52 薔薇恋獄
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[ 灯りが消えた、暗闇の中で ]
『逃げて』
『お願い』
[ 搾り出すような、声がする ]
(*0) 2011/05/18(Wed) 00時頃
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日向っ!?
[暗闇のなか、搾り出すような儚い声。 胸の痛みは、一層ひどくなるけれど、何も見えなくて]
(*1) 2011/05/18(Wed) 00時頃
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[まさか。 そんなわけがない。
けれど、胸の痛みは治まらない]
日向、……蛍紫……っ!
(*2) 2011/05/18(Wed) 00時頃
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……何があったんだよ、日向ぁっ!
[彼女の姿が在った場所には、ただ雨粒が打ち付けるだけで。 生きている者は当然、死んだ者の姿も見えず]
(*3) 2011/05/18(Wed) 00時半頃
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[そこだと判ったのは、初めに日向と会った場所だから。]
楓馬……。
[苗字でなく、名を呼んだことは、きっと無意識に。]
(*4) 2011/05/18(Wed) 00時半頃
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……。
[濡れて雫の滴る前髪の下から、虚ろげな眼差しが返る。 けい、と呼ぶのは、喉が引き攣って上手く声にならず、くちびるの形だけ]
(*5) 2011/05/18(Wed) 01時頃
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[虚ろな眼差しに、眉間に皺が寄った。 己は視えて聴こえるだけで、同調はしないから。 だから、彼と日向が抱える苦しみは判らない。]
………すまん。 耀の時も傍にいてやれなくて。 日向のことも…… 切欠は、おそらく暁様とやらなんだろうが。 暁様……とやらの霊は、俺には見えてないから 何がなんだかで。
[起こす為に手を差しのべながら、ぽつりと告げる言の葉。]
(*6) 2011/05/18(Wed) 01時頃
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[蘭香のことも、――日向のことも。 暁様、という誰かのことは分からないが、ゆるゆる首を振った]
……謝るのは、オレ。 居たのに、分かるのに、……何もっ、出来なくて。
(*7) 2011/05/18(Wed) 01時頃
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……どう、しよう?
日向は、誰にも……言えなかったんかな。
[禁断の恋。身分の差。祟りと目されたほどの、想い。 それに比べれば、些細だろう痛み。 けれど気づいてしまえば、抜けない棘のように、その存在を、ちりちりと感じずにはいられなかった]
(*8) 2011/05/18(Wed) 11時半頃
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[おそらくは、耀の家族の霊とは珀も共にあっているだろう。
家が近ければ、真夜中の喧噪にはいやでも気がついたし。 それが耀の家と知れれば、父と母が叩き起こしにきたから。 己が珀を呼びにいったのか、珀が来たのが先だったか、耀の家の近くであったのか。 記憶が混乱していて定かではないけれど……。
3年前、珀は、すでに1人だったろうか。 どちらにしても、2人を護らなければ……と蛍紫が強く思った瞬間。]
(*9) 2011/05/18(Wed) 19時半頃
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―― 3年前 ――
『だって、まだ生きてんだ!』
[真夜中、あかく染まる窓に、ひとり飛び起きて、外へ駆け出した。
蘭香と拓斗の痛みは、伝わってこないから。 ふたりは生きてるって確信してた。 だから、水を被って飛び込もうとした無謀なこどもは、近所のおとなたちに押さえつけられ、何もすることが出来なかった。
彼らの判断は正しい。 こどもひとり、飛び込んだところで、死体がひとつ増えるだけ。
でも。 だけど。
彼らには、『彼』の姿は見えない。 蘭香を残して、揃ってしまった家族の姿は、見えないのだ]
(*10) 2011/05/18(Wed) 22時半頃
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[見えていたら、痛みを感じられていたら。 飛び込まずにいられなかった自分を、止めはしなかっただろうと、何処にもぶつけられない憤りを抱えた自分に、拓斗は。
しっかりしろ、というように額を小突いて。 生前と変わらぬ優しい響きで、弟を頼むと、託していったから。
幼馴染が自分にとって大事だからって理由だけじゃなく、拓斗兄ちゃんの分まで、蘭香を護らなきゃって。 きっと、その想いは蛍紫も一緒だと、交わした眼差しに想った]
(*11) 2011/05/18(Wed) 22時半頃
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暁…… って、誰、なんだ。
[部活の誰かではない。 けれど、日向以外の霊の気配は感じない。
もっとちゃんと、あらましを蛍紫から聞いておけば良かったと、ひとり手を握りこんだ]
(*12) 2011/05/18(Wed) 23時頃
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『こういうときは、俺より珀のが判るかもな……。』
[眼鏡をかけたとて、想いの残滓が見えるかは謎で。 同調する珀の方が……と、思ったり。 あらましきちんと話していないということは、うっかり忘れてしまっている。]
(*13) 2011/05/19(Thu) 00時頃
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麻雀やると、人間分かるって言うヤツが居た気がすっけど……
[じゃらじゃら]
日向、麻雀教えたら、付き合ってくれっかなぁ。
[幼馴染が真面目に調査をしている中。 牌をいじりながら、そんなことを呟いているのだった]
(*14) 2011/05/19(Thu) 00時半頃
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『あー、やはり、判らん。 後で、珀に見て貰った方がいいだろうな、これは。』
[珀が麻雀を愉しんでいる?とは、知らず、視えなかったことに溜息を吐いたりしている。]
(*15) 2011/05/19(Thu) 00時半頃
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……薔薇……、なあ。
[竹の描かれた牌を撫で、ちらりと寧人を見てから] なんか、……?
[もっと濃い薔薇の香りを、誰かから感じたような。 けれど、構わないで欲しい様子に、あまり関われなくて、記憶に留めなかった――]
気のせいか……?
[蘭香がいれば、すぐに分かっただろう答え。 けれど、彼も、本人と対峙している蛍紫もいない自分には、当分思い当たりそうになかった*]
(*16) 2011/05/19(Thu) 01時頃
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[ それは薔薇の一つ一つに魂が宿るから ]
[ 誰のものとは判別し難い、無数の死魂 ]
[ この地で死した、誰かの思いの残滓達 ]
[ それらが今、薔薇に輝きを与えていた ]
[ その魂たちは、今はまだ何も語らない ]
(*17) 2011/05/19(Thu) 06時半頃
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[ 屋敷を追われ辿り着いたところ ] [ そこは一本の大木のうろだった ] [ わたしは全てから逃れるように ] [ その中へと入って身をひそめた ]
(*18) 2011/05/19(Thu) 06時半頃
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[ わたしはその中で孤独に泣いた ] [ 暗く沈む闇に希望はもう無くて ] [ そのままわたしはそこで死んだ ] [ でもあの方のこと信じていたの ]
(*19) 2011/05/19(Thu) 06時半頃
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[ 暁様が再びの逢瀬を望むならば ] [ 有明けの空にわたしは黄泉帰り ] [ ともに愛でた薔薇の姿になって ] [ 二人の時間を紡いでいけたのに ]
(*20) 2011/05/19(Thu) 06時半頃
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[ あの方の隣にはうつくしい女性 ] [ そのままわたしを忘れて幸せに ] [ どうか幸せになってくれますか ] [ 嗚呼なんで幸せになるのですか ]
(*21) 2011/05/19(Thu) 06時半頃
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[ *あなたわたしをみすてましたか* ]
(*22) 2011/05/19(Thu) 06時半頃
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[ツキリとまるで薔薇の棘に刺されたような、痛みを胸に覚える。]
……俺は、珀と違って同調はしない筈なんだがな。 波長の問題だろうか。
[その痛みを、幾多の魂の想いの残滓とすり替えて、ポツリと呟いた。]
(*23) 2011/05/19(Thu) 09時頃
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……に、しても……
[じりじわじりり。 肌が焼けるような、痛み。 生きている人間のそばに居る時は気にせずにいられる程度だが、ひとり廊下へ出れば、少しでも距離をとろうとするかのように、壁際へ寄ってしまう]
……薔薇の方から、だよなあ。やっぱ。
[何を語りかけてこられる訳でもない。 ただ、無数の想いの欠片を、体質が感じ取ってしまうだけ]
(*24) 2011/05/19(Thu) 10時半頃
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日向っ!
(*25) 2011/05/19(Thu) 10時半頃
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[たしかに、痛みも感じたのに。 そこに居たのは日向ではなく。
庭の近いせいだと、自分に言い訳することもなく、ただ、静かに諦めの溜息を吐き]
……まだ濡れてたか?
[掃除は自分に任せた筈なのに、と言外に問う響きで、首を傾げた]
(*26) 2011/05/19(Thu) 10時半頃
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[1度目、日向を迎え入れた時の雫は珀が拭いたことは知っている。 2度目、日向が化け物に変わった後、珀が気を失って後の事は知らない。
拭かれていたならば、珀が拭いたのか……と。その言葉に思う。
大丈夫か?と視線で問うのは、幾多の薔薇に宿る想いが視えるから。 その1つ1つに同調してしまえば、身がもたなそうだと。]
(*27) 2011/05/19(Thu) 10時半頃
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あの中に飛び込みたいかっつーと、お断りだけど。 んな無謀はしねぇし、ひとと居る時はわりと、平気。
[とはいえ、必要とあらば飛び込みもするだろうが。 問われる視線に、へらりと笑って、軽く腕を擦った]
それよか、悪ぃ。……ちょっと、へばってて。 お陰でさっぱり何が起きたのか分かんねーから、蛍紫の知ってること、教えてくれ。
(*28) 2011/05/19(Thu) 11時頃
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[蘭香を……と、話を振ったのは、これまでの説明の布石でもあった。
蘭香を選べといったことに対し、珀がどういう反応を示したとしても、ぼそりぼそりと状況の悪さを紡げば、何故そう言ったかは判ってくれるだろうか。
おそらく、雷が鳴る前に中庭に居た誰か――蓮端が濃厚か、が切欠で、日向が化け物に転じてしまったらしいこと。 その誰かは、暁様――怪談の屋敷の息子に、何か関係があるかもしれないこと。 大須の姿が視えないのは、多分、化け物となった日向の所為だろうということ。
己が判る範囲で、伝えられることは伝えた。 出来れば、蓮端に会って確認してみて欲しいとも。]
(*29) 2011/05/19(Thu) 11時頃
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