60 ─昨夜、薔薇の木の下で。
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……ハハ………
[震えながら、手の甲へ広がりゆく呪いの紋様を見る。 これが自分に相応しい報いなのか。
引きつった頬からは、弱々しい自嘲の笑いしかこぼれない。
追いかけてきた人の気配へ振り向いたときには、首筋を這い上った蔦は頬から右目にまで。]
(419) 2011/08/06(Sat) 23時頃
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……く、
[ギリリと内側を絞め上げるような痛みに、思わず歯を食いしばる。
あぁ、こんな苦痛にさえ、魂は甘美さすら感じているのだ。]
(*22) 2011/08/06(Sat) 23時半頃
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…何で………
[廊下で逢った、ディーンもヤニクも… 何故そんな目で自分を見るのだろう。
思いなんて信じない。恋なんて信じない。 どちらにも、下心が含まれているんだから。]
(424) 2011/08/06(Sat) 23時半頃
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く、……来るな…ッ!!
[手負いの獣のように怯えて、待てとかけられた声へ威嚇する。 右目にまで侵食した蔦を、隠すように手のひらで覆う。]
来ないでくれ、頼むから… これ以上、広げるわけには……
[けれどそれは手遅れだと、もう既に種は蒔かれてしまった。 自分を喰い尽くせば、次に芽吹くのは……]
(427) 2011/08/06(Sat) 23時半頃
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[この場所は、月光の下の色しか知らなかった。 毎夜此処へ呼ばれて来たのは、強要されて怖かったからだけじゃない。
本当は自分でも判っている。 感情を魂を裏切った肉体は、確かに此処での悪夢を求めていたのだと。
ヤニクの姿が見えて、目を伏せて俯いた。]
(430) 2011/08/06(Sat) 23時半頃
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[犯した過ちは、忘れても消えることはない。
明日の事なら、今夜の事なら、いくらでも覆せたけれど。
昨夜の過ちは、もう覆せない。]
……ッ!! [胸の奥をギリリと絞めつける、毒帯びた呪いの荊棘。 思わず胸を押さえて歯を食いしばった。
荒くなる呼吸は、時折漏れる上擦った呻きは、 きっと、行為の時のものにとても似ている。 屈辱も苦痛もどこか甘美と思えるほど、歪んだ魂はどす黒い蔦の色。 ランディの無邪気で愚かな憧れのような、鮮やかな赤い色とは似ても似つかぬ。]
(440) 2011/08/07(Sun) 00時頃
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…触る、なッ!
[頬触れる褐色の指。 その感触に背筋が粟立ち、ぴくんと身を竦ませる。]
近寄るな。関わるな。 …お前には、関係ない……ッ!! [幾度も拒絶するように頭を振って、肩で大きく息をする。]
(444) 2011/08/07(Sun) 00時頃
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[此方を見ているディーンの視線に気づき、 表情は見せたこともないような情けない感じに歪む。
見るなと訴えるように顔を背けて目を閉じた。]
(446) 2011/08/07(Sun) 00時頃
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[傷つき歪んだ魂は、差し伸べられる手のどちらにも縋れない。
疑ってしまう。 その優しさの向こうに、何かが潜んでいる気がして恐ろしいから。
閉ざそうとする心を、覆い隠すように埋め尽くす荊棘の蔦。 変質させてしまったのは、きっと醜い自分の心。]
(448) 2011/08/07(Sun) 00時頃
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………ぅ、っ
[びくんと身を震わせ、蔦模様に彩られた白い喉が反りかえる。 力を失い、崩れ落ちる身体。
魂は囚われ、深い深い眠りへ…]
(455) 2011/08/07(Sun) 00時半頃
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[折れて萎れかけていた薔薇の木が、少し葉の艶を取り戻したのに、 気づいたものは居るだろうか。]
(463) 2011/08/07(Sun) 00時半頃
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[ディーンの腕の中、力無く収まる肉体はもう目を開けない。 心臓だけはまだ、弱々しく鼓動を刻んでいる。]
(467) 2011/08/07(Sun) 00時半頃
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