25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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― 深夜→翌朝へ ― [短い髪に触れるなにかに、薄らと意識が戻る。 回廊では使用人の声 高嶺の花がふたつ剪定されたと、それはもうキマリごとのように。噂は常に尾ひれをつけて広まっていく]
嗚呼……
[小さく呻いた。 撒いた敷布に吸い取られて、それはイアンまで届かない。 絶妙のタイミングでまた頭を撫ぜられ、ゆっくりと瞳を閉じた]
(498) 2010/08/04(Wed) 09時頃
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子供の居る場所など、何処にも無いじゃないか
[遠い昔の記憶。 親は子を持つ年とは思えぬ美しさで けれどあの人は花ではなかった 仕切りなど無い一つ間取りの小屋 夜毎違う男を招いて囀る彼の声を覚えている]
――いっそボクも安宿でなら、芸など無くても…… 嗚呼、どうして花になれなんて謂われたのか
[鳴き声はやがて止まり 寝付けずに居た少年の傍へ、残り香と共に舞い降りて あの唄を歌ってくれたものだ]
誰が雛鳥を……殺したの
[夜は明ける 人知れず蕾をはらんでいた花が一つ*散った*]
(500) 2010/08/04(Wed) 09時頃
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[そして散った花のあとに咲くのは 生あるものを惑わせからめとる、毒の花]
我こそ 巷に流れる噂の花
月夜に、艶やかに咲き誇る――私の名はイビセラ。
愚かな駒鳥は、もう要らぬ**
(*36) 2010/08/04(Wed) 09時頃
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永遠など……生有るものには訪れぬ
[宵待月冴える夜 薄い笑み零し、聞こえた音を拾うは 泡沫に消え行く名も無き花でなく]
死と生が、我等が力 そうでしょう
(*38) 2010/08/04(Wed) 11時頃
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満月の前夜の小望月――…子持月 ……臨月は訪れた
明日はお目見え出来ようか この声届く貴方方に**
(*39) 2010/08/04(Wed) 11時頃
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― 朝/表座敷 ― [座敷に差し込む光は、障子を通し柔らかく 薄らと持ち上げた瞼 冬色をした眼で間近の温もりを見遣る]
大きな……狗。
[瞳を細め、薄く笑みをひいた。 丸まっていた敷布は白。 広げ、其の上に皺のついた服のまま寝そべった。 他人に触れる事を嫌っていた指が、隣に眠る彼の髪へと伸びる。 頭の形をなぞり、確かめるような仕草 愛撫のような手つきで同じほどに短い髪を掻き乱すと、ゆっくり身を起こした]
(520) 2010/08/04(Wed) 12時半頃
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― 本邸/表座敷 ―
嗚呼……良い目覚めだ 否 是が謂うなら 口調は改めねば
[伸びをして、顔を上げる。 熱の引いた顔には、目元に朱が残っていて けれど返って色を添えていた。 発した声音は凛と 硬いだけでなく含むものを感じさせる]
――誰か、いないかい? 着替えたいんだ。
[少し間を置いてひとを呼んだ。 口調はなるだけ幼く]
(521) 2010/08/04(Wed) 12時半頃
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[目覚めた花は、ふと思い出す]
――…して、晩餐に並ぶは 誰ぞ?
(*42) 2010/08/04(Wed) 13時頃
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喰らいたい……私が?
[短く吐息を零す。 暫しの間]
種を植えるなら、育ててゆけぬものを 喰らうなら、財有るものを
[声の届く二人とは、間逆かもしれず 謡うように節をつけて囁く]
嗚呼 しかし 幼い肉は柔らかく美味と謂う
悩ましい
(*44) 2010/08/04(Wed) 13時頃
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[使用人がやがて運んできたのは、誂えられた眼鏡 矢張りこの姿に良く似合う洋服だった。 袖を通し、身なりを整える。 包帯のした、傷は塞がっているらしく もう朱がにじむ事はなかった。 けれど、立ち上がり戸口へ向かい歩む度に痛みが走る]
昔々――足を得た人魚は 痛みを見せず、射止めんとする者の前で 見事に舞い踊ったと謂うけれど それほどに気を引こうとする姿は ……花に良く似ているね
[イアンは目覚めているのか、いないのか 呟きは何か確かめる風に。 短く息を吐いて、表座敷をあとにした。 朝日を浴びながら、壁伝いに回廊をゆるゆると歩む]
(530) 2010/08/04(Wed) 13時頃
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…――雛鳥は
[からかうような囁き]
さぞ、美味かろうや
(*46) 2010/08/04(Wed) 13時頃
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先ずは前菜 幾つか挟んで漸くメイン デザートは最後にとっておくもの
[さて雛鳥は何処に当てはまるか、と哂い]
ただ…――形式に拘らぬ晩餐であれば 好きなものを好きなだけ 皿を手に歩き回れば良い
[付け加える]
此度の晩餐は……どちら?
(*48) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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喰らうて良いなら、今すぐにでも
[腹の底から込み上げる本能が 急かすように焦らすように蠢いている]
嗚呼……腹が空いた
(*50) 2010/08/04(Wed) 13時半頃
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―→ 庭 ― [先ずたどり着いたのは、ヨアヒムの私室。 出迎えたのは使用人]
シュレーゲルさまは……そう、お食事中ですか。
[青褪めた貌に憂いを乗せて俯く。 用件をと問う使用人に、楽器を一つ貸して欲しいとせがんだ。 許可は直ぐに下りる。 もとより花の為に集められたものだと。 場所を問うて、庭へ下りた。 幾つもの道具を揃えた離れは、裏庭の先]
……
[ふ、と 人影を見つける。 セシルの微笑みと、視線の先にある花主たちの棟。 足を止めてその光景に目を留める]
(534) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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桜の猫は、其処に見えるが 嗚呼でもこれは……若しかしたら
これから、化けるやも。
[冬色の瞳が春を見る]
……私が、徒花と? 面白い
[薄く、哂った]
噂の花を咲かせてみせよう 一夜でなく、この日の下で
(*53) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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[胸を押さえる。 僅かに眉を下げて、もう片方の手が 知らず、新しい眼鏡の蔓を摘む]
些か……眩しい
[朝の日が、庭の草花にも降り注いでいる。 目を伏せた]
(537) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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肉饅頭は肉饅頭を喰らうているよ。
[今しがた伝えられたそれを聞かせ]
余程、執心の様子。 他所に懐いた雛鳥など、もう要らぬ
喰らうにしろ、あれは 人数分も無いようだ
[胸を押さえながら呟く。 テラスからの視線に気付き、つと目を伏せた]
此処ならば、置いてある筈 暫し間を。
流石に私は、ナイフ刺さる痛みに耐えて舞う気は無い故に
(*55) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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[振り切るように顔を上げる。 桜いろの唇が形作る名 眩しそうに瞳を細めたまま、口元に笑みをしいた]
……見ているといい
[囁いたのはセシルへか その先、花主の棟に見える男にか 緩やかな足取りで、離れに向かう 気温も湿度も調節されているらしいその場所に 望みの楽器は在った。
ケースをあけて 木製の楽器と、付属する弓を取り出した。 きぃと鳴らして糸巻きを調節し、庭へと戻る]
(540) 2010/08/04(Wed) 14時頃
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[ゆっくりと向かうのは、風そよぐ庭にまどろむ桜のもと 友人の姿を見遣り、小首を傾いで その鎖骨の上にその弦楽器を乗せ、顎で挟むようにして高く持ち上げる。 弓を手に、すぅとひいた]
――――…
[流れ出る 柔らかくそれでいて繊細な音色は、異国の楽器ならではの音色。 頑なに閉ざしていた冬ではなく 春の到来を告げる曲。
楽器に添えられた指は正確に音を紡ぎだす。 足りなかったはずの色をそこに添えて]
(543) 2010/08/04(Wed) 14時半頃
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― 庭 ―
[足元に伸ばされた人間の、セシルの手を もう避ける必要は無い。 嬉しそうな微笑すら浮かべ、流し見遣る
そこに怯えていた子供の姿は無く ほころんだ蕾は噂どおり見事な花を咲かせてみせた**]
(545) 2010/08/04(Wed) 14時半頃
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噂の主を、その目で見るといい
[艶を抑え、爽やかな春の音色を自在に操る。 小鳥の挨拶も木々の葉が甘く囁くさまも 確かに其処に映し出されていた**]
(*57) 2010/08/04(Wed) 14時半頃
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おや、普通と謂うか
[苦笑を零す]
……朝日の下に相応しい音色を選んだ心算だったが ひとつ、惑わしの歌でも奏でようか
猫を喰らうて欲しいなら
(*59) 2010/08/04(Wed) 16時半頃
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っふ……
[微かな吐息を洩らす]
否
惑わしは、これへ。 流石に……聞かせる相手が夢の中では届かぬやも
[謡う相手が違うと、微かに視線を向け]
元より貴方がこの血に惑うとは思わぬけれど 戯れくらいは、如何?
[唇が笑みを浮かべる]
(*63) 2010/08/04(Wed) 17時頃
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嗚呼、技巧は 物心付いたときより学んだ数だけ、この身にあるが
舞もうたも武芸も―― どれをとっても、風情が無いと師が。
[それ故少年は才が無いと塞ぎ けれど技巧はあったものだから やがて其れは形を変えながら人々の噂に上る。
いま奏でるその曲には情景を浮かべる色がつく。 それでも 誰を想った一芸には有らず]
眠る桜を誘うなら……急く事もあるまい どの道これは、冬を恋うていたのだから
(*64) 2010/08/04(Wed) 17時頃
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花であれば――…技巧はあって当然のもの 凡才と思う定義は其々に
[視線が一度交わる。 温度はどちらも同じ]
嗚呼
意地の悪い
[歪む口元から視線を下げて、頬を染めた。 拗ねた口調で囁いて やがて春のうたは終わりを告げる]
(*66) 2010/08/04(Wed) 17時頃
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― 庭 ― [まどろむセシルの笑みを見下ろし、薄い唇を開く]
……目覚めの歌を子守唄にか 夜があけては仕方の無い事とはいえ
[弦はその間も音を紡ぎ続けていた。 小鳥の囀り 木々の葉が揺れるさま 和楽器には無い音色がひととき庭に華やかないろを添える]
――…
[視線を上げる。 テラスにあった人影が丁度席を立つようだった。 僅かに視線を下げる]
(554) 2010/08/04(Wed) 17時頃
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それでは同じ言葉を。
「その気になれば」魅了に向かおう
[溜息ひとつ。 姿を追う事はしない]
鍵爪で引き裂くなら 背が良いか 腹が良いか
私がこの手にしたいのは
(*68) 2010/08/04(Wed) 17時半頃
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― 庭 ―
[テラスの人影が消えて暫くして 弓を下ろした。 音は夏へ向かわず止まる]
……
[浮かべるのは、苦笑い]
良く、寝てる
[隣に座り、楽器を抱えたまま セシルの柔かな髪に手を伸ばした]
(558) 2010/08/04(Wed) 17時半頃
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……嗚呼、私の言葉は何時も足りぬ
[溜息。 苦笑を零す]
(*70) 2010/08/04(Wed) 17時半頃
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鍵爪で引き裂きたいのは別のもの。 此処に
[視線を投げる姿が 相手から見えるかどうかはさておき]
冬を慕う桜を引き裂くならと。 彼の甘い声を聞くか、悲鳴を聞くか
どちらを手にしようかと。
[冷えた音に、変わらぬ音を紡ぐ]
(*71) 2010/08/04(Wed) 17時半頃
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