191 忘却の箱
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あ…
[スイトピーは忘れていなかったが 本を置き忘れたらしく 廊下を歩いているうちに気がつき踵を返す
再び、診察室に戻っていくと 強くなった花の香りと 淀みないサミュエルの言葉が>>71>>72]
…あの、本を…取りに
[他に言葉が出ず、気まずい空気が流れていた*]
(87) 2014/09/06(Sat) 16時頃
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…そう、だっけ。 なら、あんたの薔薇にも棘があるのかな。
[首を傾げつつ、呟く。 自分の右手にある紅鳶と少しい色合いが似ているような気もしたけれど、その薔薇の花を綺麗だとは思わなかった、が。]
夏の花なんだ。あんたはよく覚えてるね。 ……へえ、所謂雪国ってやつなのか。…多分、植物園や宮殿なんか行ったことない。
[白い肌を彩る真っ赤な花。 故郷を語る彼女の装いを見て、一言。]
──あんたみたい。
[温室で咲き誇る薔薇を咲かせた彼女に、小さく呟いた。]
(88) 2014/09/06(Sat) 16時頃
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[彼女の言葉>>84から“先生”の名を知ることはなかった。 だが、それに落胆する素振りは見せず。]
…そう。なら、その花好きな先生にこれ、あげようかな。
[右手にあるやや萎れた紅鳶を眺めて呟いた。]
(89) 2014/09/06(Sat) 16時頃
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[怪我人として診察室に入れば、一人の白衣の男の姿>>69 問いかけに対しての答えには頷く。
その後身体を横たえつつ、女性の声>>86を耳にしたのなら。]
………また。
[花の匂いが蔓延る小さな箱の中で、いつになるか分からない挨拶を彼女へと送った。 結局紅鳶は、鴇色と同じく右手で花弁を散らしつつも、命を落とすことはなく──*]
(90) 2014/09/06(Sat) 16時頃
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お針子 ジリヤは、メモを貼った。
2014/09/06(Sat) 16時頃
お針子 ジリヤは、メモを貼った。
2014/09/06(Sat) 16時頃
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[それ>>90を皮肉だと。 歯が唇に食い込む。だが依然として痛みを感じることはなく。 そもそも痛みとは何なのだろう。 色とりどりの花が頭へ、胸元へ、手のひらへ根を下ろす身体。 一つずつ吸い取られる何かが何なのか、やはり分からず。
戸惑うまま、吐露した言葉>>71>>72
扉は引き戸だったか。スライド式だったか。それは分からずとも、ふわりの薔薇の香り>>87を感じれば]
──……ッ!
[一度だけ、確かに顔をハッキリと歪めた。 空は今も尚、綺麗な青で──]
花が、咲いて る。
[視線は、足首。飴色の蕾。頭の中の音楽がプツリと、消えた。]
(91) 2014/09/06(Sat) 16時頃
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-診療室-
[自らの生死を問いかける彼の言葉>>71に、躊躇する。
勿忘草病の患者は、厳密には死なない。 徐々にその体は植物となり、最後にはこちらと会話することができなくなるのだ。 ただ―――]
―――どうだろうね。死ぬ、ことはないと思う。
[―――植物になってからも意識があるのかどうか。 研究者たちが必死に調べてもその答えは見つからなかったのだ。]
少し、しみるかもしれない。
[傷口から見える根を取り除こうとはせず、そのまま消毒を行い、ガーゼを当て。]
(92) 2014/09/06(Sat) 16時半頃
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[部屋に忘れ物を取りに、の言葉>>72には少し皮肉めいた笑いが含まれていた。
男は少しだけ逡巡した。 彼の人としての終わりは近いかもしれない。 サナトリウムの医師として、本人が望むことをできるだけ―――
――後ろで微かに扉が開く音がして、肩ごしの誰かを見つめたサミュエルの顔が歪んだ。
足首に現れた蕾。]
(93) 2014/09/06(Sat) 16時半頃
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[セシルが告げる名前>>41と、その視線の先の人物のシャツに書かれた名。]
ズリエル…。 そっか、じゃあセシルはもうあのひとのこと知ってるんだ。
そうだよね!喜んでくれるよね。 えへへ、楽しみ!
―――うん。セシルが……お兄ちゃんがそう言うなら、安心!
[撫でられて>>45くすぐったそうに目を細める。 『お兄ちゃん』と言葉に出すのはまだ少し恥ずかしい。 彼が自分の兄だと、知らされたときの驚きと、喜び。
―――よく、『憶えて』いる]
(94) 2014/09/06(Sat) 16時半頃
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[…と。視線の先の相手が頭を下げた>>82のが見えて。 顔いっぱいの笑顔で応える。 きらきら、という音が似合うような顔で]
やっぱりいいひとみたい。 じゃあ、行ってくるね、セ…お兄ちゃん。
[そう言って、とてとてと、大男の元へと向かう。]
はじめまして!だよね。「ズリエル」さん! あたし、ペラジーっていうんだ。 シーシャにね、あたらしくきたひとがいるって聞いて、 仲良くしたいなーって思って!
[ほがらかなあいさつ。…ほんのすこしだけ、大男の容姿に恐れは持ったけれど。いいひとという確信があるから、屈託なく*]
(95) 2014/09/06(Sat) 16時半頃
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―――部屋に行こうか。
[そう言って、彼が動けるようならば体を起こすのを助け、そうでなければ彼の体を抱える。
彼の最期まで残っている記憶。 忘れ物。 薔薇の香り。
振り返り、ジリヤには優しく微笑む。
目の前の彼の失いかけているその糸を少しだけ手繰るように。*]
(96) 2014/09/06(Sat) 16時半頃
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バーカ。将来どうこうじゃねえよ、ヒリヒリすんだろフツウに。
[寝起きじみたもごもごとした返答を鼻で笑って非難。その内容は間違いなく心配なのに、本人にその自覚は全く無い。
ついで、伸ばした手の人差し指の背で、隣に座るクリスの頬をそろりと撫でた。日に当たっていた肌は、少し火照って熱い。 もう、大丈夫?問われる声に目を細めて>>81。その柔らかな空気に、強がる気も削がれてしまう。]
さァ? ……もうとっくに、駄目かもな。
[言って、立ち上がった。 暗い瞳が揺れる。何故だろう。何故こんな、やさしい、普通の、やさしい人が。自ら幸せを棄てなければいけなかったんだろう。
ごほ、と咳をして、クリスから目を逸らす。 穏やかな哀しみが滲んで、目頭が眩む。そうしてまた、短い咳。またあとでな。お決まりの挨拶で、歩き出した。
その足跡に、はらはらと散る、白い花びらを残して。]
(97) 2014/09/06(Sat) 17時頃
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[日の差した様に顔いっぱい、輝かせて笑った少女がこちらへ歩み寄って、来る。 あぁ、と反射的に顔を隠そうとしたが、傍に寄っても朗らかなままの声。タオルに伸ばした手が空を切った。]
シーシャ…さ………
[少女が口にした名前のリズムが、さっ、と意識を内側に戻せば、痩せた男がミシンケースの向こう側からひょいと、顔を出す]
…シーシャさんの、お友達さん? は、はい…そう、初めまして、で、ズリエルです。 仲良…え?
[屈託の無い笑み、色素の濃い肌に浮かぶ嬉しそうな––––肌の、色… ……以前、臓から発生した莟が咲き破った、腹の縫合痕。 それが微かにつっぱった感覚。新たな花が咲いた感覚では、無い。ご飯食べたせいかな、と感覚を誤摩化す様に軽く掌で払う]
仲良くって…えーっと、どうすればいいん、だろ?
[背丈も年齢もかなり離れている少女を相手におどおどとする大男。 思わず足下に下がった目線は、靴に焦点を定める前に、胸元に揺れる漆黒の花を微かに映した。]
(98) 2014/09/06(Sat) 17時半頃
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[窓から見える空は抜けるように青い まるで、彼の頭に咲く花のように
自分を見る花の主の顔が歪み>>91 刹那、ビクッとする
続く言葉と彼の視線を追うと その足首に飴色をした新たな蕾が現れていた]
(99) 2014/09/06(Sat) 20時頃
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[おともだち。その言葉>>98ににっこりと、頷く。]
なかよくするのは、ねー。 いっしょにいて、お話ししたり、…そう!
[戸惑う大男をよそに、ごそごそと、ポケットから幾つかの飴を取り出す。黄色いのが幾つか。その中に青い飴玉がひとつ。 両手に乗せて、ズリエルの前に差し出す。]
これ、シーシャにもらったんだよー。 これいっしょに食べたら仲良くなれるって! …いっしょにたべよう!
[笑顔のまま。ずい、と手で作った皿を上げる。少しでも取りやすいようにと]
(100) 2014/09/06(Sat) 20時頃
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…まだ、咲いてない…咲き切っていない
[彼はその花と引き換えに何を喪いつつあるのか 花が増えてゆく毎に、ひとつ、またひとつ 宿主の持つ記憶の欠片が肥やしになる
医師やスタッフ以外、自分やここにいる彼らは みんなそういう病に冒されている
そう聞かされたのはいつだったか?
話を聞けば、末路を自分は知っている それを知ったのはいつだっただろうか?
思い出そうとすると、やはり記憶は どこか霞がかったように、ぼんやりとして 思い出すのは叶わなかったが、確信だけはあった]
(101) 2014/09/06(Sat) 20時頃
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[スティーブンはサミュエルと共に サミュエルの部屋へ行くらしい
診察室の片隅に忘れられてた本を見つけ それを抱えながら、診察室を出た
どこへ行こう? 部屋へ戻る気分には、なれず
さりとて、こちらへほほ笑む医師の表情は どこか硬く見え、ついて行くのは憚られた]
(102) 2014/09/06(Sat) 21時頃
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お針子 ジリヤは、メモを貼った。
2014/09/06(Sat) 21時頃
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…御機嫌よう
[すれ違う老人に>>78声をかけてから その周りに淡く色づいた雪片のような花弁が ちらほら舞っているのを見つけ、顔を曇らせた
咲いては散り、散っては舞う花弁は リノリウムの床と混ざるはずもなく降り積もる]
…雪の女王様
[記憶の中の彼女とは全く違うはずなのに 思い出されて仕方がないのは何故だろう? 自分のつぶやいた言葉に首を傾げてから 窓から見える中庭に視線を移した
白い風が吹き、色とりどりの花たちは ふるりふるりと揺れている──ものいいた気に*]
(103) 2014/09/06(Sat) 21時半頃
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[眼球に映った漆黒は、すぐに少女のりょうてのひらに遮られる。カサリと音を立てる、飴の包み。黄色幾つか、青ひとつ。]
…くれるの?
[差し出された鮮やかな色。仲良くなるとは飴を食べる事だっただろうか? 飴とペラジーを交互に見る。笑顔、飴…]
…うん、そう…だね、一緒に。 ありがとう。じゃあ…お友達さん、に。
[瞼の裏。手摺りの無い広い滑り台の上。飴を斜面に置いて笑う、誰か。 そうだ、飴といったら、約束…だったっけ。 笑みを絶やさない少女には、何処にも厭な雰囲気は無いが、ほんの少し、足と足が離れているのは。やっぱり、怖いのかな。でも、仲良くなりたい、と。飴を差し出して。 …礼を言って一度繋いでいた手を離し、黄色い一粒を少女の掌からつまみ取った。 一緒に、と言うならペラジーも包みの一つを開いただろうか。 座ったままの目線は少女と余り大きな高低差は無い。]
……頂きます。
[ぱつり。こちらも包み紙を開き、中の半透明の黄色を、口に含み––––––……]
(104) 2014/09/06(Sat) 21時半頃
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––––––––––––ぃ、ッッ、かふっ!?
[…尾の先に火を付けられた鼠の様な、 甲高くも声にならない悲鳴が–––––抑えられた口の中から漏れた。]
(105) 2014/09/06(Sat) 21時半頃
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― 自室 ―>>1:92
――…おや?
[何をしに部屋の外に出たのか。 忘れてしまったままのんびり散歩を終えて、慣れ親しんだ画材の匂いのする自室の入り口をくぐれば。 イーゼルの端に挟まった紙の切れ端が、目に留まった。
出る前に挟んだのだろうか。 覚えのないことにも深く考えないまま手を伸ばし、走る文字を見てふっと目尻に皺を寄せた。]
(106) 2014/09/06(Sat) 22時頃
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洒落たお誘いだ。 これはセシルの坊やか。
……紫のブーケね、 坊やの花はどんな紫色をしているのだったかな。
[薄い色、明るい色、濃い色、暗い色。 一言で紫色と言っても様々だ。 メモを置けば、描きかけのキャンバスから一枚を取り出す。 日当たりのいい屋上で描きかけていた、一枚を。
椅子に腰かけ、乾いたパレットを水を付けた筆で湿らせる。 彼の紫色を想像しながら、キャンバスへ紫色を咲かせていく。]
(107) 2014/09/06(Sat) 22時頃
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[男がこの箱庭に来ての時間は忘れるほどに長い。 実際、咲いた花の数だけ忘れているのだけれども。
最初こそ右の枯れ木に巻きつく蔓に、時折咲く花。 それはここに来る前の記憶だったり。 ここに来てからの出会いの記憶だったり。
ヒラリ、ヒラリ。
繰り返し、繰り返し。 咲き綻び、舞い落ちる度に忘れる光景を見てきた。
忘れられてしまい、鈍く傷んでいた胸も。 忘れてしまったことを嘆き、やりきれず物に当たっていた憤りも。 それら全てを筆に乗せるようになったのは、いつのことか。]
(108) 2014/09/06(Sat) 22時頃
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[忘れたくないことを、書き記す者。写真に映す者。 方法は様々なそれが、己にとっては絵だった。 ただそれに過ぎない行為。
未完成の絵が多いのは。 出会いの一つ一つを描いているからで。
未完成の絵のままなのは。 途中で花となってしまったから。]
(109) 2014/09/06(Sat) 22時頃
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[くすぐったそうにするペラジーはとても可愛らしくて。>>94 その姿に心和まされ、
――しかし兄と返されれば、笑みながらも瞳を伏せる。 肌の色も、瞳の色も違うのに。それでも彼女は、信じてしまう。]
(110) 2014/09/06(Sat) 22時頃
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[…何が、きっかけだったろう。 ふとした弾みに、ほんの出来心で。
――驚き、喜ぶ彼女の顔を見て、これは悪くない嘘だと思った。
苦しい、不幸な過去を忘れて、 新しい、幸せな未来を生きる。
だから、これは善い嘘だと思った。 彼女の嬉しそうな笑顔が、自身の心も温かなもので満たしていく。
……嗚呼、でも。 その心の本当の姿は。 罪悪感を振り払おうとする、偽善に満ちたものだったけれど。]
(111) 2014/09/06(Sat) 22時頃
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いってらっしゃい、ペラジー。 あとで、彼とどんな話をしたか聞かせて欲しいな。
[楽しげな”妹”の後ろ姿と>>95、その先にいる人物達にゆるく手を振って。 飲み干したココアのカップを返却し、中庭へ向かった。]*
(112) 2014/09/06(Sat) 22時頃
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マーチェ? …居ますか、マーチェ?
[部屋にも食堂にもいなかった彼を探して。 書庫に行っている間に、自室に戻ってしまったのだろうか。 どうやら中庭にも、彼の姿はなかった。
代わりに見つけたのは、クリス。 ほんの思い付きで、誘いをかけた。]
やぁ、クリス。良い天気だね。 何処かでマーチェを見なかったかい? 僕の絵を、描いてもらおうと思うんだけど。
…君もどう?一緒に、さ。
[たとえ彼女にツンケンされてたとしても、気に留めた風もなく。]*
(113) 2014/09/06(Sat) 22時頃
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─診察室>>87の前─
[──勿忘草病。 その名を実際に耳にしたのはいつ頃だったか。 人の記憶を糧にして咲き誇る花々。
“私を忘れないで” 頬に伝うしょっぱいもの。 割れたフィルム。 千切られた紙片。 割れる騒音。
断続的な記憶が突如として膨らむのは、種がまだ足首に植えられる前。]
死ぬ、ことは…ない?
[医師の言葉>>92を繰り返す。 このサナトリウムに入る前から聞かされていたかもしれない話。 だというのに男には、初めて聞いた。そんな響きを持っていて。]
(114) 2014/09/06(Sat) 22時頃
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……植物人間、みたいなもん、か。
[脳裏に描かれたのは、虫に食われた穴だらけの花。 生きているのに、生きていない。 抜け殻のような自分。 想像すると鋭い吐き気が催される。痛みなど、抜け落ちていたと思っていたのに。身体が、鉛のように重たくて、仕方が無い。
だが、傷口に施される治療は、医師の言葉とは裏腹にやはりちっとも痛みなど感じることはなく。
扉が再び開けられる>>87その時まで。 気怠い身体に浅い息を繰り返していただろう。*]
(115) 2014/09/06(Sat) 22時頃
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[新たに芽吹こうとしている蕾。
──次は何が無くなる?
膨らむ直後にあらゆる記憶が薄っすらと頭の中で思い出されるのは、そのことを忘れてしまうから、なのだろうか。
ならば次に失う記憶は、きっと。]
──…ッ!
[目の前が暗くなった。 彼女の言葉>>101を耳にするまでは。]
(116) 2014/09/06(Sat) 22時頃
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