233 逢魔時の喫茶店
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…消えてしまうよ [消えるなと願ってくれる人は] [どこにもいなかった]
[永らえて来たのは誰かの契約のため。 悪魔と名指されてからは、人間達の破滅を縫い繋げて、その上を。 苦しかった。魔物は人間を愛していた。
遠ざけられた紫がたぷん、と揺れて、 毒だったものは口の中で甘く後を引く甘露になる。 代わりに差し出された赤は最初からずっと甘い、甘い、毒のない酒精]
(48) 2015/08/12(Wed) 07時半頃
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[黄金の眼差しが鈍い光を放つ。 淡いセピアの瞳を覗き込んで、笑む唇に言葉を乗せた]
……楽にしてあげる
お前が望んでくれるならば 私はなんでもできるのだから
[本当になんでも、と繰り返し、 赤のポートワインを口に含む。 世界の違う二種の酒は舌の上で境界を失い、甘く溶け合った]
…お前の、為し得たい望みはなんだ
(49) 2015/08/12(Wed) 08時頃
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[ずっと、見ていた。 彼の色を。悲しみに鬱ぐ胸を。
大好きだった友との約束は、愛故に去った者の残した傷が、朽ちるまで 血流す心が、苦くとも乾いて穏やかなセピア色になるまで。 その荒野に、花は咲いているから]
代償、は お前に… [くちづけを] [抱きたい][抱かれたい] [その魂に] …触れたい
[悪魔に悲劇を望まないで欲しい。 悲劇が悪魔を悪魔にする。
ホレーショーの口にする願い事がなんであれ、 キスをしようと、直截に 囁いた**]
(50) 2015/08/12(Wed) 08時頃
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俺の、望みは――、
[抱いて][抱き寄せて][抱きたい] [何処へも行かないで][傍にいて] [触れて][触れたい] [くちづけて]
[まるで捕らえられたかのように、彼から目がそらせない。 …いや、逃げる事を忘れたのは自分の方か。 君が何であれ、俺は何処にも行きやしない。
抱く望みは数え切れない程。だが、その中でも最も欲しいのは、]
[愛して] [愛したい] [愛したいのに]
[花言葉と同じよう、一部のヒトの酒にも意味を持つ物が居る。 ポートワインは『愛の告白』と、その甘い赤をたゆたせて。]
(51) 2015/08/12(Wed) 12時半頃
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[応えたいんだ] [愛したいんだ]
[ああ、胸が張り裂けんばかりに溢れるこの熱は、苦しみは、かつて忘れた物だった。 俺はこの名前を知っていた。 知っていたけれど、もう知らない。 生憎自分は忘れてしまったから、けれど、君は何でもできるんだろう。
代償は何でも、好きな物を。 君にだったら、心も身体も、魂さえも、全て捧げたって構いやしない。]
[――教えて]
(52) 2015/08/12(Wed) 12時半頃
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…君を愛する方法を、教えて欲しい。
[空っぽの言葉なんて、もう、口にしたくないから。 君に愛してると言いたいんだ。]
[教えて]
[夜の店に探す影は、かつて愛したあの死神。 しかし居なくなってからも、帰ってこないと分かってからも、探す事はやめられなかった。
無意識に探していたのは、君の姿。]
[教えて] [この荒野に咲く、花の事を] [きみの胸に咲く、花の色を]
[囁く声を耳に、彼の金に呑まれていく。]
(53) 2015/08/12(Wed) 12時半頃
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[手に取ったリキュールから香ったのは、甘いチョコレートの香り。
銀のシェイカーに注ぐのは色の無いホワイトカカオリキュールと、鮮やかな緑をしたミントリキュール。 それと真白な生クリームを加えれば、 淡いグリーンをしたグラスホッパーのカクテルが仕上がるだろう。
香ばしいチョコレートと爽やかなミントで構成される風味は、チョコミント。 小さめのカクテルグラスに注ぎ入れると、甘味をこのむ客の前へ、鮮やかな色彩を運んだ。]
(*8) 2015/08/12(Wed) 14時頃
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そう…… ありがとう
[悪魔は笑みを消した。 触れたいと望むまま頬へ、唇へ、喉元へ指を乗せる]
……… 人間が愛する方法は私には、わからない
[迷い惑い、激しく揺れて時に憎悪にすら転じる、狂気を孕んで火花のようにうつくしい人間たちの愛は、わからない]
だから私がお前に教えられるのは、私の愛
[自分の愛し方が人間のそれに似ているのか、ずっとわからないまま]
この契約を交わせばお前はまた一つ 神の赦しを失うだろう。 罪深いものへ近づけば堕ちていく
[そんなものはいらないと《魔術師》は言う。 心も体も、魂さえも、すべて捧げたって構いやしないと]
(54) 2015/08/12(Wed) 17時頃
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[惹きつけられる。 この心も体も魂さえ、喰らい尽くして我がものにしたなら。 執着を形にする幻想、 一輪だけ混じったリナリアの花は、滲み出した本心の一部だったけれど、
ひどく穏やかに、ほろりと灰が崩れるように、トワイライトの輪郭が闇に溶ける]
ずっと…愛して欲しかった 望んでくれるならキスをしよう その魂に
[偽の夜に包まれた厨房で鬱金の双眸が瞬き、 悪魔は魔術師を壊れ物のように抱き寄せた]
(55) 2015/08/12(Wed) 17時頃
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私の知る愛ならば、こう
[眼瞼へ接吻を落とす]
……お前の眼は澄んで私たちを見通す 耳は聡くなり私たちを聞く
[耳朶へ囁いた口付けは胸の中央へ辿って印を捺す]
お前の心は開かれて、咲く花を自ら知る
お前の魂からは泉のように 私の真名が溢れ出し──
[そして唇へ戻って、微笑んだ]
そしてお前の口は私の名を呼び、私に触れる その熱はもはや苦しみではなくなり、ただ──
(56) 2015/08/12(Wed) 17時半頃
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… 愛している
[重ねた唇は二つの体温と存在を溶かし、『愛の告白』の甘い赤の味がした。
悪魔にしては可愛らしい口付けだったと、今度は笑われない。 契約の為ではなく、捧ぐ愛を示し誓うために、深くまじわる契り*]
(57) 2015/08/12(Wed) 17時半頃
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[君に捧げる心が欲しい] [君に捧げる愛が欲しい]
[堕ちたって構いやしない。 ヒトの信仰する神との決別なんて、当の昔に済んでいた。 死神を愛した時から、悪魔を愛した時から。 店に立ち、昼から夕暮れに立場を変えた時から、傲慢なヒトの為の神の寵愛など、信じる気は無くなっていた。
日の落ち始めた黄昏では、家々の影は長く、深い。 ほんの少し歩を進めるか、影の中に入り込むか。それはきっと些細な違いなのだろう。 それに君が居てくれるというのなら、何処だって構いやしないのだ。
そして、黄昏色は静かに闇に沈む。 深い夜の中他に人影はなく、優しく抱き寄せる彼の背へ、離れぬようそっと腕をまわした。
目へ、耳へ、胸へ。 下降する唇と甘い囁きに時折身を震わせて、指は彼の上着に浅い皺を刻む。 前開きのシャツは何時の間にか肌蹴ていたか。 その顔にほんの少しの羞恥を浮かべても、目をそらす事も、手を離す事もしなかっただろう。 熱の灯る胸にまた新たな熱を注がれて、しかしもう、苦しくは無い。]
(58) 2015/08/12(Wed) 21時半頃
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…ん、 [愛している]
[その言葉も吐息も深い口付けに溶けて、一先ずは漏れ出た音を返事としようか。 今はただ君が欲しく、酒に酔うよう、溺れてしまいたかったから、
目を、閉じた。]
[もっと][欲しい] [触れたい][触れて欲しい] [抱いて][全てが欲しい] [満たして][もっと]
[もっと、]
[欲は尽きない。 君が消えてしまわないよう、俺は、何度だって願ってやれるだろう。 契りと共に永遠に。
日は昇る。だが店内は夜のまま、まるで時が止まったかのように、闇が二人を包んでいた。*]
(59) 2015/08/12(Wed) 21時半頃
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[そして、]
(60) 2015/08/12(Wed) 21時半頃
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― ??? ―
[それは、何時だったか。 白い小さなメッセージカードに記したのはこの店の名前と、時刻を表す小さな数字。
オレンジ色のインクで綴られたそれは、]
(61) 2015/08/12(Wed) 21時半頃
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[ cafe & bar ] [ ≪ Twilight ≫ ] [ 24:00~5:00 ]
(62) 2015/08/12(Wed) 21時半頃
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[それは昼間の常連へ、人間の客へ渡すため。 彼はきっと口が堅いだろうから招いても問題ないと、渡すのは自分か、それとも手の空いた店員か。 するのはきっと、何時か彼が聞いた、不思議な話>>2:154の答え合わせ。*]
(63) 2015/08/12(Wed) 21時半頃
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