと消えていった。
ここまで猫嫌いなのも、逃げられた前の奥さんの事が絡んでいるとか、いないとか。**]
(#2) 2011/08/04(Thu) 21時頃
[それは大家が行ってしまった後だったか。
301号室の住人キャサリンはフィリップが作った料理をぱくぱくと物凄い勢いで頬張りつつ。]
おー、こわ。
あんなにカタブツだから奥さんにも逃げられちゃうんじゃないのぉ?
[去ってゆく大家の背中にべぇっと舌を出して。]
あ、ねぇねぇ、せっかくだからさ、あの猫ちゃんに名前付けない?
ベティなら、良い名前付けてくれるんじゃないかなって思ってたんだっ!
[隣に座るビン底眼鏡の肩をポンと叩いた。]
(#3) 2011/08/04(Thu) 21時頃
ったく、煩くて勉強できやしない…。
叔父さん、俺屋上行くから。
[眉間の皺をより深くさせて。
誰かさんが心配したとたん、その人物は静寂を求めて今にも階段を上ろうとしていたのでした。]
(#4) 2011/08/04(Thu) 22時頃
ん…。
[背後に人の気配を感じれば、とんとんと肩を叩かれた。
あぁ、自分がやろうとしていることを邪魔された、と振り返る彼の視線は自然と厳しいものに。]
何…?
[プリシラの言葉を聞けば、さらに厳しい目線を彼女に向けただろう。]
遠慮する。
生憎ともう夕飯は済ませたんだ。
[それだけ言うと、また屋上への道のりを辿ろうと、階段へと足を掛けた。]
(#5) 2011/08/04(Thu) 22時半頃
[大家が酒場から姿を消した後、住人達はどう過ごしただろう。
これからの猫との生活に頭を悩ませただろうか。
酔っぱらってしまって記憶を無くすような住人もいただろうか。
賑やかな一夜は、あっと言う間にふけていって。]
(#6) 2011/08/05(Fri) 05時半頃
― 翌朝 ―
[誰の部屋でついているラジオだろうか。
今日もあの声が、潮風に乗ってどこからか流れてくる。]
みなさん、おはようございます。
いかがお過ごしでしょうか、アイリス・ベルジェがお送りする朝のラジオ『favori temps』、いつものようにまずは今日の天気からお届けしましょう。
(#7) 2011/08/05(Fri) 05時半頃
今日は晴れ時々曇り、最高気温30℃、最低気温19℃と、暑い一日になりそうです。
湿度は49%、降水確率は5%、蒸し暑くなりそうですね。
日中は時々曇りますが、夜には雲は晴れて綺麗な星空が見えるでしょう。
さて、今日は土曜日。
広場では恒例の蚤の市が開かれますね。
私も大好きなアイスを食べつつ、今日はうろうろしようかな、なんて思ったりしています。
それでは、今日はこの曲からお届けしたいと思います―――…
(#8) 2011/08/05(Fri) 05時半頃
― petit a petit ―
にゃぁ。
[どこをどうやって抜けだしたのでしょうか。
どこからかカリカリと音がすると扉を開ければ、そこには赤いリボンをした黒猫ちゃんの姿。]
何でこんなところにいるの?
[蚤の市へ行こうとしていたキャサリン。
黒猫ちゃんを抱き上げて、思案顔。]
…つれてっちゃおうか。
飼い主が見つかるかもしれないし。
[そう言って、服の中へと黒猫ちゃんと隠しました。]
(#9) 2011/08/06(Sat) 01時頃
[それは、アパートを出る前の事。
屋上へ向かおうと階段を上ってきたディーンとすれ違った時。]
…にゃぁ。
[小さな声で、黒猫ちゃんは鳴いてしまいました。
やば、と思った彼女だったけれど、聞かれたら空耳だろうというつもりで素知らぬ顔でその場を後に。
階段の影から、こっそりとディーンの様子を見たけれど、彼はとっとと屋上へ行ってしまった様子。]
あぶなーい…。
[聞かれなかったのだろうと、勝手にそう思い込んでその場を立ち去り蚤の市へと向かう彼女。
はてさて、本当にその鳴き声は神経質そうな顔の青年に聞こえていなかったのでしょうか…。 ]
(#10) 2011/08/06(Sat) 01時頃
[さてさて、蚤の市へとつけば、黒猫ちゃんを抱っこして歩き回っていた彼女。
でも、何かの用事を忘れていたみたい。]
ごめん、このこちょっとお願い!
[アパートの住人を発見したら、黒猫ちゃんを託してどこへやらと消えてしまいました。**]
(#11) 2011/08/06(Sat) 01時頃
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