88 吸血鬼の城 殲滅篇
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…っ、…!
[荒々しく床に突き倒され、背中を強打する。
痛みに歯を食い縛り、 不恰好に仰向けになったまま 己を見下ろす男に顔を向けた。]
……――。ヘクター…?
[再度の死を宣告する男の姿に、 何かを考える暇は、あまりなかった。 ただ、 三度目の血を、と。 その言葉に、瞠目し]
(215) tatsuru 2012/05/06(Sun) 17時頃
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…っ、……ぁ、……あ、…
[ゆっくりと胸を突き通す闇の刃。 酷くあっさりと呑み込まれてゆく其れ。 心臓を掻き分けてゆく鉄の感触。 ――痛みよりも感じるのは、 焼けるような、熱さ。 唇が血泡を吹き、けほりと、赤い咳を漏らす]
(216) tatsuru 2012/05/06(Sun) 17時頃
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……っ、……
[躯が形をもたなくなってゆくのを ぼんやりと、自覚する。 のろのろと腕を上げた。] (――愛の、形) (アンタの) [急速に機能を失っていく聴覚に、 睦言の様にそれが響いて ちいさく、唇が笑みを刻む]
(217) tatsuru 2012/05/06(Sun) 17時頃
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……、…… [覆い被さる様にして 己に小剣を突き刺している体躯。 その背に縋るように――腕を回した*]
(218) tatsuru 2012/05/06(Sun) 17時頃
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[分け隔てられた騎士の心と身命。 胸に僅かな疼きを感じ女は柳眉を寄せた。 誓いが嬉しいと思うと同時に寂しさと切なさを感じる]
あなたの働き、期待しています
[形にならぬ思いは言葉にすることなく 騎士を前に女は主の役割を演じるように言葉を掛ける。 其の手に騎士の口接けを受けた女は微かな笑みを見せ 自らの手を引き寄せようとするが其れは騎士に阻まれる]
………、
[ヒューに繋ぎとめられた細い手首。 流れるような連なる指先がピク、と小さく跳ねた]
(219) helmut 2012/05/06(Sun) 17時頃
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お願い……?
[仰ぐヒューの眸見詰め続く言葉に耳を傾ける。 その内容に驚いたように女は二度三度瞬きを繰り返した。 彼の動きを追うように深紅の眸が仰ぐかたちとなる]
騎士であるあなたが望んで呉れるなら 我が血を、あなたに捧げます
[琥珀の双眸を見詰め答えると 女は肩に掛かる髪を後ろへと流して首を僅かに横に傾いだ。 白く頼りない首筋を騎士の眼下に晒し、瞼を閉じる*]
(220) helmut 2012/05/06(Sun) 17時頃
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[クラリッサの眉をひそめさせた心の動きを、誓いの言葉のままにあろうとする実直な年若い騎士は察していない。 ヘクターの愛のように、一であり全である形もあるものを。
まだ器も経験も足りぬようであった。]
(221) enju 2012/05/06(Sun) 18時頃
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[自分の掌におさめた白い指がわずかに強ばった瞬間には罪悪感を覚え、続く言葉に愁眉がひらく。 許すではなく、捧げると告げられた声に焦がれるほどの信頼を感じて。]
感謝 いたします。
[かしこまった礼をしたヒューは、しばし、そのまま固まる。
ヘクターはヒューの血を吸わず、その術も教えていなかった。 模範といっては先ほど金髪の剣士が襲われたのを目撃したくらいだったが、吸血鬼というよりは人狼に喰われたようなあれをクラリッサに試すことはまかり間違ってもできない。
血を飲むのだ、口を使えばいい、それはわかっているのだが──]
……は、
[喉が引き攣るのは、血への渇望ではない、きっと。]
(222) enju 2012/05/06(Sun) 18時頃
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[不慣れな騎士を導くように、クラリッサが自ら亜麻色を流して細い首筋を晒してくれる。 祈るように閉じられた瞼が決断を促した。]
失礼をば──、
[声が震えるのがわかった。 指先を伸ばし、クラリッサの顎に触れて、わずかに顔を仰のかせる。 殺した息にも揺れる睫毛。 その距離。
あとは引き寄せられるようにゆっくりと唇を寄せれば、短い赤毛が白い肌に被った。]
(223) enju 2012/05/06(Sun) 18時頃
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[ぷつりと、牙が柔らかい抵抗を穿つ。 滴ったのはほんのわずか、紅玉の髪飾りほどの血。
唇に含んだ雫は甘く軽く綿菓子のような味がした。 昔日の優しい思い出にも似て。]
(224) enju 2012/05/06(Sun) 18時頃
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[不意に身体中に力と幸福感が駆け巡る。 浄化の光が刻む痛みが鎮まってゆく。
これが血の糧──吸血鬼の正餐。
愛するものの命の味。]
(225) enju 2012/05/06(Sun) 18時頃
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姫の命をわけてくださり、ありがとうございます。
…終生、忘れません。
(226) enju 2012/05/06(Sun) 18時頃
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[そっと触れていた指先を離し、上体をたてる。]
初めに知ったのが姫の血であったから、 おれはこの先、人の血に貪婪に狂うことは、決して、ない。
あなた以上に求めるものなどないのですから。
(227) enju 2012/05/06(Sun) 18時頃
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飢えても浅ましからず。 あなたに相応しい騎士であらんと精進します。
[確固たる意志をこめて微笑み、誓った。]
(228) enju 2012/05/06(Sun) 18時頃
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やっぱり、いい女になったな。
[何があろうと、最後の一瞬まで。 言葉(>>175)を紡ぐ"娘"の瞳は美しく澄み渡り、 思いを告げる顔には、しなやかで強い意志が宿る。
己の眠っていた歳月が、華をさらに美しく開かせた。 それが誇らしく、―――口惜しくもある。
自分の手でそれを為せなかったことに。 労苦の歳月を過ごさせてしまったことに。]
(229) nekomichi 2012/05/06(Sun) 18時頃
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[隠し通路を抜けて本館に入り、 漸く"娘"の身体を床に立たせる。
帰還への言祝ぎに応えるのは]
―――ああ。 今、帰った。
[短く、力強い宣言と、 これからも共に行こうと差し出す、掌だった。**]
(230) nekomichi 2012/05/06(Sun) 18時頃
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[刃を、肉に貫き通す。 幾度もしてきた、馴染んだその動きに 今は、微かな緊張を覚える。
これは、儀式だ。 永劫を、約束する。]
(231) nekomichi 2012/05/06(Sun) 19時頃
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[狂気に押し流されていく瞳を、見ていられなかった。 それならば、いっそこの手で壊したかった。
違う。 壊したくはなかったのだ。
だから、殺した。
闇の眷属にとって、死は―――滅びではない。]
(232) nekomichi 2012/05/06(Sun) 19時頃
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[貫いた刃の先から、肉体がほどけていく。 剣を押し返していた圧力が薄れ、 命が流れ出していく感触が伝わる。
背を抱きしめる手。 笑みを浮かべる唇。 身体ごと、ぶつかるように触れた肉体は、 細かな粒子となって床に折り重なり、風にふわりと浮いて―――]
――― 留まれ。
[命ずる声に、はたりと動かなくなった。]
(233) nekomichi 2012/05/06(Sun) 19時頃
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[肩に残る灰を指先にとり、口に含む。 舌先に広がる、強い苦み。]
―――おまえの抱えている苦悩がそれほどに重いなら、 すべて、忘れてもいい。 なにもかも無くして、まっさらになってもいい。
[降り積もる灰の前で、腕を貫いた杭を引き抜く。 浄化の力に爛れ、血の止まっていた傷口を 灰のまとわりつく刃で、さらに深く切り裂く。]
(234) nekomichi 2012/05/06(Sun) 19時頃
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みたびの、闇の祝福を受けよ。 闇の寵児たれ。ドナルド・ジャンニ。 オレの魂が滅び砕け散る瞬間まで、 おまえを慈しみ愛すると約束する。
(235) nekomichi 2012/05/06(Sun) 19時頃
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だから、
――― 戻ってこい。
(236) nekomichi 2012/05/06(Sun) 19時頃
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[鼓動のリズムで噴き出し、溢れる血を 惜しみなく灰へと降り注ぎながら、
闇の主は強い眼差しで、紅に染まりゆく灰を見つめていた*]
(237) nekomichi 2012/05/06(Sun) 19時頃
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[騎士が礼をすれば其処に留まる空気が流れる。 肌で其れを感じながら待つのだけれど動きの感じられぬ間があった。 呼気に混じる音に思わず伏せた睫が震える。 声を掛けようとくちびるが僅かに開かれるが 音を結ばぬまま閉じて、断りの声を聞いた。
顎へと触れる指に促されるまま顔を上げる。 傍からみれば口接けを待つ乙女の姿にも似るが 幸い周囲に人目は無く気付くものも無く。
騎士の髪が頬へと触れる。 くすぐったそうな吐息を漏らし ヒューの白き牙をその身に受け入れた]
(238) helmut 2012/05/06(Sun) 19時頃
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――…ン、
[チクと刺すような痛みは一瞬。 吸血という行為が齎す甘い痺れがその背に奔る。 女の手指が縋るように騎士の胸へと纏わるも 震えるくちびるがそれ以上の音奏でるを耐えるように結ばれた。
肌に感じるは信頼寄せる騎士の息遣い。 穿たれた牙が引き抜かれる気配に軽く喉を反らした。 女は絡めた手を下ろし蕩けかけた深紅の双眸を露にする。 彼が口にした血の量は僅かで 礼には及ばないと、ゆるゆる首を振ってみせた]
(239) helmut 2012/05/06(Sun) 19時頃
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貴方には沢山、貰っているから……
私の命をヒューが必要とするなら それは私にとって喜ばしいこと
[狂うことはないという騎士に頷きを返し]
我が騎士が飢えに悩まされることあらば 今日のように命の雫を貴方に捧げる
(240) helmut 2012/05/06(Sun) 19時頃
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[微笑む騎士の誓いに綻ぶような笑みを浮かべ]
――…ヒュー 貴方は私の自慢の騎士よ 貴方が私の騎士である事を 誇りに思います
[凛とした声を其処に響かせた*]
(241) helmut 2012/05/06(Sun) 19時頃
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[考えるように伏せられていたジェフリーの顔が上がり、 視線が交差する。 心の奥底まで見透かされそうな真っ直ぐな眼で、 光を見失い、どこにも戻れなくなった自分に新たな道を示す。]
……はい。その言葉を頂いたからには…
神に定められた戒律からではなく……私の意思で…
[服の袖で顔を拭い、ジェフリーに笑顔を向ける。
喪失の記憶、絶望感は、きっと忘れることはできないだろう。
それでも、それ以上に、自分にとって大切になるであろう言葉を 記憶の中に刻み付けることができた。]
(242) uyuki 2012/05/06(Sun) 20時頃
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ジェフリー・ハリソン様、 修道士ムパムピスは…… [言いかけて軽く首を振り言い直す]
…マティアス・デイヴィースは、貴方を唯一永遠の主として お仕えすることを誓います。
貴方の為にも…私はこれからも生き続ける。 吸血鬼として。 ――この、世界で。
[隠し続けた本名と共に、誓いの言葉を口にする。]
「ムパムピス」は、聖務につく者が精神支配を避けるための通名なのです。勿論普段はその名前で呼んで頂いて構いませんから。
(243) uyuki 2012/05/06(Sun) 20時頃
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[ジェフリーが立ち上がり、剣を拾い上げている。 自分も杖を拾おうと手を伸ばすが、聖別されたそれは近づくだけで熱を持ち、手にすることは叶わなかった。]
…さよなら。今まで、ありがとう。
[目を伏せ、心の中で聖なる杖に別れを告げる。]
「 では行こうか。」
はい…っ!どちらの部屋を通っていきますか? 吸血鬼が、下のエリアに移動しているのは確かなのですが、気配を探るには…
(244) uyuki 2012/05/06(Sun) 20時頃
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