276 ─五月、薔薇の木の下で。
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……出来ることなら、その方法で。 これからも関わっていきたい。
皆に話せないことを話したり、 弱いところを見せあったり、 誰にも見てもらえていないと君が怯えずに済むような。
友達、みたいに……どうだろうか。 [言いたくて、躊躇ってしまった言葉。 自分の考えは、伝わるだろうか。 これは、また気持ちを陰らせるものだろうか。 一度相手を俯かせた男の声には不安が滲む。]*
(222) clade 2018/05/26(Sat) 20時半頃
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[夜のような目に初めて映ってから、三度目の春が過ぎていく 思い出は花弁のように積み重なり 語り尽くせないものばかりの筈だった。 “こい”や“あい”を誰かに告げるなんて、初めてで 先走るのも仕方ないのだろう。
子供とは到底言えない、欲望の含む口づけ。 汚れていると、慣れていると自認する割に 体温を上げ、緊張しているのは きっとあいしたひとが相手だから。
倫理の象徴のような部屋の中 想い続けた男と触れる距離、深く唇の先を求める あまりにも甘美で、いけないのだと離せない 未だに呪いが生きているように、集まる熱。]
(232) clade 2018/05/26(Sat) 22時半頃
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……君が、もっと欲しくて
[けれど、あの夜は明けた。 密着し理解させられる感触に、喉を鳴らし 確かに彼に求められていると、嬉しいと思っているのは 一層欲して口づけを深く深く、息継ぎも惜しむのは 混じり気の無い本物の俺。
首筋に残る痕を知っている。 どう思われているのか、気になるけれど。 それが消えない事実ならば、受け入れられたい。 身を引くことはもう、出来ない。]
(233) clade 2018/05/26(Sat) 22時半頃
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言わないでくれ……っ 君が…こんな風に、するから……
[羞恥に震える声で、緩く首を横に振った。 明けた世界でその指摘は酷だ。 窓の外の風景も、この部屋が何処なのかもよく見える。 ドアの向こう側を意識してしまいながらも、 撫でる手に色を滲ませた吐息は隠しようもなく。]
(234) clade 2018/05/26(Sat) 22時半頃
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ユー、ジン……
[形を持った部分に辿り着いた指に 息を呑み、思わず目を瞑った。 名前を呼ぶいとしい響きに導かれ、 呼び慣れない異国の名を口にする。 発音も上手くなく、辿々しい。 幼子のように繰り返し、正しい形を取ろうとしながら まるで自慰をするように相手に押し付け、擦りつける。]
(235) clade 2018/05/26(Sat) 22時半頃
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……きつくて、苦しい。
[君もそうだろう、そう囁いて 再び開いた目は欲に潤んでいる。 こちらの手も、相手の身体に伸びていく 許されるのなら、脱がしていこうと。]*
(236) clade 2018/05/26(Sat) 22時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
clade 2018/05/27(Sun) 01時頃
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── 中庭のベンチ ──
何をしても目覚めなかったんだ。 もう二度と目を開けないような気すらしたよ でも……こうして起きてくれて、良かった。
[医務室に運んだことを言っているのだろう>>244 頷き、肯定してこう語った。 君は呪われていたのだと、長い夜の多くを眠って過ごしたと 語るべきなのか迷い、この時は止めることにした。 これからも距離が離れなければ、いつか話すかもしれない。]
(276) clade 2018/05/27(Sun) 18時半頃
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[謝ってほしくなかったと彼は言う>>245 考えて、考えて、そうするべきだと思った筈だったが やはり言葉を貰わなければ誰かの感情を察せない。 全く恨んではいないのだが、 相手がすぐに眠ってしまったことがすれ違いを生んだ。
これからも、こんな風にズレることがあるだろうか その時はちゃんと話せればいいと思う。 そうして、卒業を迎えるまでのまだ長い日々のいつかには 後輩を悲しませない男になれればいい。]
(277) clade 2018/05/27(Sun) 18時半頃
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……駄目だよ、モリス。 そんなことに身体を使っていたら、君は幸せになれない。
[皮肉めいた言葉>>246に眉を下げた顔で微笑んだ。 全く持ってお前が言うなという話なのだが。 以前の自分をそこに重ねてしまって、 彼にだってもっと正しい幸せが手に入る筈で。 本当の彼を見てくれる人が増えたらいいと思っている。]
したいように、か。 そうだな……うん、そう出来るのが一番だ。
[今までの俺には難しいことだ。噛み締め思考する相槌。 続けられた内容にまた口を開こうとした時、]
(278) clade 2018/05/27(Sun) 18時半頃
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[たぶんね、と語られた内容>>247 ……声を喉に留めたまま、相手を見ていた。 その言葉は二種類に取れる気がした。 可能性は均等でなく、傾いているように思えた。]
ありがとう。 誰かにそう言われるのは、嬉しいことだね。 思い遣ってもらえるのは、幸せだね。
[自分から言えるのはそれだけで 思う未来の形は>>222決まっていた。 しかし、そう思ったのも事実。
まだ遠い将来の中、いつか この記憶は静かな胸の痛みを齎す思い出になる。]
(279) clade 2018/05/27(Sun) 18時半頃
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親友か、……昔はいたなぁ。
[一瞬の過去の想起、宙に投げた視線。 それもまた>>248日常と共に奪われたものだった。 再び与えてくれる人に向き直り、 憂いの無い緩んだ表情を向ける。]
ありがとう、モリス。 これからも宜しく頼むよ。
[感謝と、未来を望む言葉を 受け入れたことを示して音にした。]
(280) clade 2018/05/27(Sun) 18時半頃
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今度、袋に沢山菓子を持っていくよ。 それと、枝も拾ってこよう。
俺は手先は器用じゃない方だと思うけれど、 良かったら、教えてくれないかな。 色んなことを教えてほしいな 作品だけじゃなく、親友のことならなんだって。
[謙虚でも清廉でもない生徒会長は あれこれと望み、一方的になってしまわないか心配だ それでも、自分を見つけてくれた怖がりの後輩に 才覚が君と人とを繋ぐこともあると、伝えたい。]
(281) clade 2018/05/27(Sun) 18時半頃
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[夜明け色の美しい瞳はいつまでも見つめていられそうで、 しかしこの身体に視線を注がれると>>294 湧き上がる羞恥からそれが叶わない。
確認の術が無くとも色付いていると分かるほど、 頬も、耳も、身体も、彼を前に全てが熱を上げている。
俺を見ないでくれ、あの夜そう何度思っただろう。 今も同じ言葉が浮かんで、けれど声にはならないまま。 動いた指先に過敏に反応する身体は、 離れることなど、独りになる倫理など到底望んではいない。]
(331) clade 2018/05/27(Sun) 22時半頃
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……君が、君だけが欲しい。 君になら、そう言われたい。
[こんな俺を、綺麗だと言ういとしいひと>>295 あの時口にしようとした否定は、きっと言うことはない。
何処かにそう想ってもらえる部分があるのなら、 それすらも、過去の穢れも。 全てこの人に塗り潰されてしまえたら。
彼を捕まえた薔薇を嫌った男は、 そうして今度は自分が捕らえようとしている。 手を重ね、指を絡めて、互いが互いの檻になればいい。]
(332) clade 2018/05/27(Sun) 22時半頃
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[いつか呼びたいと想い、変わらない距離では出来ずにいた。 二つある名の、もう片方も口にすることが叶った今は 全てを手に入れられた心地になってしまう。
なんてことは、気が早い。 貪欲な人間は形が無いものだけでは満たされない。 撫でる手が戒めを解くのなら>>296 早る気持ちに指が惑いながらも、同じように動く。
確かな緊張がそこにはあるのに、 腕の中で熱が走るままにみだりがましく強請った記憶を 思い出した時は顔を覆いたい気持ちになったのに。
固い手に触れられた欲も、閉じているべき部分も 明らかな快楽を拾って、跳ね、震え、締め付けて。]
(333) clade 2018/05/27(Sun) 22時半頃
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……こわ、い
[あてがわれた塊、加速する行為。 耐えようとしても押し殺せない喘ぎの合間 零れた短い言葉は、年と性の割には幼く響き 身体の反応と不似合いな内容。
久しく受け入れていない部分から苦痛を感じているわけでも 今更同性が、彼が嫌になったわけでもなく。]
(334) clade 2018/05/27(Sun) 22時半頃
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嬉しくて、……こわい
[優しくされることが、あいされていることが。 怖くて怖くて、いとおしい。
繋がった幸福感と欲に浮かされ火照った身体が その瞬間、口元を緩ませて。]
(335) clade 2018/05/27(Sun) 22時半頃
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俺も、あいしてる……ゆう、じん。
[掠れ声は嬉しそうに────想いに応え
その後、脱力した身体で もう一度、などと再びの愛を強請ったことは。
後日この部屋に入る度、顔を赤らめさせる記憶になるが。 それを超える程の幸福だった。]*
(336) clade 2018/05/27(Sun) 22時半頃
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── 心優しき親友と ──
[その言葉に>>305首がどう振られるかなど言うまでもなく。 悪戯めく笑みには、嘘の欠片も浮かばない微笑が返った。
しかし厳しいところもあるのがこの後輩 ごもっともな返しに>>306こちらも同じ仕草をするも、 やはり自分を見てくれていた発言>>307 きっともう怖がることは無いだろうと思わせる前向きさに 陰ったりはするわけも無かった。
君がそんな風に他の名前を口にしたことが、 俺にとってどれだけ嬉しいものなのか。 相手を知りたいと思う反面、いつか知ってほしいと思う。]
(343) clade 2018/05/27(Sun) 23時頃
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いいよ、モリス。 君にとって、意味を持つことなら。
[でも、今は まだ弱い君を見ていよう。 そんなことを求めながら、広げない腕が>>308 いつか何も言わず誰かを抱き締め愛を囁くようになれば。 謝ることを望まないのなら、純粋にそう願おう。
優しく抱き締め、背を撫で続ける。 きつく感じても、相手から離れようとするまでは。 その表情も見ないように、今は素直に弱くいられるように。]
(344) clade 2018/05/27(Sun) 23時頃
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── 後日談 ──
[今年はもう帰らない 卒業後は家を出る。
休暇の後すぐの交代式、会長と呼ばれなくなり数ヶ月 遠方の生家へ、そう手紙を送った。 元より年に一度の帰省も、 周囲の目と家の世間体を気にしていただけ。]
(354) clade 2018/05/27(Sun) 23時頃
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[そして今、届いた返事を広げていた。 繊細な文字は母親のもの 一方的に息子が告げた内容を受け入れ 最後には──……今までごめんなさい、と。]
………………。
[思うに彼らは 酷い目に合い、性格の変わった息子と 上手く接することが出来なかっただけ。
編入先に何の話も行かないように全てを隠蔽したのは 真っ当に生活が送れるよう遠い学校を探したのは 自分を発見した教師と、二人だった。]
(355) clade 2018/05/27(Sun) 23時頃
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[──それでも。 あの頃の俺は戻ってはこない。
汚されてしまった、終わってしまった。 怯える日々だった、辛い出来事があった。 そして……新しい希望を見つけた。
親子の関係性は、復元ではなく再構築を成すだろう。]
(356) clade 2018/05/27(Sun) 23時頃
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『Please marry me.』と言ったのは君なのだから ……──責任はしっかり取ってもらわないと。
[木々のざわめきは、その声をかき消さず傍らの彼に届ける。
触れられたくない訳がこちらにもあって 相手も帰らないでいると知りながら>>1:244 ずっと、聞くことが出来なかった。 俺が此処にやって来た理由、君が薔薇に選ばれた理由。 あの夜から過ぎた日々の中 語り、問い掛けた後、その境遇についても聞いた。]
(357) clade 2018/05/27(Sun) 23時頃
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どう、かな。 孤独な身の君、故郷から離れて暮らす俺 寮を出たら一緒に助け合って生きるのも、 こんな若者二人なら何もおかしくないんじゃないかな?
[手紙を懐にしまい、問いかける。 夏の夜の中庭には、ふたりだけがいた。 来年は、この季節になる前に俺達はいなくなる 中庭の住民が薔薇を咲くところをもう見ることはない。 彼の隣で草を抜く男も、やって来ない。]
(358) clade 2018/05/27(Sun) 23時頃
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本当は君を望んではいけないような奴だ。 でも、そんな俺にこれからの全てを 君の負ってきた傷を、くれないだろうか。
[この先の未来を願う言葉を告げた。 何人もと肌を重ねた穢れた身体で、 ただひとりと歩く未来を欲しがった。 綺麗な聖域じゃ無い君とでなければならなかった。]
(359) clade 2018/05/27(Sun) 23時頃
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[もし、受け入れてくれたのなら 感情は顔に出てきっと笑みを浮かべるが。 他のどんな言葉が返っても、表情は陰らないだろう。 納得し、頷くことだろう。
あの夜を経て互いを選ぶことが出来たのなら、 同じ屋根の下で生きることをしなくても 心が離れることは無いと、思っている。 これはあくまで一つの提案に過ぎない。
信じている、望んでいる。どんな形でもいつまでも傍に。 誰かに手折られて、全てを失う そんなひとりで終わる破滅はもう願わない。]
(360) clade 2018/05/27(Sun) 23時頃
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……綺麗な目だ。
あの頃の君にこいしていたけれど 今の君のほうが、あいしているよ。
[静かで冷たい月明かりの下の瞳は 夜明けの太陽に似て、優しく暖かい色。 焼けた肌に添えた手、顔を近づけてゆく。]
(361) clade 2018/05/27(Sun) 23時頃
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────悠仁。
[愛しげに呼び、唇を重ねた。 その名は、異国の風を乗せたはるかな響き 小夜啼鳥もロジェも此処にはいない。 全ては、ふたりだけの秘密。薔薇の木の下の出来事。]*
(362) clade 2018/05/27(Sun) 23時頃
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[何もかもが口づけと求め合いで塗りつぶされた。
断る理由など、あるわけも無かった。]
綺麗だね、悠仁。
[薄い紅の花の前で、穢れは泣き笑う まるで清らかな顔をして]*
(408) clade 2018/05/28(Mon) 00時頃
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