246 朱桜散華
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[ 志乃も、香月も、亀吉も この事態を捨て置くことはないだろう。
だからどこかで。視ていると、そう思う。]
(……死者の力があるのなら、 それこそ、黄泉からマガツヒを引っ張っていってほしいね。)
――もろもろのまがごと つみ けがれをあらんをば
[ マガツヒが紡ぐは、祝詞などではない。>>66 死者蘇生の言霊だと、女から教えられる。
桜の聲に抗うには小さきものでも、 ことばはとめない。]
(83) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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……、
[ ふと、桜の方向を見る。置壱と辰とが戦っている中で。 其を止める知は、どこからいずるだろう。]
[――舞台を飛び降り、駆ける。]
[ 其の出方すら分からぬ現状、 この目で分析せずして、どうするのかと己を叱咤して*]
(84) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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なんどやっても同じことだ。
(85) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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[桜が散って再びその姿が消える、その繰り返し。 この術は人の技で敗れる代物ではない。
……そのはずだった。
だが今度は違った、丁助の姿はその場に留まり辰次の匕首がその身に埋まる。]
(86) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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───もう、やめましょう。
(*4) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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ぐ、ッッッ!!
[赤い血がまるで花びらのようにパっと散る。 絡まっていた根が解けて、よろよろろと一歩、そしてもう一歩たたらを踏んで、しかし倒れずに留まった。
だが、留まったその先で再び根が伸びるとその足を絡めとる。
いつの間にか桜の樹が発していた神言が消えていた。 そして、りぃんとどこからか風鈴の音が、そして祝詞が聞こえてきた。]
(87) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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───風が止み、揺れていた枝もざわめきを止める。
───桜の花びらがまるで雪の様に舞い降りる。
(88) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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くっそ、お前にやられるのだけは嫌だったんだけどな。
[悔しそうな、どこかばつの悪そうな顔を浮かべる。 突然の告解は、その声その表情それらは全くもって丁助のそれだった。]
なあ、香兄を殺したのが誰か知ってるか? 亀吉を焚き付けて村の者を殺したのが誰かしってるか?
こいつに乗っ取られたとかそういうんじゃねぇ。 俺が俺の意思でやったことだ。
[乗っ取られたのではない、マガツヒとそして巫女と重なるように同化した。故にマガツヒの意思とは等しく丁助の意思であった。 それでも確かにマガツヒの意志に染められたとも言えるのだろう。だが、全て丁助の意志の元であったのも事実だという。]
力に溺れることが。 誰の命をも自由にできるこの力が愉しかったのさ。
(89) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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おい鬼子!!
[刺さったままの匕首を抑えて置壱を呼ぶ。]
……違えるじゃねぇぞ、一度で決めろよ。
[丁助の身体は震えたまま動かない。]*
(90) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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[突き出した刃は、違う事なくマガツヒを捉える。 確り、と返る手応え。 それにぎり、と歯を食いしばりつつ、それでも、力は抜かなかった。
飛び散る紅が、己が身を染める。
先に自身からも滲んだいろは、刃が捉えたのが何か、をはきと伝えるよう]
……って。 丁助?
[桜の花弁が雪さながらに舞い散る中、聞こえたのは耳に馴染んだ、声]
(91) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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……んだよ、それ。
[見知った表情とよく知る声。 それが告げる言葉に、最初に出てきたのはそれだった]
……『依り代』になったから、じゃなくて。 お前が、自分で……やった、っての?
[力に溺れて。力が愉しくて。 自分の意思で、血を流したのだと。 その言葉に、ぎ、と唇を一度噛んだ後]
……おま………………この。 …………ばか、やろ、が。
[零れ落ちたのは、幾度となく口にした、悪態。 他の言葉は、すぐには出てこなかった。*]
(92) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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[ 不意の静寂に>>88
祝詞は唇を震わせるにとどめ、 足を止め、音は消える。
続くのはマガツヒの 否。 丁助の告解だった。
あか、あかいろ、朱
あざやかな、朱。
それが、色を失うように、はらはらと舞い散り 頬を撫でた。]
(93) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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丁助……?
丁助……!
[ 力に溺れた、と そう、紡ぐ彼の顔を見つめ 悲痛に眉を寄せる。]
この、ばかたれがぁ……。
[ 滲む声は、全てが終わるまで 涙の色にするわけには、いかなくて。*]
(94) 2016/04/28(Thu) 23時頃
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[ここまでか、と思ったそのとき>>81]
桜……?
[マガツヒの足元に伸びた桜の木の根。 それがマガツヒの動きを封じている。]
……、どうして…?
[戸惑ったのは、一瞬。 聞こえてきた兄貴分の声に其方を振り向けば>>82 自分と、マガツヒのあいだに割り込むようにして、 手にしていた匕首を突き刺した。]
! 兄さ…っ
[彼が突き刺した匕首は、躱される事無くマガツヒの、 否、丁助の身体に突き刺さった。 赤い、花びらのように彼の身体から血が飛び散る。 亀吉を差したときの、あの光景を思い出した。]
(95) 2016/04/28(Thu) 23時半頃
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……。
[いつの間にか、聞こえていた声>>66は消えていた。 代わりに聞こえてきたのは風鈴の音と、祝詞の声。
そうして、風は桜の枝を揺らすのを止め、 あたりにはただ、桜の花びらが雪のように舞い降りるばかり。]
……、……。
[マガツヒの、否、丁助の告解を、 言葉もなく、ただ静かに聞いていた。>>89]
…………。
[こういうときにかけられるような、 気の利いた言葉は全然思い浮かばなくて。 ……香月ならば、何か思い浮かぶのだろうか、とぼんやりと思う。 亀吉ならば、何か優しい言葉をかけられるのだろうか。 志乃ならば…、否、そうではないはずだ。]
(96) 2016/04/28(Thu) 23時半頃
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……あなたも、さびしかったのか?
[ぽつりと、口をついて出た言葉。
魔は、人の心の弱さに滑り込むと、 どこかで誰かが言っていたような気がする。>>2:180
今、ここにある自分でいることに耐えられない。 ありのままの自分でいることに耐えられず、 人ならざる力を求めずにはいられない。
人の心の弱さとは、そういうことなのではないのだろうか。]
(97) 2016/04/28(Thu) 23時半頃
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[名前を呼ばれる>>90 顔を上げれば、一度で決めろという丁助の声。]
……うん。
[刀を構える。 その腕が震えるのは、決して怪我のせいばかりではないことは自分でもわかっていた。]
…。
[呼吸を整えて、再び柄を握り直す。 ……もう、腕は震えてはいなかった。]
[彼と目を見合わせて、彼が覚悟を決めたのを見てから。 ―――手にした刀を振り下ろした**]
(98) 2016/04/28(Thu) 23時半頃
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……俺はお前が嫌いだったんだよ。
[その剣閃は違わず、死に至るだろう。]
……いつもいつも卑屈そうな顔しやがって。
[静かに言葉をつづける。]
……だけど、今の顔は中々良かったぜ。
……置壱、男ってやつはやっぱそうでなきゃいけねぇよ。
なぁ、辰、日向……そう思うだろ?
(99) 2016/04/28(Thu) 23時半頃
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───ちきしょう、やっぱ痛ぇな。
(100) 2016/04/28(Thu) 23時半頃
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災いは何度でもやってくる。
それを覆い隠し忘れるならばいつか大きな災厄となる。
人の子らよ、それを避けたいと思うなら目を背けるな。
───また会おう。
(*5) 2016/04/28(Thu) 23時半頃
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[ふらりと倒れると、二度と目を開けることはなかった。]**
(101) 2016/04/28(Thu) 23時半頃
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丁助……丁助!!!
[ 覚悟なんてとっくにしていた。 でも、こんなときに限って都合のいいことを考える。
依り代となった人間は解放され 巫女だけが、還っていくだとか、そんな。
倒れ伏した彼のそばに駆け寄って、 置壱と、丁助を交互に、見て]
……そうだねえ
[ 潤む眸のまま、素直に、置壱の貌が立派であったと、 丁助の最後の問いに、頷いた。*]
(102) 2016/04/29(Fri) 00時頃
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[丁助が置壱を呼び、置壱がそれに応じる。 目を逸らす事はしなかった。
見届けるのは、語り部の一族の務め、と。
そんな意識もどこかにあって]
……ああ。そーだな。
[求められた同意には、ひとつ、頷いて]
…………お前と意見があうとか。 何年ぶりだよ……ったく。
[ぼやくような口調で、そう言って。 は、と大きく息を吐いた。*]
(103) 2016/04/29(Fri) 00時頃
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なーんで、桜は咲いたんだろうなぁ。
[ 怒りはすべて、丁助の死が攫ってしまった。 悲しみはいつか、怒涛のように押し寄せるだろう。]
ほんとうは、咲きたかったのかもしれないね。
[ 花は咲くから美しい。]
……うん。
[ 咲かず桜はきっと、寂しかったのだろうね、と。>>97]
(104) 2016/04/29(Fri) 00時頃
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[ はらはら、はらはらと 桜の雪は村中に降り注ぐだろう。
流れた鮮血を白く染め、 冬が来て閉ざした部屋の中で 暖め合うような光景を、想い。
いつか麗らかな春が、また 訪れることを、予兆するように**]
(105) 2016/04/29(Fri) 00時頃
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