223 豊葦原の花祭
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夢を見るんだ。
[男の着物の裾が揺れる。ひらりと薄桃色の蝶が舞って、融ける。 ゆっくりと登る半月が、宵闇のような瞳に映り込む。]
昔の夢。 と、少し前の、夢。 どれもさびしくて愛おしくて、春になるのが待ち遠しい。いつだって。
[遠くの山の端は、落ちる陽の残滓で未だ明るい。 真上は疾うに藍色だ。やがて完全な夜が来る。
新緑の匂いを吸い込んで、息を止めた男がくるりと回る。 握った両の拳をやさしく開いたのと同時に、桜の巨木に着いた無数の硬い芽が、薄紅を伴ってふわりと膨らんだ。]
綺麗に咲くから。 今年も、綺麗に咲くからさ。
[離れた場所で響く歓声。 笛と、太鼓と、人々の声。たった一夜の邂逅に、胸が踊らない筈はないのだけれど。]
(*0) 2015/04/18(Sat) 02時頃
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────また、…会いに来て。
[桜の花のなかりせば。なんて詠った誰かの声が蘇って。 今宵ばかりは、なんだか酷くそれが恨めしかった。]*
(*1) 2015/04/18(Sat) 02時頃
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─???─
楽しいねぇ、楽しいねぇ。
[くつり、くつりと笑い声を漏らす。 左手にぶら下げた竹の葉の包みから、摘み上げた金色の木の実を口の中に押し込んだ。 食めばしゃりしゃりと口の中で砂糖と果汁が混じり合う。
目を伏せると、少し離れた『身体』の傍に誰かが居る感覚。 心のうちで話し掛ける。久し振り=B]
あんたには、会えるかな…
[誰に届くでもない、細い呟きがそうと空気を揺らした。]*
(*2) 2015/04/19(Sun) 00時頃
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人はさ。死んじゃうだろ?
(*3) 2015/04/19(Sun) 02時頃
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散ればこそ いとど桜は>氛氈c
[意識してか、無意識か。抱え上げた一人分の重みが口ずさんだ詩>>84に、左胸の奥がぎゅうと鳴る。
そうだ。男は思う。 そうだ。永遠は、不変は、選び取るのが酷く難しい。]
(でもさ、)
[欲しかったのは、それじゃない。 男に必要だったのは、果たされなかった約束を待つための、時間。 その為にだったら、]
(神様、ってのは、以外と不便なモンだなぁ。)
[飲み込んだ音は誰に届く訳でも無い。 それでも、一夜限りの紛い物の肉体でも、心臓が痛むような感覚には、まるで人の身を得たような密やかな喜びがあった。]*
(*4) 2015/04/19(Sun) 15時半頃
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