88 吸血鬼の城 殲滅篇
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[浴室側の扉を潜り、客室へと出る。 ……そっと細く扉を開け、外を伺った。
二階の宴会場は、しんと静まり返っている。 注意深く辺りを見回し、外に出る。
扉を開ける音は案外に大きく響き―― 静寂を割く様に、重く軋みをあげた*]
(59) 2012/04/30(Mon) 08時半頃
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―二階・宴会場―
……っ…、また…?
[一歩客室の外に足を踏み出した途端 胸ポケットの紅玉が激しく脈打ったように感じて、 歩みを止める。 眉をしかめてポケットを押さえ]
…さっきから、なんなんだこ……
[言いかけた途端、 ぞわりと背を撫でるような寒気に襲われて瞠目する。 石壁を通り抜けた影が前方に凝り、 やがて逞しい体躯の一人の男の姿となって 眼前に現れた]
(79) 2012/04/30(Mon) 13時頃
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――めっ…え、もうお出ましかよ…!!
[武器を構える暇すらない。 咄嗟に身構えたが間に合わず、客室の内部に吹き飛ばされ] ぐ、…っ、…〜〜
[強かに壁と、繊細な家具に叩きつけられて息が詰まる。
がしゃりと派手な音。
硝子製の華奢な洋灯が、 右肘の下で無残に潰されていた]
〜〜〜〜〜〜…… っ、…痛、って、ぇ、…――クソッ!!
(80) 2012/04/30(Mon) 13時頃
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おい坊っさん、大丈夫か!?
[軋む身体を無理やり動かし、跳ね起きる。
砕けた硝子の破片がバラバラと落ちて、 部屋を照らす橙色の光に反射した。。 彼の返事の如何を待たず、 眼前の男を睨みつけ、武器を取る] 浴室行けッ!! そっちから逃げろ!!
[装填されているのは木製の杭。 けれどムパムピスを逃がす位の間は、と 男をめがけて引き金を引く*]
(81) 2012/04/30(Mon) 13時半頃
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[鏡には一階大広間の光景が広がる。
女の知る大広間とは随分違ってみえたのは
椅子とテーブルで築かれたバリケードのせいか]
これは…… ?
[ぱちりと瞬きして
鏡へと目を凝らせば見えるのは騎士の姿]
[今見えるヒューは女が傍で見ていた彼とは違ってみえた。
その理由が自分にあるとは未だ知れず]
ヒュー ……
[呼びかけるは騎士の名。
今の彼に女の声は届かない]
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ラルフ…っ
[聞き覚えのある声が、宴会場の向こう側から届く。>>8 近くに居たのかと軽く目を見開くが、 そちらに然程気を配っている余裕もない。 だが彼がナイフを投げてくれた時間は、 武器を構えるほんの一瞬の隙を作り出してくれた]
(95) 2012/04/30(Mon) 17時頃
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ありがとう、も
さよなら、も、言えなかった
[ぽつ、と悔い感じさせる響きが零れる]
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[聖別された杭は吸血鬼の肉を貫き、 須臾、男の動きが止まる。>>90]
……お強い領主サマにも聖属性は有効、ってわけだ。 いっこ勉強になったぜ、オッサン。
[冷たい汗が流れるのを感じつつ、 そう挑発するように笑ってみせる。 だが次の杭を装填している暇はない。 愛用の武器を跳ね上げると 壊れた洋灯を引っ掴んで投げつけた。 指が硝子で切れ、鮮血が手首まで流れ落ちる]
(97) 2012/04/30(Mon) 17時頃
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――っ 急げッ!
[狭い客室に3人の男。 身動きの取れない場所で 魔力を揮われるのは明らかに不利。
ムパムピスにそう声を掛けながら、 懐から刀子を引き出そうとした]
(98) 2012/04/30(Mon) 17時頃
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>>105 か弱いだァ…? どの面ぶら下げて…、
――ッ!
[男の棍の一撃が左手から繰り出される。
咄嗟に身を捻ったが、全ては避けきれなかった。 硬い金属の柱が腕を掠め、 引っ掛けるようにして背後に叩きつけられる]
…う、…――ぁ、…、……っ
(111) 2012/04/30(Mon) 18時頃
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……、……。…
[まともにやられたら骨ごと砕かれていただろう一撃。 だが、それが幸運とも言えぬ。 頭をぶつけたのか、ぐらぐらと視界が回っている。 息を荒げ、意識を手放さぬよう ぼやける視界の先を睨みつけた。 必死で立ち上がり、 刀子を引き抜いて逆手に握る]
(114) 2012/04/30(Mon) 18時頃
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…ル、フ…、…っ!?
[ラルフの声――それから、他の誰かの?>>116
眩暈に回る頭に微かに響くが、 それを掻き消すような咆哮に唇をぎりりと噛む。
こっちを気にしている場合じゃねえだろう、と 余裕があればそうも叫んでいたかもしれない]
……ご大層、だな。 片手間かよ…!
(120) 2012/04/30(Mon) 18時半頃
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[鏡の中の景色が変わる。
一階から二階へ。
宴会場を抜けて客室の光景が映し出された。
聞こえくる声は懐かしくも恋しい音色]
――…ッ、 ヘクターさま!
[会いたいと願った主の姿に声を上げるも
どのような状況かがみえてくれば
何処か複雑そうな表情が過ぎった]
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――グ、ぅ、…ぁ、あ、あ…――っ
[避けられるはずも無かった。 死角からまともに突き入れられた棍が腹部を強打する。
隻眼は限界まで見開かれ、 かはりと、血混じりの咳を吐いて天井を仰いだ]
……、…っ、…――ぁ
[何かに縋るように痙攣する腕が伸ばされ ――眼前の男の腕を掴む。
硝子で切った指が、ぬるぬると鮮血を染み出させ 男の上腕を朱に染め上げた]
(124) 2012/04/30(Mon) 18時半頃
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[真っ暗な客室で何が起きるか分かるのは
鏡の魔法ゆえか――。
叩きつけられ衝撃を受けるドナルドの姿に
思わず悲鳴を漏らし両の手で口を覆う]
――…っ
[このような状況を望んだわけではなかった。
けれど主が戻ればこうなるかもしれぬ、と
何処かで感じていたのだから――]
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……、…、…、っ、く、…、…、…。 ……
[ずるりと崩れそうな身体を気力だけで支え、 漸く視線をあげて男を眺める。
…クレアの愛した男。 命を賭けてこの城を守らせた男。
あのか細い腕はこの背に回され、 あの華奢な肩をこの腕が抱いたのだろう。
――総毛立つような憎しみと羨望を 隻眼に込め、睨み上げる]
(127) 2012/04/30(Mon) 19時頃
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犬に、お手伝いしてもら…んのか? 領主様も、人望ねえな、…?
…っ、ぐ…、っ――
[揶揄するように血泡の残る唇で囁くが、 じわじわと棍に腹を押し潰され、低い呻きが洩れる。
縋りついた腕はあっさりと剥がされた。 身体ごと吊り上げられる様な体勢に、 ぽたぽたと肘まで鮮血が流れ落ちる。]
(131) 2012/04/30(Mon) 20時頃
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――っ、ざけ…んっ、…、…!
[戯れる様に囁く男に怒りを露にすると、 身を捩り、何とか腕を引き剥がそうと藻掻く。 鈍痛に低く喘ぎ、逸らされた衣服の胸元で ――しゃらり、と、紅玉が幽き音を立てた。]
(132) 2012/04/30(Mon) 20時頃
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……、……。
[紅玉に目を留めた領主に、唇を噛む。 隻眼の男には、其の由来は知る由もない。
この男が彼女に送ったものなのだろうかと考え、 ――それに揺らぐ自分に嫌気が差す]
(……ッカ野郎、…それどころじゃ、ねえ…っ)
[じくじくと鈍痛を伝える内臓に瞳を歪めつつも 打開策は無いかと、必死に思考を巡らす。
牙を剥く男の表情にぞくりと寒気を覚えながら、 せめて射殺してやりたいと、視線に力を込めた**]
(135) 2012/04/30(Mon) 20時頃
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ドナルドは、エリアスに話の続きを促した。
2012/04/30(Mon) 20時頃
ドナルドは、ジェフに話の続きを促した。
2012/04/30(Mon) 20時頃
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[ムパムピスは無事なのだろうか――と、 脂汗が額を伝うのを感じながら考える。
或いは浴室側の扉も、閉ざされてしまったのか]
(……センセイの抗魔薬、飲んでたよな。 多少は動けてる筈だ、きっと……)
[木製の杭すら、 眼前の強靭なる男に大ダメージを与えた。
彼の聖術は領主にとって 多大に有効な武器となる筈。
……護らねば、ならなかった*]
(143) 2012/04/30(Mon) 21時半頃
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ドナルド
貴方には来て欲しくなかった
[会いたくなかったわけではない。
会えて嬉しくなかったわけ、ない。
あの時の男の子がこうして傷つくのを見たくはなかった]
仮令会えずとも
何処かで平和に、しあわせに
いきていてほしかった
[女は目を瞑る。
ヘクターとドナルドが対峙する様を
みているのがつらい、とでもいう風に]
――…私は
ヘクターさまにお逢いしたかっただけ、なのに
[鏡を通じて見る事は叶ったが
それは望んだカタチとはまた違って]
[女が目を閉じると同時
鏡もまた城の景色を映す事を止めた。
何の変哲も無い鏡であるかのように
クラリッサの相貌を静かに映すのみ]
[シン、と静まりかえる地下聖堂。
深紅の薔薇が彩る其処で
女は座り込んだまま鏡を抱きしめた]
――…何も出来ない
[自分の無力さは嫌というほど知っていたが
此処に来てより一層その思いは強くなる]
――――……
[城の地下で女の魂が
さみしい
と、くちびるのみで綴る]
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>>142 う、……、… [浴室のほうから響く、凜と張られた男の声。 ぐ、と眉を寄せ、首をそちらに向けようと努める。
灯りの消えた室内は暗く、精々が間近の領主の姿のほかは 見えはしない]
……フ、か…?
[あの男があれだけ大声を出すのは、はじめて聞いた。 そんな場違いな感想がわずかに脳裏を掠める]
(172) 2012/04/30(Mon) 23時半頃
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>>144 [続いて聞こえるムパムピスの声。 相変わらず騒々しい、と 思考のどこかでぼんやりとほほえましく思う。
内臓がいくつかやられたのだろうか。 意識が保てなくなりかけた瞬間──
目映い──清い、閃光。 硝子の雨がきらきらと光を反射して降り注ぐ様が、視界をふさぐ]
(176) 2012/04/30(Mon) 23時半頃
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…っ、ぐ、…ぁ、…!
[>>155猫の子の様に持ち上げられ、 降り注ぐ硝子がばらばらと体に当たるのがわかる。 頬が軽く切れ、破片が肩に突き刺さり 新たな鮮血が飛び散った。
限界だった。 抗う気力なくぐったりと目を閉じ、 ずるりと、床に崩れ落ちようとする]
(178) 2012/05/01(Tue) 00時頃
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[しかし、体は崩れず。 ──ずるり、と何か柔らかく、つめたく、
おぞましいものに触れ──沈んでいった]
…、……『 』。
[唇を開き、声なく誰かの名を呼ぶ。
それに呼応するかのように、 胸に収められた紅玉が、ひそやかに脈動した*]
(181) 2012/05/01(Tue) 00時頃
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