126 生贄と救済の果てに〜雨尽きぬ廃村・ノア〜
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―ヴェラさん…っ?
[地に伏したヴェラが、右手を氷を纏う蜥蜴に向ける。
自己を生贄とした術は知識としては知っているが、使用したことも目にした事もない。
だから右手に向けられた彼の声が、何を意図してのものであるかは分からず。
けれどそれまで静かだったツェツィーリヤの声が聞こえれば、其方に意識は映った。]
…ツェツィーリヤさん。
[途方もない願いの為に、ヴェスパタインと同じく、自分が瀕死に追いやった魂。
名前を紡いだだけで、それ以上は何も言えない。]
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[ヴェラの最期を認めたくないと言う様に、 見たくないと言う様に雨に消えたイアンの遺骸の あった場所と、脈打つヴェラの右腕に 蜥蜴は無言のまま鉤爪を降ろし、地を蹴った]
…………。
[コリーンの傷も浅くない、もしかしたら生贄の魔法は コリーンに発動するのかもしれない。 魔物の本能的な危機察知か、 それともそれ以外に何か思う事があったのか。
大事な贄になる筈の目の前の餌を捨て、 蜥蜴はその場から走り去った]
(92) 2013/06/20(Thu) 23時頃
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…っ。
何してんだよ、ホレーショーさん…!
[彼の心中が分からない故に、コリーンの乱入が予想外だったのか、という考えに至った。
彼らを置いて走り去るホレーショーに、声を投げかける。]
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腹ガ減っタな。
[色々思い出して嫌になる。
あの女も俺の前に飛び出してきた。 首が無くなる直前の事だ。
魔に堕ちる事を厭わないほど、 堕ちる事を望んだほど大切だった。
殆ど残っていない記憶が冷たい氷の心の奥で疼く]
(93) 2013/06/20(Thu) 23時頃
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[ツェツィーリヤはその名を呼ばれ、微笑む。]
……貴方も、此方にいらしたのですね。
[それは、感情を隠すことを止めた彼女の
何処か寂しげな笑み。]
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―右手と鉤爪の対峙―
[そこで行われたのは、ほんの一瞬の出来事だったのかもしれない。 『生贄』を発動させたヴェラに対し、振り下ろされた氷の魔物の鉤爪>>88。
そして、割って入る誰かの姿>>89。
視界はかすみ、姿はおぼろげではあったけど。 それがコリーンであることは、聞き馴染んだ声で分かった。
馬鹿者。詫びて撫でろ。
鈍った神経伝達を受けて、心の中でそう呟いた。振り下ろされる鉤爪のイメージ。 切り裂かれる自分と群の仲間の姿……]
(94) 2013/06/20(Thu) 23時頃
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[けれど、鉤爪の動きは裂かれる寸前でぴたりと止まった。 近くで霧のように散って行ったのは、なんだったのか。 視界がかすみ、それすらも判別できない。ただ、呼応するように右手が脈打ったように感じ……。
……お前か? 礼を言うぞ。
その脈拍が、かつてよく触れあっていた相手のように感じて。 ただの気のせいだったのかもしれないが、そう思わずにはいられなかった。
先ほど何かが散った場所と共に、右手に撃ち落とされる、氷の鉤爪>>92。 もはや、痛みは特に、感じない。
ただ、宿らせていた『生贄』の力が、その場で消滅していった。 ぬかるみに打ち込まれた右腕は、もう動かない。魔物がどうなったのかも分からない。 ヴェラはただ、持ちあがる力さえないその右手を、ぼんやりと見つめることしかできなかった]
(95) 2013/06/20(Thu) 23時頃
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[背を裂かれるはずの鉤爪は、届かないまま。>>91 ヴェラの後ろ、イアンの遺骸が雨に霧散するのが見えた。]
[氷蜥蜴は、再び私の前から姿を消して。>>92]
ヴェラさん。ごめんなさい。 あの魔物、ホレーショーかもしれないの。 もしも、そうなら。 《生贄》、に……。
[しないで。と、小さく呟くのは。 『傷つけないで』ではなく、《生贄》というのは。 ……その対の意味に、気付くでしょうか。]
(96) 2013/06/20(Thu) 23時頃
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[コリーンの声が聞こえてくる>>96。 話しかけられるということは、当面の危険は去ったと言うことなのだろうか。 あの魔物が、ホレーショーかもしれない。 その言葉はすんなりと受け入れ……続く言葉の意味までは、朦朧としているせいか、ヴェラにはうまく受け止めることができなかった。 ただ、『生贄』という言葉に、伝えなければならない事実を思いだす]
イ、ア
[イアンと、ツェツィーリヤがこの手にいる。 途切れ途切れに発した2人の名前と、無理矢理持ち上げようとした右手の腹で、彼女に意味が通じたかどうかは分からない。 それでも、伝えておかなければならない。 おそらくは……自分も群から離れる時が、近づいてきているのだから]
(97) 2013/06/20(Thu) 23時頃
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……うん。
[ツェツィーリヤは微笑んでいる。
けれど、それは自分が何度か目にしたそれとは違い、何処か寂しそうだと感じた。]
……。
…ごめんな、さい。
[震える声でやっと紡いだのは、謝罪の言葉。]
[生と死の狭間を漂っていた時に聞こえていた魔物の声は、
今もまだツェツィーリヤに聞こえている。
それは、魔法使いの右腕が
魔物に近いものであるからなのだろうか。
或いは、他に理由があるのかもしれない。
聞こえた氷蜥蜴の声に
何処か言い訳のような響きを感じていた。]
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[『詫びて撫でろ』>>94 その言葉が聞こえるわけでは、なかったけれど。 向き合っているその顔が、優しい顔に、見えて。]
ごめんなさい。ごめんなさい……。
[ぼろぼろと零れる涙が、止まらない。 雨が降っていて、良かったと思った。]
(98) 2013/06/20(Thu) 23時頃
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[蜥蜴は考える。 コリーンがいると言う事は ソフィアが失敗したか、殺されたかだ。 もしかしたらもう生贄にして徒労に終わるかもしれないが、 今後の策を練るのに確認も必要かと、 先程戦っていた場所へと走る。
左右の目は忙しなく動きながら警戒を怠らない。
そして見つけたのは隠れていた場所で まだ動いている命の色>>75
とっくに死んで、彼こそ生贄になったと思っていたが。
丁度いい、とばかりに遠慮なく餌にしようと ヤニクに向けて尾を振った]
(99) 2013/06/20(Thu) 23時頃
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[短い沈黙の後にイアンが紡いだ声は震えていて。]
……何を、
謝るのでしょうか?
[返す言葉は、あの時と同じ言葉。]
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イア『ン』?
[持ち上げられた右手、両手で受け止めて。>>97]
無理しないで……。 今、雨を凌げる所に、運ぶから……。
[そう言って、彼をおんぶして運ぼうと。 ヴェラは小柄で、身長も自分の方が少し高い位だし。]
(100) 2013/06/20(Thu) 23時半頃
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[謝るコリーンの声がする。微かに顔をあげて彼女を見やる>>98。 聞こえてくるのは詫びの言葉。 狼であれば、赤い雨の薄まる頬の筋を、舐め取っていたのかもしれないが。 詫びるは……むしろこちらの方だ]
……っ。
[イアンとツェツィーリヤのことが通じたかどうかは分からない。 右手を受け止められ、そのまま運んでくれようとしていることは分かった>>100。 体を動かす力は残っていない。 小柄でも、脱力した体は重かろうと、精一杯首を振ろうとする。 おそらくは、もう長くないことは、自分でもしっかりと理解している。 だから、精一杯の力を込めて、訴えた。「頼、む……」と]
(101) 2013/06/20(Thu) 23時半頃
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[気配]
[見上げれば、迫るは冷たき尾]
[有刺鉄線は花咲くも、間に合わぬ]
(102) 2013/06/20(Thu) 23時半頃
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やだ。やだよ。ヴェラさん。 やだぁ……。
[涙が溢れて、止まらない。]
私、力持ちだから、なんて事ないのよ。 だから、乗ってよ。
やだ。頼まれない。 だから、頑張ってよ。
(103) 2013/06/20(Thu) 23時半頃
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[返される言葉は、生前の彼女が言ったのと同じものだった。]
…だって。
貴女を倒して、生贄にしようとしたでしょう。
[自分の足音を聞きつけて後を追ってきた彼女を、魂を取り込もうと狙った。
もし彼女があの時自分を追わなかったら。
ヴェスパタインの血を服に付けていた彼女に、嫌疑がかかっていたかもしれないけれど。}
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[この場にコリーンもヴェラも、ソフィアもいない。 片目はヤニク>>102を、片目は周囲を警戒していた。
弱った相手1人と判断すれば、 増える多少の傷は覚悟の上で、確実に仕留める事を優先する。 花咲いた有刺鉄線ごと、氷の刃を纏ったまま 尾をヤニクへと振り下ろした]
(104) 2013/06/20(Thu) 23時半頃
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[泣き声が聞こえてくる>>103。ヴェラは困ったようにシュンとなる。 頼みたいこと。それは、『喰って』くれ、と。 私が受け継いできた数々の魂を、かわりに受け継いでやってくれ、と。 そう伝えたかったが、コリーンが泣いているからか、それとも単純に口を動かす筋力が残っていなかったからか。
言葉はこれ以上出てはこなかった。
体が冷えて行くのを感じる。訪れる時が、すぐか先かは分からないが。 こうして看取られるのも悪くはないな、と動かぬ体は彼女に委ねた。 女はいい。温まるし…………などと思いながら、やがては瞼をゆっくりと閉ざしていくことだろう]
(105) 2013/06/20(Thu) 23時半頃
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コリーンは、ヴェラさん……。
2013/06/20(Thu) 23時半頃
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[絡みついた鉄線は、凍り付いて砕け散る]
うぁぁぁぁぁぁ…ッ!!!!!
[悲鳴は届いたか?それとも雨に掻き消されたか] [骨の軋む音、血の凍る音] [せめて逃がさぬ、とツルは足首へと伸びて]
(106) 2013/06/21(Fri) 00時頃
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私は、魔法使いです。
魔物を討伐することが任務です。
その際殺されることも覚悟していました。
対して、あの時の貴方は魔物でした。
魔物が魔法使いを殺そうとするのは、自然でしょう。
[ツェツィーリヤは、淡々と事実を告げる。
イアンが魔物ではないと知らなかった時。
ツェツィーリヤ自身を魔物と思って
攻撃しようとしていたとも思っていた。
どちらにせよ、其れは自然な行動だったと。]
…っ…。
ヴェラさん…っ。
[宿主の異変は右手にも伝わってくる。
彼の傷ついた身体が限界に近い事は分かっていた。
ツェツィーリヤの身を生贄にした魔法がなければ、或いは自分が手を下していたかもしれないけれど。
今まさに、途切れそうになっている命を想い、顔を歪める。]
ソフィアは、やがて森の奥、争いの跡地に辿り着くだろう。途中、その姿に気付く者がいたかは定かでない。**
2013/06/21(Fri) 00時頃
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……〜〜ッッ。
[随分血を流しているのに、涙は涸れないものなのね。]
私の体温で、温めてあげるわよ……。
[そんな言葉を交わしたのは、つい先程の事なのに>>0:26>>0:34>>0:37。 ずっと昔の事の様に、感じるよ。]
私も、また会えて、嬉しかったわ。
[それは、会っですぐの言葉>>0:18に。 素直に、そう言えなかった事に。]
(107) 2013/06/21(Fri) 00時頃
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[悪くない。誰かに看取られて終えるのは悪くない……が。
ただ、叱られそうだな、とは思う。 群れの仲間に対してか、右手に込められた魂たちに対してか。
だから、ヴェラは心の中で、すまんと一言詫びを入れた。 それは、傍にいるコリーンや群の仲間に対してと、ツェツィーリヤや、イアン。 この右手で受け継いできたはずの魂たち。
あんまり先の事を考えず、大言を吐き続けてしまったものだから。 今更引っ込めるのは、相当心苦しいのだが。
これ以上、群を守ることも、魂を引き継ぎ続けることも叶わない私は]
(108) 2013/06/21(Fri) 00時頃
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私……は、弱かっ、た……。
[吐き出す息と、ほとんど聞き分けられないだろう声。 すまない。
最後に口惜しげにそう呟いて、そのまま意識は遠ざかって行った]**
(109) 2013/06/21(Fri) 00時頃
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[耳に届く悲鳴>>106に周囲を警戒していた片目が更に素早く動く。 声に反応する命の色が無いかを探すなか、 腕に絡む棘の痛みに攻撃を受けたのだと気付いた]
シュルリッッッッ
[尾とは違う、鋭い音を立てて鞭の様な舌が右腕を狙う。 そして棘に引かれる様にヤニクへと駆けて、 棘が捕えた腕を爪を立てる様に彼へと突き出した]
(110) 2013/06/21(Fri) 00時頃
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[貴方の『頼み』は、分かっている。 だけど、貴方の願いと反してしまうかもしれない私が、受け継いで良いんですか?]
[冷えていく身体、ぎゅっと抱き締めながら。 その額に唇で軽く、触れて。]
貴方の事、好きだったわ。 …………おやすみなさい。
[過去系なのが、とても悲しかった。 そうして、強く抱き締めたまま、私は右手に力を集めた。]
(111) 2013/06/21(Fri) 00時頃
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…ツェツィーリヤさんは冷静ですね。
[淡々と事実を告げる彼女。
それは魔法使いとして正しい思考だ。
けれど。]
―でも、何で俺にやり返そうとしなかったんですか?
魔物になる前から、俺は貴方を狙ったでしょう。
[戯れに彼女に斬りかかったわけでない事は分かった筈。
あの時に彼女が自分の身を守ろうとしなかった事に対する疑問を口にした。]
ヴェラは、遅いではないか。そうは思ったものの、耳に聞こえた言葉>>107に、私もだ、と小さく首を……**
2013/06/21(Fri) 00時頃
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