56 いつか、どこかで――狼と弓のワルツ――
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― 暁直前:砦前平原 ―
『 ―――――今、勝利を我等が手に!!! 』
[闘志の炎燃やす狼達が一斉に雄叫びを上げる。 高らかに天へ翳された牙は空を突き破りそうに。
火蓋が切り落とされる]
(108) 2011/07/01(Fri) 22時半頃
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[平原の向こうに対する敵軍。 黒髪を束ね、嘶く黒い馬に跨る姿は死神の様に。
睨み合いはほんのわずか一瞬。 天へ翳された剣と共に、敵軍と言うひとつの巨大な獣は唸りをあげる]
(109) 2011/07/01(Fri) 23時頃
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――― 行くぞっ!!
[鋭い赤狼の咆哮が鬨の声をあげる。 砦の前に広がる数多の軍馬が嘶き、馬蹄で地震を引き起こす様に駆け出す。
真直ぐに進み、待ち受けるのは、激突]
(110) 2011/07/01(Fri) 23時頃
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[厩舎の方を回って、フィリップも出陣した事を知る。 日の出前に騎馬達を引き出していた姿を覚えていた。 我知らず、胸の十字を握り締める]
……神様、どうかあの子を無事に戻して下さい。 フィリップ君はまだ二十歳にもなりません。
死して後の、来世の幸せなど願わず、 今生きている幸せを求めてよい歳なのです。
(111) 2011/07/01(Fri) 23時頃
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― 平原 ―
[赤と緑。 二色の集団が別々の方向に一斉に蠢き始める。]
奴は…ガイル・カロッサ?
[ブルーの服に身を包み、敵陣を見つめる少年に女は声をかけた>>106。赤騎士団のはずの女が何故ここにいるのだろうか。 女は真っ直ぐに名を呟かれた男を見つめた。]
(112) 2011/07/01(Fri) 23時頃
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[狼達が咆える中、オスカーの呟きを拾えば]
…さあな。
[言いつつも、一通り目は通していて。 ただ、頭で考える事が苦手なだけだったりするのだ。]
お前こそ、んな軽装で死んでもしらねーぞ。
[彼女が甲冑ではなく、黒い服を纏う意味は理解していなかった。 嫌でも後に、理解することにはなるだろうけれど。]
(*38) 2011/07/01(Fri) 23時頃
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フィリップは、ミッシェルに頷いた。
2011/07/01(Fri) 23時頃
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[敵軍の攻撃は激しく、やがて敵味方入り乱れての混戦となった。]
…ッ
[鋼のぶつかり合う音と、大砲の放つ硝煙の臭いの中を、駆ける。 主を失い暴れまわる馬を引きもどすために。 ふいに、ヒュっと振るわれた剣が、肩口を裂き、血が噴きだした]
ぐっ…!
『お前、騎士ではないな。 だが ――― 戦場において命の重さは等価だ』
[何時の間にか自分が自陣から離れ過ぎていたのか、相手が切り込んできているのか。 無造作とも言えるような流麗さで剣を振るい、少年の肩を裂いたのは敵将ガイル・カロッサその人だった。
剣を抜くか、逃げるか。 血の噴きだす肩を押さえて下した判断は一瞬。 傍らの馬の手綱を無事な手で引くと主を失った馬へと乗り、全力で引く。]
(113) 2011/07/01(Fri) 23時頃
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『逃げるか。 敵わぬと思うならば、撤退もまた勇気』
[翡翠を細め、黒い馬を駆る男は少年を深追いすることはなかった。 振り返れば、自軍の騎士と切り結んで、切り捨てているのが見えた。 将でありながら先陣きって戦うことを好む男は、返り血により更に禍々しく見えた]
(114) 2011/07/01(Fri) 23時頃
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―平原:赤騎士団側―
[両軍が正面から激突すれば、たちまち土煙があがる。人と馬が入り乱れ、矢が飛び交い、剣と剣がぶつかり、怒号が聞こえる。
そんな最前線よりもやや後ろに配置されているのは、やはり女だから。それでも、危険な事には変わりはない。]
OK、足は止血できた。他に痛い所は?歩ける?
[片足を負傷し、手当てをした騎士に肩を貸し、砦へと引き返す。負傷者を送り届ければ、再び負傷者がいないかを探す為に戦場へ。何度も、往復する]
(115) 2011/07/01(Fri) 23時頃
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―砦内 地下牢付近―
[それは、晩にオスカーが捕らえた捕虜だ。>>60 開戦の混迷の中、一瞬の隙をじっと伺っていた。 そして見張りの油断を逃さずに討ち伏せて、 脱走すべく牢を抜け出して――
幸か不幸か、それを見止めたのは丸腰の神父]
えっ……貴方、こちらの騎士団の方では……
……――っ!?
[騎士団の衣と違うものを身に着けた見知らぬ青年、 その手に握られた赤と銀に光る刃に声が引き攣る。
瞬間、どん、と突き飛ばされる衝撃と、 腹部に焼けるような痛みを感じた]
(116) 2011/07/01(Fri) 23時頃
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[まずは、この馬を連れ帰らねばならない。 それが少年の仕事だからだ。 どくどくと脈打つ傷から止めどなく血が流れるのを押さえ、どうにか馬を御すと砦へと向かった]
…っ僕には、僕の戦いがある。
[剣を交えて戦うことではない。 少年や、厩舎で馬の世話をする仲間たちでしかできないことがある。 血の気を失って青くなりながら、少年は本日何頭目かの馬を、砦に連れ帰るべく駆った]
(117) 2011/07/01(Fri) 23時頃
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― 出陣前 ―
[演説を終え、共に戦場に向かう愛馬を引き取りに向かう。 その手綱を引く厩舎の少年>>86には見覚えがあった。厩舎で、時には伝書鳥の手紙を受け取る形で、言葉を交わしたこともあっただろうか]
これまでダスクを有難う。 馬たちを―――宜しく頼む。
[手綱を受け取り、向けるのは凛とした敬礼。]
(118) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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― 暁・開戦前・平原が見える砦内 ―
[戦術の知識や戦闘能力の無い自分は、どちらかと言うと砦にて後方支援の役割を背負っている。しかし、状況に応じて人手として前線近くに出ることもあると通達はされていた。]
はー、こりゃすげえ眺めだな。 一糸乱れぬってやつだろう。 凱旋か出征か、ともあれ歩いてるのしか見たことねーからな。 [砦から、眼下に広がる紅と碧を、外側から遠巻きに見つめる。鎧を着込んだ騎士達が直立し並ぶ姿は思わず息を呑んだ。
一般市民の自分には、騎士の軍団が城下や街道を行進する姿しか見たことが無かった。]
(119) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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なりたかったんだよな。あれに。 ずっとな。あの中に入りたいってさ。 何時だって、今だって…。
[視界が水に入ったように潤んでいて、よく見えない。 想いが一つ、ぽた、と零れて落ちた。]
幼少の頃はその闊歩する姿に憧れていたこともあった。子供仲間と騎士になろうと言い合った事だってざらであった。凱旋する騎士に、握手してもらったことすらあった。その時の一瞬は今も覚えていて、生涯忘れないと誓っている。]
(120) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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僕は、持たざる者なんだ―。
[しかし自身には、騎士としての家柄も無ければ、登用されるだけの膂力も無かった。
年をとり現実を直視し、諦観の境地に至った今でも涙を流している。]
愚痴を言い合った騎士殿達、裏取引をお目零してしてくれた緑の団長、規律に厳しい緑の副団長、見張り台で涙を流した騎士殿、なにやら殺気を張っていた騎士殿方、見張り台に登る理由を教えてくれた騎士殿…。 お願いだぁ、勝利を。 そして出来るだけ生きて還ってくだせぇ…。
[自身の戦場入り―それを今は忘れ、唯唯不恰好な祈りをささげ続けた。]
(121) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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そんな重苦しい甲冑着てる方が死ねるな。
[イアンの言葉にはそれだけ返して。]
何かあったら俺に言え。 ベネット、お前もだ。
[自分の前に立つ、二人の男に声をかけた。]
(*39) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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やはりお前は現れたな。
[ガイルと呼ばれる男に向かい、誰にも聞こえぬ声で呟いた。]
フィリップ!!!
[瞬く間に少年の肩口から血が噴き出し、一心不乱に愛馬と共に男に目掛けて賭けだした。]
(122) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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お前の相手は私だ!!!! フィリップ、お前はこのまま馬を連れて下がれ!!
[鈍い剣の音が響く、片手では相手に出来そうな相手ではない。 女は両手で握り締め、男と剣を交わらせた。 男は楽しそうに女の表情を見つめ不気味に笑う。]
(123) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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[白馬の手入れされた毛並みを撫ぜ、その上に跨った。 続く団員達を振り返る。 黒い軍勢を見つめる騎士達。その中には、赤騎士団から派兵されてきたミッシェル・クロウの姿もあっただろうか]
恐怖心のその先を見ろ。 決して慄くな。
――――行くぞ、いざ、戦場へ!!
(124) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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―砦内 地下牢付近― [地下牢の出口は、厩舎と近い。 馬を繋いだ後、傷の手当てをすべく歩いていると、倒れ伏すムパムピスを見つけた。 そして、その傍らに立つ、赤く染まった凶器をもった者も]
ムパ兄!? おまっ、真坂
[オスカーから捕虜を捉えたことは聞いていた。 まさか自分と同じ程度の年頃とは思わなかったが。 しかし、少年が皆までいうことは許されず、すばやく動いた敵兵に、ムパムピスと同じようにナイフを突き立てられた。]
なん、でっ!
[戦争になんでもなにもあるものか。 そう言いたげな敵兵は、肺から溢れた血を口からごぼりと零した少年を顧みることなく走り去っていく。]
ムパ兄…ムパ兄…! しっかり、しろよ…帰るって言っただろ
(125) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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……くそ…誰か、ごほ、ムパ兄に手当を…
[地に地だまりを作りながら倒れ伏した少年は、這うように、ムパムピスへと近づこうとする。 しかし、遅々としてに距離は縮まない]
(126) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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[両軍が平原の中央で激突する。 最初の激突こそが最も剣戟激しく、一瞬にして大勢の死者が出る瞬間。 槍に、剣に貫かれ、馬に跳ね飛ばされ、硝煙の香りが立ち込める。 その首筋に突き付けられた刃を物ともせず、誰もが、敵陣深くの喉元にまで食い込もうとする]
――イアンッ!!
[そして彼よりも更に戦闘切って突撃を仕掛ける青年も又。 抜き放った両手の短剣を強く強く構えて……
乗り捨てる様に愛馬から飛び降りる]
(127) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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――先に行くよ!!
(*40) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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[馬から飛び降りた青年は、自身の足で戦場を駆け抜ける。
軍馬の突撃を――躱す。 騎士の長剣の斬撃を――躱す]
―――っ……!
[そして静かなる咆哮を上げる狼は、その牙を振り翳す]
(128) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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――僕は『狼』……
(*41) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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[一瞬の交差に、数名の敵騎士が纏めて絶命する。
その力で甲冑を打ち砕くでも無い。 その力で盾を叩き割るでも無い。
その狼の如き素早さを以て、片手で肩を叩く。 そしてその手には、一振りの短剣が、兜に覆われない首を掠める。 ただそれだけで、人は軽く絶命してしまえる。
それが、力強さに恵まれず、騎士剣を持てなかった青年の戦い方]
(129) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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[赤と緑が、平原へと散らばって行く。 向かい来るのは、唸りを上げた敵軍。
愛馬の手綱を引いていれば、思い出されるのは 馬の世話を欠かさずしていた少年の姿。 彼が今、負傷をしているなどとは思いもしない。]
…ッああああ!!
[ただ、咆哮と共に敵軍へと切り込んでいく。]
(130) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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――― ベネット!!
[馬から飛び降りて、地へと降り立った青年の名を呼んだ。 剣や矢、はたまた馬の猛攻が飛び交う中、 地に足を着いて戦うのは、危険だった。 けれど]
(131) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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[この分野では最強と言えるオスカー程では無い。 人体の急所等青年は全て押さえても居ない。
然し、地を駆ける狼の足は疾風を求める様に素早い。 既に軍馬に道を塞き止められそれ以上を斬り込めずに乱戦の最中斬り合う騎士達を後方へ。 馬に乗らず、己が身一つで剣を振り翳す騎士達は、只一人突出してきた狼を狩り尽くそうとその長剣を突きだすが。
―当たらない。 ――当たらない。 ―――当たらない。 ]
(132) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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―――任せたぞ、副団長。
(*42) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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